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「千聖?おーい・・・」
「・・・」


千聖は私に体を預けたまま、視線を宙に投げて微動だにしない。また一人ぼっちの世界に入ってしまったみたいだ。
まあ、いつもこの状態になるとこういうエッチなことをして元に戻しているわけだから、私はとりあえず行為を続けることにした。

胸から手を離して、おなかやおへそ、腰を指先で辿る。

「ン・・・」

ぼんやり状態でもさすがにくすぐったいのか、ぴくんと体が震える。
千聖の肌は柔らかいけれど、スポーツ少女らしく筋肉もしっかりついていて、なんというか抱き心地がとてもいい。
さらに密着して、赤ちゃんにするように、ほっぺたをついばむようにキスを繰り返してみた。


あぁ、本当久しぶりの感触。まだ服の上から触っているだけなのに、私も少しずつ興奮してきてしまっている。
ほっぺたから首筋、うなじを柔らかく舌で辿る。さっきより強めに胸を掴む。

「っ」

小さく息を呑む音を聞いていると、本当に今、私達はいけないことをしてるんだなと思って、頭にピンクのもやがかかってきた。


―ちょっとぐらいなら、いいよね・・・?


心に悪魔が降りてきて、私は腰を辿っていた指を、服の中に進入させた。ちょっと大きめなおへその穴に触れたその時、だらんと垂れていたはずの千聖の手が、私の手をガシッと捕まえた。


「・・・・え?え?な、何?何?えっ?何してるの?何これ???」


おへそと胸をいじる指と私の顔を何度か見比べる千聖の表情が、困惑から恐怖に変わっていく。

「・・・千聖、」

「ちょ、ちょっと待ってやだやめて!何で?わけわかんない!えりかちゃん変態じゃん!」


本気で暴れられたら私の力でどうこうできるはずもなく、千聖は私を振り切って、ドアの方へ向かって走った。

「ちょ待って!ウチの話を聞いて!」

一応私の方を振り返りつつこっそり後ろ手にノブを回した千聖は、鍵がかかっていることに気がついて、さらにフカ゛フカ゛しだした。


「な、ななんで鍵閉めてるの?やっぱり変なことしようとしてフカ゛フカ゛フカ゛フカ゛」
「違うよ、だって誰か来たらヤバイし」
「全然違わないじゃん!もう本当やだ怖いえりがぢゃん怖い」

私が慌てて近づくと、千聖はヒイッと喉の奥で悲鳴を上げて、慌てて廊下に飛び出していった。

「ちしゃとおおぉおお・・・」


私がドアまでたどり着く頃には、俊足の千聖の姿はもう見えなくなっていた。とりあえず早足で、ブースの方へ向かう。


明るい千聖に戻ったこと自体は、実はそれほど驚いていない。時折1人ぼっちの世界に入ってしまうのは、千聖の心(?)が元の性格になるための準備をしていたからだと思っていたから。

でも、あんなに何も覚えていないというのは予想外だった。しかも変態だなんて・・・いや間違ってはいないけど・・・変態・・・・変・・・


ブースに戻ってからも、千聖のえりがぢゃん変態!攻撃は続いた。


「だ、だから、千聖もそうしたいって言ってくれたからぁ」
「嘘嘘嘘!そんなはずないじゃん!私あんな変態みたいなことしたくないもん!」


うぐぐ。今からラジオ収録だっていうのに、こんなに罵られたら心がくじけてしまいそうだ。

「まあまあ、千聖落ち着いて。そんなに怖がったらえりかちゃんも落ち込んじゃうよ。」
「愛理ぃ・・・」


千聖は愛理の腕を両手で握ったまま離さない。
愛理はこういう時、あんまり動じないから、どちらのことも冷静な目で見れるんだろう。それを察知した千聖は、えりかちゃんから私を守って!とばかりに子犬のような瞳を愛理に向けている。
多分明るい方の千聖は、こんな風に明確な意図を持って誰かに体を触られたことなんて今までなかったはずだ(梅田調べ)。

“気持ちいいことをしてくれるえりかさん”だったはずの私は、いまや“空き室に閉じ込めて体を触る痴漢えりがぢゃん”に身を落としてしまったのだった。


「まあ、この続きは後で話そうよ。今はほら、もう始まっちゃうから。」
「う、うん」
「ふぇい・・・・」


かくして、収録が始まった。


私は一旦落ちこむと、浮上するまでかなり時間がかかる。
さすがに仕事だからある程度の切り替えはできるけれど、やっぱり普段どおりの梅田えりかというわけにはいかなくて・・・

千聖は子供っぽいところもあるけれど、案外プライベートな部分を悪い意味で引きずらない。あんなことがあったのに、いつものテンションで話しかけてくる千聖がちょっぴり憎たらしくて、私はつい拗ねた態度を取ってしまった。

「千聖は何でも愛理だもんね。」
「もう、決まってんでしょ?愛理って言っちゃいなよ。」

メンバーを恋人に例えるような質問があるたびに、私は千聖が愛理を選ぶように誘導した。千聖は困惑していたみたいだけど、とりあえず一度は愛理を選んで、次は舞美を選んだ。
自分でそういう状況を作り出したくせに、千聖に選ばれなかったことが地味にグサリと胸を刺した。なんてわがままなんだ私は。

その後もゲームに負けてスイーツが食べられなかったり、本当なら楽しめたはずのラジオ収録は、苦々しいものとなってしまった。

「うぅ・・・」
「え、えりかちゃん・・」


テーブルに突っ伏す私の指を、千聖がぎこちない動作で握った。
別に、嫌われたわけじゃないみたいだ。急にあんなことされて、どうしたらいいのかわからなくなってしまっているだけなのかもしれない。まだ、今なら誤解は解ける。


「・・・千聖。」

私はおもむろに顔を上げると、千聖のちっちゃい手をガシッと捕まえて、まっすぐに目を合わせた。
「えっ・・」

千聖は困った顔で何度か腕を引こうとしたけれど、私がガッチリ掴んで話さないのを見ると、愛理に縋るような目を向けながら、力を緩めた。


「千聖、ご飯食べに行くよ。」

ええっ?と千聖より先に愛理が声を上げた。それはそうだろう、私は普段あんまりこういう強引な物言いはしない。でも、今はそんなことを言ってる時じゃない気がする。とりあえず、千聖に私の話を聞いてもらわないことには何も始まらない。

「行くよ。」

フカ゛フカ゛してる千聖を宥めるべくもう一度宣言すると、私は千聖の手を引っ張って、ラジオ局を後にした。



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