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受験生の1年は本当に早い。
夏休みが終わったと思ったら、もう今度は冬休みが近づいて来ていた。そんなある日、私は唐突にフラれた。

受験勉強に専念したい、というありきたりな理由。そもそもデートらしいデートもほとんどしていないのに、今更それはおかしいんじゃないかと思ったけれど、内心、どこかほっとしている自分がいた。
こんなもんなんだろう、人間同士の絆なんて。


「えーっ!雅、別れちゃったのぉ?何で何で?」
「ありえなくない?あとで語ろうよ!」

「・・・顔、笑ってるよ。」


自分でも意外なほど冷たい声で、集まってきた子達を一蹴する。
場が冷えたところで、私は席に戻った。背後から聞こえよがしの捨てセリフが耳に入る。
あーあ、これで、私はもう一人ぼっちだ。

めぐとの一件以来、私はかなり荒れていた。
今までは笑って流していたような、新しいグループの子達の言動がいちいち勘に触って言い返したり、家族に当り散らしたり。
何度か話しかけてきためぐにも冷たい態度を取り続けた。
当然勉強にも身が入らなくて、せっかく上がってきていた偏差値もまた急下降してしまった。
どうしようもない悪循環の中で、私は1人、見えない敵と戦い続けているようだった。


「雅。」


そんなある日、帰りがけに元同級生に声をかけられた。
もう引退しているけどめぐと同じテニス部で、2年生の時は一緒のグループにいて、そこそこ親しい子だった。

「あー、久しぶり。」

今はクラスが離れて関わりが薄くなってたから、かえって荒れた態度を取らずに、自然に接することができた。
もう、このぐらいの距離感じゃないと人と関わるのは難しいのかな。私は勝手にそんなことを思っていた。


「ちょっと、いいかな?」
連れ立って、人の少ない校舎裏へ歩いていく。もしかしてめぐと会わせられるのかと思ったけれど、そうじゃなかった。彼女は私の横に座ると、決心したように一度うなずいて、話を始めた。

「こういうの、私が勝手に話すのよくないのかもしれないけどさ。・・・雅の元彼のこと」
「うん・・・」
「あの人、二股かけてたんだって。バスケ部の子から聞いたんだけど。」
「ふーん。」


そこまで大きなショックはなかった。受験勉強に専念、なんて理由ははなから信じてなかったし、少しずつちゃんと好きになりかけていた気持ちは、とっくにしぼんでしまっていたから。

「別に今更」
「その、もう1人っていうのがテニス部の先輩だったの。・・・ていうか、向こうが本命で、雅とは、その・・・遊びだったらしくて」


そう言って彼女が教えてくれた名前を、私は知っていた。
その人は1個上の先輩で、私たちが1年生の時から、かなりの有名人だった。
不良っぽい先輩たちを侍らせて、いつも不機嫌そうな顔をしていた。
気に入らない下級生にはかなりキツイ態度だったらしいけど、めぐはその人に気に入られていて、いつもめぐにベッタリだった私も、わりと可愛がってもらえた。
1年生の時に髪を切られそうになった話をしたら、その人たちを呼び出して私に謝らせるぐらいの権力のある人だった。

「嘘・・・・ヤバいよね、それ」


多少可愛がられていたとはいえ、まさか自分の彼氏にちょっかいをかけるような恩知らずを許してはくれないだろう。
このことが先輩の耳に入れば、私は何をされるかわからない。


「でね、めぐが、雅のことを庇って謝りにいったんだって」

「え・・・?」


「夏休みにめぐと遊んだとき、流れでみやびの元彼の話になったのね。
で、めぐ、雅が傷つかないうちにどうにかしたいって言ってたんだ。このことは絶対に誰にも言わないでって、私が何とかするからとも言ってた。」



“あいつは、やめたほうがいいよ。”



公園で、めぐが言った一言がよみがえる。

「めぐ、土下座までしたんだって。雅は先輩のこと知らなかったから、被害者だって。めぐのことを責めないでくださいって。こないだたまたま会ったとき、先輩が言ってた。」
「そんな・・・だって、私・・・」


あんな子供じみた意地でめぐを避けていたというのに、めぐはずっと私のことを考えてくれていたんだ。私のために、あえて厳しい言葉を使って、悪者になってまで。
どうして気付かなかったんだろう。めぐに捨てられたなんてひどい思い込みで、私が勝手に失望していただけだった。


「先輩も、雅が人の彼氏にちょっかい出すようなタイプじゃないの知ってるし、バスケ部の男子とももう別れようと思ってたところだから、全然怒ってないって。・・・ねえ雅、3年生になってから、全然めぐと付き合ってないんでしょ?
私は2人に何があったかしらないけど、めぐは雅のためにそこまでしたんだよ。めぐの気持ち、考えてあげて。」
「ごめん・・・」
「私に謝ったって仕方ないよ。めぐは結構キツいこと言うし、1人で全部決めちゃったりするとこもあるけどさ、本当はすごい優しいし傷つきやすいんだから。・・・って、そんなの私より雅の方がよく知ってるよね。」
「うん、・・教えてくれてありがとう。」



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