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「私、世界のウメポーは、過去数回に渡り、JCでありおぱいちゃんである岡井千聖ちゃんに淫らな行為を行った事を深く反省し・・・」
「えりかちゃん、私そのネタよくわかんないよーケッケッケ」

「だぁっってぇえ~・・・!」

えりかちゃんはおもむろにテーブルに突っ伏した。


ラジオの収録日。お茶でも飲まない?とえりかちゃんをスタジオ近くのカフェに呼び出した私は、数日前千聖の家で話したことを打ち明けた。

「千聖、言ってたよ。えりかちゃんの考えてることがわからないって。辛そうだった。・・ねええりかちゃん、これから千聖とどうするの?」
「いや・・・どうすると言われましても・・・」

どうにも煮え切らない態度で、えりかちゃんはキャラメルマキアートをスプーンでぐちゃぐちゃにかき混ぜている。ついいじめてみたくなって、私はちょっとした切り札を使ってみた。


「私、千聖と寝たよ。」


ブーッ!!!
カ゛ッシャハ゜リーン
ス゛コー
「ひいいいいいいい!!!」


えりかちゃんは昭和のコントみたいに、考えられるリアクションを全部披露した後、ものすごい形相で私を見た。


「あ、一緒のベッドで寝たって意味だよ?ケッケッケ」
「え?な、なんだーびっくりした!」
「でも胸はいっぱい触った。1時間ぐらい。ぷにゅぽよーん。」
「ええ!?」


赤くなったり青くなったり、えりかちゃんは歩行者用信号機みたいだ。
まっ昼間のカフェで話すようなことじゃないのに、なぜか私は今日に限って饒舌だ(よくない方向に)。声をひそめて、話を続ける。


「千聖、最近キレイになったよね。あれってえりかちゃんのおかげっていうかせいっていうか。やっぱりああいうことしてると、女性ホルモンが活性化してどうのこうの」
しったか愛理を披露していると、さらにえりかちゃんの顔はげっそりしていく。


「ねえ、えりかちゃん。前にも言ったと思うけど、私は別にえりかちゃんと千聖がそういう関係でもいいと思ってるんだよ。舞ちゃんも千聖狙いっぽいけど、私はえりかちゃんの方がいいと思うなあ。何かすっごい、和んでるし。」
「愛理・・・」
「でも、えりかちゃんが千聖を傷つけたりするなら、話は別。そんなんなら、私が千聖を幸せにするから。とかいってwケッケッケ」
「ションナ!」


えりかちゃんは頭を抱えてしばらくうめいた後、「ちょっと、考える。」と言って黙り込んだ。

「うん。ごゆっくり」

暇つぶしに読みかけの文庫を開いてみたものの、あんまり中身が頭に入ってこない。

胸を触る以上のことをしてないのは本当だけど、私はあの夜結構グラついていた。ずっと前、トイレでもう少し踏み込んだことをした時のような感情がよみがえっていた。千聖がカワイイわんちゃんの着ぐるみじゃなかったら、本当に何をしていたかわからない。



“忘れましょう。・・・私たち、何もしなかったわ。”

お泊りの翌日、千聖はそんな風に言って柔らかく笑った。

“明日からも、これまでどおり。愛理は私の大切な友達。・・・ライバル。そのままでいましょう”

