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中華なら付き合ってもいい、という千聖のリクエストに答えて、私は個室のあるちょっと高級な中華料理屋さんに千聖を連れて行った。出費が・・・と思ったけれど、まさか全席オープン状態のバー●ヤンで、あの話の続きをするわけにはいかない。

カップルが利用するようなお店だから、私と千聖は2人掛けのおっきいソファに並んで座っている。
最初はあからさまに私のことを警戒していたけれど、おすすめのふかひれラーメンと桃まんに舌鼓を打つうちに、少しずつ体を私の方へ近づけてくれた。

頃合を見計らって、私は千聖に、今まで私達が(というかお嬢様と私が)何をしてきたのかを話し出した。
温泉でのこと、楽屋でのこと、あのコテージであったこと・・・・そして、どうしてそういうことをするようになったのか、その経緯も。
――さすがに、お嬢様の千聖に恋愛感情を抱かれてることは伏せておいたけれど。



「・・・信じられない。」

「千聖、それもう14回目だよ。」
「だって・・・」


落ち着いているときなら、千聖はフカ゛フカ゛しないでちゃんと話を聞いてくれる。それでも、私の打ち明けた内容は千聖にとってありえないものだったみたいで・・

「そんな、だって、それじゃ千聖、ただのエロい子みたいじゃん。不安になるとエッチなことするって」

口を尖らせてブツブツ文句を言いながら、千聖はふかひれラーメンをちゅるんとすすっておいしい、と呟いた。

「まあね、気持ちいいことだったからやめられなくなっちゃったんだよ。私も千聖も。」
「気持ちいいって??嘘、全然気持ち良くなかったよ!ていうか何か怖かったしえりかちゃん変た・・・あ、エビマヨ頼んでもいい?」
「どーぞ・・・」

ありえない信じられないを連発しながらも、もう逃げる様子はない。肩と肩がくっつくぐらいの距離まで寄っているのに、千聖はなんてことない顔でウエイターさんにオーダーをしている。

「えと、エビマヨと、水ギョーザと、あとこのレタスと角切りチャーシューのチャーハンと・・・」
「ちょ、もう無理!勘弁して!」

慌てて止めに入ると、千聖はク゛フフと満足そうに笑って、チャーハンはキャンセルしてくれた(でもマンゴープリン2個頼んだ・・・)。

「本当、よく食べるよね!こんなちっちゃいのにさ。」
「もー、ちっちゃい言うな!」

良かった、いつもの調子に戻りつつある。やっぱり少し強引にでも連れ出して正解だった。もうお嬢様には戻らないのかもしれないし、元気な千聖とちゃんと話せたのは収穫だった。


「あのさ、えりかちゃん。」
「ん?」
「私、えりかちゃんの言うこと信用してないわけじゃないの。だってこんな・・・何かチェックの可愛い服とか、絶対自分では選ばないから、これはお嬢様キャラになってたときに選んだんだと思うのね。
でも何ていうんだろう・・・なんかまだ全部よくわかんなくて、えりかちゃんがあんな風に千聖のこと触ったりするのありえないって思ったら怖かったの。・・・変態とかいってごめんなさい。ひどいこと言っちゃったね千聖。」

私を見上げる瞳は潤んでいて、後悔に胸を痛めているのがひしひしと伝わってくる。

「いいよ、謝らないで。そりゃあびっくりするのしかたないよ、覚えがないのに当然みたいにベタベタされたら怖いもんね。」
「ごめん・・・」


千聖の頭が肩に押し付けられる。手を回した背中がかすかに震えていて、泣いてるのかもしれないと思った。

千聖は感受性が強いから、人を傷つけたり悲しませた時、必要以上に深く受け止めてしまうところがある。
本当に、そんなに気にしなくていいのに。私は黙って、柔らかい髪を撫でてあげることしかできなかった。

「お待たせしま・・・あっ」

料理を運んできたウエイターさんが、私達の尋常じゃない様子に慌てて、黙って退散していこうとした。

「あっ待ってください!大丈夫です!ここ置いてください!」
途端に、千聖はバッと顔を上げて、テキパキとテーブルを片付け出した。

「エビマヨ♪エッビマヨ♪」


――はい、前言撤回。

千聖はたしかに感受性の強い子だけど、良くも悪くも頭の切り替えが早いんだった。さっきまでシリアスな顔してたくせに、このお子ちゃまめ!

「えりかちゃん、食べないの?おいしいよ?」
「どうぞ、独り占めしてちょーだい。」

とはいえ、振り回されたのはちょっとだけしゃくにさわるから、私は少し意地悪をしてやることにした。お皿を抱え込む左手をキュッと握る。

「ねえ、この後、取ってあるから。」
「取る?何?」

「そこのホテルの、スイート」

「・・・?・・・・・!!!!!」


お子ちゃまな千聖は、こんなベタな昼ドラ的冗談にも過剰反応を返してくる。

「フカ゛フカ゛フカ゛フカ゛」

口から飛び出してるエビマヨを指で押し込んで「おいしい?」と聞くと、千聖は青ざめたままコクコクとうなずいた。



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