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しかし、こんなときに限って、余計にえりかちゃんをへこませてしまうような出来事は続くみたいで・・・


「はい、では次の質問です!」


ゲストとして参加している千聖に、一問一答の質問をするコーナー。その最終問題が、“愛理ちゃんとえりかちゃん、2人のうちで、お嫁さんになってほしいのは?”というものだった。

千聖は「えー?」なんて言いながら、私とえりかちゃんの顔を見比べている。そんな千聖にえりかちゃんは

「もう決まってるんでしょー?言っちゃいなよ!」と私の方を見ながらちょっと寂しそうにけしかけた。

「え?えー・・・?じゃあ、愛理。」

千聖も少し困惑した様子で、私を選んでくれた。嬉しい、けど・・・何か変な感じだ。
本当はえりかちゃんを選びたかったのかな?とまでは思わないけど・・・


「ほら、やっぱり愛理だ。千聖は何でも愛理だもん。お嫁さんにしたいのも、ライバルも愛理だし」

えりかちゃんにそう言われて、千聖は困った顔で首をかしげた。
私にはわかる。えりかちゃんは混乱してるし、傷ついてもいる。少なくともお嬢様の千聖はえりかちゃんに恋愛感情まで抱きつつあったはずなのに、よりによって今は変態呼ばわり。
千聖も千聖で、ひどく戸惑っている。ふざけて抱きついたりべたべたするんじゃなくて、いつもとは全然違うえりかちゃんの振る舞いが、本当に怖かったんだと思う。

でも、私だってお嬢様の千聖とは2回ほど過ちをおかしかけた立場なわけで・・・あんまり偉そうに割ってはいるのは気が引けた。



しばらく後のハガキでも、「自分が男の子だったら、℃-uteの中で誰と付き合いたい?」という質問があった。
また少し、えりかちゃんが落ち込んだ顔をした。

「私、このままの性格だったら弱虫で泣き虫だ。一応身長あるけど。・・・千聖は?誰?」


「えー、そうだなあ」

「どうせ愛理でしょ?もう愛理って言っちゃいな。」



えりかちゃんは一応ニコニコしてるけど、何かやけになってる感じがする。


「でもでも、愛理は千聖の相手なんかしてくれなそう。」

「そんなことないよ。私、千聖がいいな。」

私はつないだままの手に力を入れた。


「何か、盛り上げてくれそうだし。」
「へー」
「そうかぁ」

どうやら私は自分で思っていたより、元気な千聖が戻ってきたことが嬉しかったらしい。にこにこ笑う無邪気な顔を見ていたら、つられて笑ってしまった。

その後えりかちゃんは“なっきぃ”(ひどいモノマネ付き!)、千聖は“舞美ちゃん”を選んで、その話題は終了した。

別に嘘をついたわけじゃないけど、私が千聖と答えれば、千聖は私の名前を出さないだろうという考えも少しはあった。
千聖は普段は長女だけれど、キュートでは甘えん坊なとこがあるから、舞ちゃんやイタズラ仲間の栞菜は選ばないで、お姉ちゃんとして慕ってる3人のうちの誰かを選ぶとは思っていた。
でも、舞美ちゃんというのは私的に意外な答えだった。なっきぃはえりかちゃんと被るし、当人のえりかちゃんでは自分が気まずいから?・・・・いや、千聖はそんな風に計算して答えるだろうか?舞美ちゃんと千聖だってじゅうぶん仲のいいコンビだ。

何だか疑り深くなっている自分が少し嫌になった。どっちの千聖の気持ちも、一番フラットな状態で受け止めてあげられる存在でいたいのに。私もまだまだ修行が足りないなあ・・・


「はい、お疲れ様でしたー。」
「「「ありがとうございましたー!!」」」


2時間ぐらいかけて、2週分の収録が終わった。


「あー・・・食べたかったよぅ・・・・・」
大好きなスイーツをかけてのゲームも大失敗に終わったえりかちゃんは、さらに落ち込んで、机にバタッと伏せてしまった。


「えりかちゃん・・」

さすがにどうにかしたいと思ったのか、千聖はえりかちゃんの横に移動して、投げ出されたその手を軽く握った。


―あ。


乳白色が指の先に向かって、ピンクに染まっていくグラデーション。先端に大粒のラメ。
2人の指をおそろいで飾っているシロップネイルは、お泊りの日、私が千聖にしてもらったのと一緒だった。

そっか、あれはえりかちゃんに習ってたんだ。
私はもう落としてしまっていたけど、お嬢様の千聖は、今日えりかちゃんと一緒の爪になれたらいいなと思って、塗りなおしてここに来たのかもしれない。

「千聖ぉ」
「へっ?あ、あれ?あれ?一緒だ??」
「キレイだねー。えりかちゃんとおそろいだねー。」
「うん・・・?え、でも何で」

私の目線を辿った千聖は、自分の指とえりかちゃんの指を見比べて、目をぱちくりさせた。

「・・・・・・千聖。」

私達の会話を遮るように、いきなり、えりかちゃんがガバッと顔を上げた。
千聖に握られていた手は、逆に千聖の手をがっしり掴んでいる。


「え、えりかちゃん・・・?」
「千聖、ご飯たべに行くよ。」


「ええ!?なんで、ちょっと待って今日はママのホイコーローが明日菜のチンジャオが」
「行くよ。ごめん、愛理お先!後でメールするね。」
「お疲れ様~・・・?」

火事場の舞美力。とでも言うのか、えりかちゃんは右手に千聖の荷物、左手に千聖の手を掴んだまま、ずるずる引きずるようにブースを出て行った。

「愛理ぃいぃ・・・」

千聖のフカ゛フカ゛声が遠くなっていく。私は頭にクエスチョンマークをいっぱい並べたまま、とりあえず帰る準備を始めた。


“行くよ”だって。もう決定事項じゃん。

千聖はびっくりしてたけど、私はちょっとぐらい強引なえりかちゃんの方が安心する。これで2人が、仲直りっていうか、普通に戻ってくれるといいんだけど・・・

お父さんが迎えに来てくれるというので、駅前の公園のベンチに座って、千聖にメールを打った。そんなに早く返事は来ないだろうけど、一応、どうなってるのか後で簡単にでも聞かせて欲しかったから。

―結局、就寝時間になっても返事はこなかった。まあ、今の千聖は結構忘れっぽいし、後で手紙で何か教えてくれるかもしれない。そう思ったから、あんまりそのことは気にしなかった。

だけど、私はその時、もう少しよく考えておくべきだった。
“後でメールするね” そう自分から言っていたえりかちゃんからも、メールは来なかったその意味を。



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