その顔は恋に悩む中学2年生なんかじゃなくて、よくわかんないけど“女”って感じがした。全てを見透かしたように、悠然と、包容力すら感じさせるようなたたずまい。

お嬢様の千聖はすっごく大人で、優しくて、・・・ちょっとだけしたたかだった。



「えりかちゃん、そろそろいいかな?」
「・・・・・よしっ、決めた。」


もう時間だ。声をかけると、えりかちゃんはカップに残っていたマキアートを飲み干して、おもむろに立ち上がった。

「ねえねえ、決めたって、どうするの?」
「それは内緒です。」

えりかちゃんはやっといつもの余裕綽々なえりかちゃんに戻って、ふふんと笑ってみせた。


私が今日、こうしてえりかちゃんに急な決断を迫ったのにはわけがある。
こうして関わってしまった以上、どうしても2人の今後のことを、この目で見届けたかった。

私と、千聖と、えりかちゃん。
3人っきりになれるチャンスは、今日しかなかったから。


「おはようございます。」

「おはよーちっさー。」
「おつかれー。」


スタッフさんからの今日の進行についての説明が一区切りついた頃、千聖がブースの中に入ってきた。


「今日は、よろしくお願いします。」

挨拶とともに席に着いて、今度は千聖もまじえた打ち合わせが始まった。


そう、今日のキューティーパラダイスのゲストは、千聖だった。私はそれで、今日中にどうにかしたいとはりきっていたのだった。


“この辺は雑談っぽく・・・”
“曲の最中に指示を出すから・・・・・”


私の横で、千聖が長いまつげをパタパタさせながら、スタッフさんの指示を聞いている。普段はどちらかというと愛嬌のある千聖の顔は、その一方で、真面目なシチュエーションではとても大人びて見える。私はこの神秘的な横顔が好きだった。


「千聖、わからないとこある?」
「え?・・・いいえ、今のところは特に。ありがとうえりかさん。」


ふいにえりかちゃんに話しかけられた千聖は、一点に集中した少し険しい顔を崩して、とても嬉しそうに笑った。心なしか、えりかちゃんの視線も優しい。

「千聖とラジオなんていつぶりだろうね?」
「私、今日は楽しみにしていたの。えりかさんとも、愛理ともご一緒できるんて嬉しいわ。」

えりかちゃんと舞ちゃんは、千聖のことをほとんど“ちっさー”とは呼ばない。
舞美ちゃんと栞菜はほとんど“ちっさー”呼びで、私となっきぃは半々ぐらい。

自他共に認める「変なところで」頑固者なえりかちゃんが“千聖”呼びにこだわるのには、何か理由があるのだろうか。あるとしたらそれは、千聖を幸せにしてくれるものなのだろうか?

頭を打って急にお嬢様になって、普通じゃない状況で千聖が感じている葛藤や不安は、とても他人が理解できるものじゃない。
だから、えりかちゃんにはきちんと千聖と向きあってほしい。千聖の心を癒すために始めた“行為”なら、そしてもしそれを今後も続けるのなら、いつまでも最初の目的を忘れないでほしい。
そんな風に考えるのは、私の傲慢なのかな・・・?

「千聖、ちょっといい?」
事前準備が全て終わって、本番まで30分ぐらい時間が空いた。その時、えりかちゃんが唐突に千聖に話しかけた。

「え?ええ・・・」
「ごめん愛理、ちょっと待ってて」
いつものヘタレ気味な態度はなりをひそめて、えりかちゃんはキリッとした顔で、千聖の手首を掴んでブースを出ていった。

きっと、さっき私が決断を迫った例の件について話すんだろう。できればリアルタイムで聞きたかったけれど、ここは思いっきり人の目があるし、2人だけにしかわからないいろんな事情というのもあるだろうから仕方ない。
私はまた読書をしようと本を取り出した。しばらく没頭していると、廊下からバタバタと足音が聞こえてきた。



「千聖・・・?どうしたの?」
千聖がドアを思いっきり開けた。私の姿を確認すると、すごい勢いで飛びついてきた。

「愛理ぃ、えりがじゃんがフカ゛フカ゛フカ゛フカ゛フカ゛」
興奮していて、何を言ってるのかよくわからない。・・・ん?

「千聖?今、えりかちゃんって」
「え、えりかちゃんが何か変なことしてきた!何で?わけわかんない。何か変なことしてきたの!」

大事なことだから2回言いました。じゃなくて、千聖は、唐突にもとの千聖の喋り方に戻った。・・・多分、喋り方だけじゃなくて、内面も・・・

「千聖、待って!」
続いて、青ざめたえりかちゃんが戻ってきた。こちらはもう半泣きだ。

「・・・まあまあ、とりあえず落ち着こう。」

パニック状態の人が2人もいると、本能的に冷静になれるものなのかもしれない。私はとりあえずひっついてくる千聖を宥めながら、えりかちゃんも前に座るように促した。



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