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「えっ!!戻ったの?本当に!!!」


翌日のレッスン前、ロッカー室で会ったなっきぃに、私は昨日のことを話した(もちろん経緯は省いたけど)。


「うん、急になんだけど。私もびっくりしたよー」
「そっか・・・元に戻ったんだ・・・・」


なっきぃは感慨深そうに何度かそうつぶやくと、キュフフ♪と笑いながら着替えを再開した。

「嬉しそうだね。」
「うん、嬉しいよ。元気キャラの千聖に会うの久しぶりだもん。あっでもね別にお嬢様が嫌だったってわけじゃないんだよ?」
「わかってるよぅ」


なっきぃは前の千聖とすごく仲が良かったから、きっといろんな思いがあるんだろう。鼻歌なんて歌っちゃって、これは相当機嫌がいいぞ。

「おはよー。」
「あっ舞ちゃんお疲れ様。あのね、今愛理に聞いたんだけどぉ」

続いて入ってきた舞ちゃん、栞菜、舞美ちゃんへと、どんどん情報が流れていく。


「えーそうなんだ!ちっさー元通りかぁ」
「・・・そ、そう!それはそれは!おめでたい!」
「よ、よかったね?ん?良かったのかな?良かったんだよね?」


くったくのない舞美ちゃんと比べて、どことなく挙動不審な栞菜と舞ちゃん。これは、私も当事者だからわかる。
お嬢様の千聖とやらしーこと(栞菜は未遂、舞ちゃんはチューしたらしい)をした手前、元気キャラの千聖とどう接していいのか―あるいは、千聖がどこまで覚えているのかが気になるんだろう。


「大丈夫、そのへんの記憶はあいまいみたい。」
「・・・本当?」

私のエスパーな言付けに、2人はあからさまにほっとした顔になった。


「おはよう、遅くなっちゃった!」
最後に真打ち登場。えりかちゃんと千聖が、すこし急ぎ足でロッカー室に入ってきた。みんなの注目が千聖に集まる。千聖が口を開いた。


「おはようございます、みなさん。今日もよろしくお願いします。」


――あ、れ?


ポカーンとする私達をよそに、2人は急いでジャージに着替え始める。


「ちょっと、お嬢様のまんまじゃん!」
「え、だってだって、昨日は確かに」


見れば服装もお嬢様の時のまま、ふわふわファーの白いワンピースなんか着ちゃって、これはどうみても元気っ子千聖じゃない。


「ちょちょちょ、えりかちゃん。」

大方着替え終わったえりかちゃんの腕を掴んで、端っこに移動する。


「何でお嬢様に戻ってるの?」
「・・・あー、元気な方の千聖が良かった?ちょっと待ってて。」
「ええ?待っててって・・・えりかちゃーん?」

えりかちゃんは千聖のところに戻って二言三言交わした後、手をつないでロッカールームから出て行ってしまった。

「ほら行くよ、千聖。」
「はい。」

昨日の帰り際同様、えりかちゃんは完全に千聖を手中に収めている感じがした。「行こう」じゃなくて「行くよ」って。別にいいんだけどさ。


「愛理ぃー。」

2人の足音が消えると、待ち構えていたように、栞菜と舞ちゃんが詰め寄ってきた。

「普通にお嬢様じゃん!いや普通じゃないけど!」
「どういうこと?一時的に戻ったって事だったの?」
「いやぁ~・・・」


なっきぃにいたっては、私を問いつめる元気もないみたいだ。期待した分、へこむ度合いも大きかったらしい。舞美ちゃんに頭を撫でられてるその目は、かすかに潤んでいる。

「なんか、ごめんねなっきぃ。」
「・・・ううん、愛理は悪くないよ。一度元に戻ったなら、また何かの拍子に前の千聖になるのかもしれないし。」


そんな話をしていると、5分ぐらいで2人は戻ってきた。

「お待たせ。ふっふっふ」

「お、おはよー・・・あれ、なっきぃ泣いてる?大丈夫?」

えりかちゃんの後ろから顔をひょっこり出した千聖は、“なっきぃ”と言った。・・・前の千聖の、独特の口調で。


「ちっ・・・・・ちさとおおおおお!!」
「うわっどうしたの?なっきぃ泣かないでよぅ!」

飛びついてギューギュー抱きしめてくるなっきぃを、千聖は戸惑いながら抱き返してにっこり笑った。

もう口調からして全然違う。お嬢様の千聖のふわふわオーラはどこへやら、ちっちゃめな体中から元気オーラが出ている。


「ちっさー、久しぶりだね!」
「記憶とか大丈夫?」
「うん?うん、よくわかんないけど、別に大丈夫だよ。元気だよ。」

千聖を真ん中にして盛り上がる輪を尻目に、私は再びえりかちゃんを突っついて手招きした。


「よかった、みんな喜んでるね。」
「いや、うん。それはそうなんだけどさぁ」


―えりかちゃん、いったい何をしたの?


私の表情から行間を読んだのか、えりかちゃんは人差し指を唇の前に立てて「愛理には後で言うから。」とウインクしてきた。



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