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「おはようございます。中島です」

日曜日の朝7時。私はある家の玄関前に立っていた。
重厚な音をたてて開く扉。そこに立っていたのは最近仲良くなったメイドさん。

「おはよう、早貴ちゃん」
「おはよう、めぐ。千聖お嬢様は?」
「もう起きてると思うよ。まったく、平日もこうだといいんだけど」
「同感」

二人揃って苦笑いする。私とめぐはお嬢様に対して近い立場にいた。
軽く愚痴を言えるのもそんな二人だからだと思う。

「なっきぃ!」
「あ、お嬢様」

声のした方を見るとお嬢様がこちらに向かってきていた。
いつも可愛いと思うけど、日曜日のお嬢様はさらに可愛く見える。

「おはようございます。お嬢様」
「おはようございます」
「おはよう、なっきぃ。め…村上さん。
ねぇ、なっきぃ。私、待ちくたびれてしまったわ。早くいらして」
「キュフフ。まだ時間がありますよ」
「だって今日は活躍シーンがあるのよ。見逃せないわ」

まだ始まっていないのに興奮気味のお嬢様。私とめぐは再び苦笑いした。

「お嬢様。朝食の用意がありますので失礼しますね」
「あ、め…村上さん。今日はトーストが食べたいわ。オレンジジャムも忘れずにね」
「分かりました。では、のちほど」

めぐが厨房へと行き、玄関には私とお嬢様が残される。

「お嬢様。オレンジジャムって?」
「お父様達が送ってくださったの。なっきぃ、オレンジ好きでしょ」
「はい、大好きです! ありがとうございます。お嬢様」
「じゃあ、行きましょう」

私の手を取って部屋へと向かうお嬢様。
こういうさり気ない優しさを見せるお嬢様が私は本当に大好きだ。
……数分後には少年になっているんだけど。

◇ ◇ ◇

「ねぇ、なっきぃ。日曜日の朝7時にお屋敷に来ることって出来る?」
「日曜日の朝7時……ですか?」

学校のある平日でさえ、ぎりぎりまで寝てようとするお嬢様が?
私は怪訝な顔をしていたらしく慌ててお嬢様が理由を話し始めた。

「私、時代劇も好きだけど戦隊シリーズも好きなの」
「あぁ、聞いたことがあります。愛理からだったかな?」
「一人で見るのもいいのだけど見終わった後にお話したいじゃない?
だから他の寮生のみなさんにもお願いしたことがあるのだけど…」
「あるのだけど?」

少し渋りながらもお嬢様はみんなの反応を話してくれた。内容は以下の通り…。

  • みぃたん     アクションシーンで一緒に動いて、家具を壊しそうになる
  • えりかちゃん   朝が弱いからとパス
  • 愛理       戦隊シリーズより仮面ライダー派
  • 舞ちゃん     始まって数分後、鼻で笑った
  • 栞菜       最初は大人しく見ていたが、お嬢様の体を触り始め…

……って栞菜ッ!! あの娘は何やってるの!?
これは後で呼び出して余罪を追及すべきかもしれない。

「なっきぃは時代劇を一緒に見てくれるしお願いするのもどうかと思ったのだけど、
こういう状況だと……」
「私以外、頼める人がいない……ということですね」
「ええ。お願いしてもいいかしら」

胸の前で手を合わせて上目遣い。ぱっちりと開かれた瞼に円らな瞳は犬の様。
こんなお嬢様を前にして私が断れるわけないじゃない!

「いいですよ。その時間でしたら私はいつも起きてますし」
「休日なのに起きているの?」
「実家にいた頃の習慣なんです。私の家、朝早かったので」

“手伝いで牛乳配達をしていたから”とまではさすがに言えないけど。

「ありがとう、なっきぃ。その後の朝食も一緒に取りましょう」
「はい、喜んで。……ところでお嬢様?」
「何かしら?」
「さっきの上目遣い。誰かに教わったんですか?」
「ええ。桃ちゃんに」

桃ちゃん…。高等部の嗣永さんか。本当にあの人はやっかいなことをする。
でも、可愛いお嬢様が見られたから今回は見逃すことにしよう。

「では、毎週日曜日の朝7時にお屋敷に行けばいいんですね」
「ええ。どうしましょう、今からすごく楽しみだわ」
「キュフフ。私も楽しみです」

こうして私と千聖お嬢様は日曜日の朝に戦隊シリーズを見ることとなった。



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