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「げっ・・・」

校門の前に立つ“あの方々”の姿を確認して、私はサッと身を潜めた。


「ダメです、スカートが短い!」
「リボンはもっとしっかり結んでください!」

右腕の腕章が光る、サイドテールの中等部3年生が、特徴のある高い声でキャンキャンと檄を飛ばしている。

そう、我がもぉ軍団の目の上のナントカ、風紀部隊。

まあ、私は特に何か言われたことはないんだけど、桃なんて厳重注意の常連だ。最近は熊井ちゃんもなぜかはっちゃけ出して、元から明るめな色の髪をさらに染めて、おまけにおもしろパーマをかけてしまったもんだから、もう私達は完全にロックオンされている。


「ちょっと、友理奈ちゃん!その頭、直してきなさいって言ったじゃない!」
「えぇ~いいじゃん別にー!」

案の定、並木道をのんびり歩いてきた熊井ちゃんが、さっそく委員長さんに捕まった。

「もう、私は悲しいよ友理奈ちゃん!前のストレートの方が可愛かったよ、どうしてそんな派手派手になっちゃったの!スカートだって、そんなに短かったらおなか冷えちゃうんだからね!冷えは女性の大敵で云々」
「だってだって、パーマかけてみたかったんだもんー。そんな怒ることないじゃーん。別に、校則でパーマ禁止って書いてないでしょ?スカートの丈も指定ないでしょ?だからやってみただけだもーん。」
「た、確かにそうだけど、やっぱり節度ってものがあるでしょう!」
「でもでもー」



噛みあわない2人の議論を背に、私は一応最後の身だしなみチェックをした。ただでさえ目をつけられてる軍団の一員なんだし、突っ込まれないようにしなくちゃ!


制服、OK!ネクタイ・・危ない、ちょっと歪んでた。髪形・・・問題なし!いざ!


「おはようございまーす。」
「あー、おはよう菅谷さん。じゃあ、さっそく。」

熊井ちゃんに付きっ切りな委員長さんの横にいる、高等部の梅田先輩にピョコンと頭を下げて、風紀チェックをしてもらう。
梅田先輩はいつも風紀委員とは思えないほど派手派手なのに、こういう日はキッチリ第1ボタンまで閉めて、リボンも緩くしていない。スカートも膝丈。それが、なんていうか・・・全然似合わない。

「イヒヒヒ」
「ん?どうかした?」
「いえいえ、イヒヒ」


梅田先輩はチェックリストと私を見比べながら、「うん、問題ないかな。」と言ってにっこり笑ってくれた。

「良かった。それじゃ・・・」
「あ、やっぱちょっと待って。」

呼び止められて振り向くと、梅田先輩は私の顔をジーッと見つめていた。

「あれ、何か・・・ダメ?」
「ううん、全然・・・ダメじゃないよ。でも、ちょっとメイクが濃い目?」

うっそー!人のこと言えないじゃーん!なーんて、上級生相手にいえないけれど。ちょっと口を尖らせて「そぉですか?」と拗ねた感じで聞いてみる。

「全然、スッピンでもカワイイしもったいないよ。あんまりガッツリお化粧すると、肌荒れちゃうしね。ま、全然校則違反じゃないから、気にしないで。ウチの個人的な意見だから。」


梅田さんはそう言ってヒラヒラ手を振ると、また違う生徒を呼び止めて、風紀チェックに入ってしまった。


「梨沙子ー。」

校門に向かって歩いていると、やっと委員長さんから解放された熊井ちゃんが、後ろから追いかけてきた。

「もう、いっぱい文句言われちゃった!なかさきちゃん怒りんぼだ」
「・・ねえねえ、私のメイクって、濃いかな?」
「え?」

さっき言われたことが気になって、私は熊井ちゃんに顔を近づけてチェックしてもらった。

「んー、別にそんなことないと思うけどな。」
「だよねぇ」


実は、パパやママにもお化粧はまだ早い!なんて怒られちゃったりしてる。でも、私にはひそかに憧れてる美人な先輩がいて、その人みたくなりたいって思ってるから、ついついメイクに力が入ってしまうのだ。・・・一応、ギャルっぽくなりすぎないよう気をつけてるんだけどな。

「せっかくオシャレとか楽しみたいのに、ケチだよねー」
「だねー。」

そんな文句を言い合いながら、私達は昇降口でバイバイした。

「あら、すぎゃさんおはよう。」
「・・・・おはよー」


ローファーを脱いでると、ゲタ箱の所で岡井さんとバッタリ鉢合わせになった。だから、すぎゃじゃなくてす・が・・・・まあいいや別に。


「今日は何かあったのかしら?皆さん、校門の前で立ち止まっていらっしゃるみたいだけど」
「風紀委員さんのチェックだよ。岡井さん、受けなかったの?」
「私は車用の入り口から入るから・・・皆さん、大変なのね。」

―あ、そうだった。岡井さんは車通学なんだ。まあ、別にチェックなんて受ける必要なさそうだけど・・・。

「ねえ、岡・・・」

「千聖、遅いー。先行っちゃうよ」
「あっ待って舞!すぎゃさん、また後でね。」

ぶー。何だよー。

せっかく話を広げてみようと思ったのに、岡井さんは1年生の萩原さんに呼ばれて、さっさと私を置いて行ってしまった。

2人はケンカ中って愛理から聞いてたけど、どうやらもう仲直りしたみたいだ。わざわざ2年のゲタ箱まで迎えに来て、何かラブラブだ。

最近ももとあんまり一緒にいないのは、萩原さんと復活したから?よく考えてみれば、萩原さんは授業が終わるたびに、うちのクラスへ来ては岡井さんを連れ出している。
もぉ軍団に団長が戻ってきたのは嬉しいけど、もも微妙に寂しそうなの、岡井さんわかってるの?

私だって熊井ちゃんやももと過ごすのは楽しいけど、他に友達がいないってわけじゃない。クラスの子とか、愛理とか、他にも大好きな人たちがいっぱいいる。
岡井さんも寮の生徒さんたちや、生徒会の人たちにいっぱいお世話になってるはずなのに、今は萩原さんだけしか見えてないって感じ。そんなんでいいのかな?何か・・・


「うー・・」

何となく面白くなくて、私は顔をしかめたまま教室に向かう。岡井さんが悪い子じゃないっていうのはわかるんだけど、すっごい鈍感っていうか、天然っていうか、無神経っていうか・・・
みんなは“可愛らしい”とか“さすがお嬢様”とか言ってるそういうところが、私にはどうにも納得ができないのだった。



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