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「梨沙子おはよー」
「おはよ。・・・あれ、岡井さんは?」
「お嬢様はまだいらしてないけど?」

そか、教室にも来ないで萩原さんとどっか行っちゃったんだ。荷物ぐらい置いてけばいいのに。

「何か機嫌悪い?梨沙子」
「んー。大丈夫だけど・・・」

うちの学校は、進級前に学内オンリーの学園祭みたいなのをやる。
今朝はホームルームの前に、クラスで出店するものについて会議するって話だったのに。もうみんな結構集まってきてるけど、岡井さんそのこと忘れてるんじゃない?


「じゃあ、大体集まってることだし、もう始めよっか。何か意見ある人ー」


学級委員の子が前に立って、いくつか案が出始めた頃、岡井さんがひょっこり顔を出した。

「あっお嬢様!おはようございます!」
「「「おはようございます!」」」


―うわ、声揃いすぎ!普通でいいじゃん!


「あら、ごめんなさい私ったら。今日は学園祭の打ち合わせがあったのね。すっかり忘れてたわ。」
「そ、そんなのいいんですよ!ゆっくり登校なさってください!あ、お嬢様は何か出店なさりたいものはございますか?ありましたら、それにしましょう!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!岡井さん話し合い参加してないのにー!絶対変!」

思わず口を出してしまった。普段あんまり意見とか言わない私がそんな発言をしたものだから、みんなびっくりした顔で一斉に振り向いた。


「・・・ええ、すぎゃさんのおっしゃる通りだわ。私のことはお気になさらないで、どうぞ皆さんお話し合いを続けてください。」

私の言葉を受けて、岡井さんは少し目をパチパチさせた後、にっこり笑って席に着いた。


「それも違ーう!!話し合いには、岡井さんも参加するんだってば!クラスの一員でしょー!お嬢様だからって、特別じゃないもん!」

「梨沙子ったら!お嬢様になんてこと言うの!」
「ももも申し訳ありません、お嬢さま!」

私の大爆発なのに、なぜかクラスメイトたちが慌てて岡井さんにぺこぺこ頭を下げる。当の岡井さんは何が何だかわからないって感じで、困ったように私の顔を見つめていた。

「あの、すぎゃさん?ごめんなさい、私、お手伝いしますから、そんなに怒らないで・・・」
「だからぁ、お手伝いじゃないの!岡井さんもクラスの一員なのにもうどうしてそうあばばばばば」
「わー!梨沙子が倒れた!」

まったく話の通じない岡井さん相手に、私は頭に血を上らせて盛大にあばってしまった。貧血の時みたいに、体がぐわーんと横に傾く。



「大丈夫?保健室、行こう?」
「・・・大丈夫だもん。ちょっと休むから。」

私は首を横に振って、机に突っ伏した。今朝の服装検査といい、何だか今日は面白くないことがたくさんある。
窓際の岡井さんをこっそり盗み見ると、話し合いの最中だっていうのにやっぱり上の空。誰か知り合いでもいるのか、グラウンドに向かって微笑んではクフフと笑っている。

そりゃあ確かにみんなが特別扱いするのが良くないんだけど、岡井さんだってそんな無関係みたいにしてないで、もっと積極的にならなきゃいけないんじゃないの?今のままでいいのかな??


「やっぱり、なんか納得できなーい!」


お昼休み。中庭でももと熊井ちゃんを相手に、私は愚痴をこぼした。

「まあまあ、そんなに怒らなくても。千聖もいろいろ大変なんだよ。」
たこさんウインナーを箸でつまみあげながら、ももが苦笑する。

「だってなんか、すごいマイペースっていうか、みんな岡井さんに気使ってるのに、イマイチそういうのわかってないし。クラスのことも、全然積極的に参加してくれないんだよ。今日だって集まりに遅れてきたし!」
「あー・・・千聖はね、本当は全然気使われたくないんだよ。でも、どうしてもみんなが自分を特別扱いすること知ってるから、あんまり何事も首を突っ込まないで、お手伝い程度にしておくのがお互いのためにいいと思ってるみたい。」
「でもでも・・・」

「何か梨沙子、千聖お嬢様のことばっか考えてるねー。本当は仲良くなりたいんでしょー?」

ちょっ!黙ってたと思ったら、熊井ちゃんはにやにや笑いながら私を肩で突っついてきた。

「違うよそういうんじゃなくてあばばばば」
「ほらー、そうやってすぐムキになるし。梨沙子、本当に苦手な人の話はしたがらないじゃん。気になるし、どうにかしてあげたいからそんなに張り切っちゃってるんでしょ?」


うっ・・・・それはそうかも。熊井ちゃんは変なとこがやたらと鋭い。


「・・・まあ、クラスのこともさ、そうなんだけど。りぃは、岡井さんが最近ずっとももじゃなくて萩原さんとばっかりいるのも気になるの。」
「もぉ?」
「だってだって、萩原さんと仲直りしたとたん、ももとは一緒にご飯も食べなくなっちゃったじゃん。そんなのってさ、何かさ、もものこと萩原さんの代わりにしてたみたいでさ、何か・・・」

ヤバイ。ちょっと瞼の下が熱くなってきたから、とりあえず私はそこで言葉を切った。


「あはっ、何て顔してんの梨沙子。・・・あの2人はね、すっごくすっごくお互いのこと大事に思って、大切すぎて、それでこじれちゃったの。だからその反動で、もう離れたくないって思ってるんじゃない?いいじゃん、今は好きなだけ2人にさせてあげようよ。」


ありがとね、とももは私の口にからあげを放り込んでくれた。

「おいしい。・・・でも、ももはそれでいいの?利用されてるみたいだって思わない?」
「思わないよー、だって、もぉは千聖がもぉのこと大好きだってわかってるから。会いたくなったら会えばいいのさ。」

―あ、何かグサッときた。ももは単なるぶりぶり系のカワイイ女の子のように見せかけといて、こうやって時々、中学生じゃ真似できないような大人な意見をサラッと言ったりする。

「へー、もも、かっこいいね。もぉ軍団の面白担当なのに、いいこと言う!」
「何だとー!面白いのはくまいちょーのパーm」


こら待てももー!と中庭で追いかけっこを始めた2人を笑いながら見ていると、突然後ろから背中をポンと叩かれた。

「どうもー、新聞部ですけど。」
「あ、こんにちは。」

ニカッと笑って立っていたのは、高等部の徳永先輩という新聞部の人だった。

「これ、号外ね。もぉ軍団のみなさまは当事者なんで、先に渡しときまーす。おめでとう!それじゃ!」
「え?あ、ありがとうございます??」

何がおめでとうございますなんだかわかんないけど、とりあえず渡された新聞に目を通してみる。んーと、進級直前、第1回・・・


「あばばばばばばちょっと!もぉ軍団集合!な、何だこれー!」
「え、何?どうしたの?」

その衝撃的な記事にあばばを発動させた私に驚いて、二人は慌てて駆け寄ってきた。



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