「進級直前!第一回 校内何でもランキング??」
芝生に新聞をバッサリ広げて、3人で号外に目を通す。
真っ赤な文字の見出しの下には、卒アルでよくある“○○だと思う人”というような項目がいっぱい設けてあって、それぞれ第5位までいろんな人の名前が書かれている。
「あー、梨沙子すごいじゃん。“妹になってほしい人”と“おしゃれだと思う人”が1位だ。他にも結構入ってるよ!くまいちょーは・・・あー・・・あはは・・・」
「ひどーい!“ミスター○校”って!私女なんだけど!何この“イケメンだと思う人”第1位って!“運動神経抜群そうな人”3位とか!私運動できないのにー」
納得できない!と憤慨する熊井ちゃんを宥めながら、今度はももの名前を探す。
「あはは、もも高2なのに“妹になってほしい人”に入ってるーイヒヒヒ!あと、“乙女な人”“将来玉の輿に乗りそうな人”とか、“実は腹黒!?”とか。うけるー!あ、でも“準ミス○校”じゃーん。すごいすごい!」
ももの場合、ぶりっこキャラの時と平常時の時と両方の性格で投票されてるから、私以上にいろんなランキングの項目に名前が出ている。これじゃまるで二重人格だ。
「ふふん。まぁ、やっと時代がもぉに追いついたっていうか?注目されるのはいいことだと思うし?」
すました顔でいいつつも、結構嬉しそうだ。
ミス○校になったのは、3年生のモデルとかやってるすっごい美人な先輩だから、ももの準ミスはかなり大健闘だと思う。鼻が高くなっちゃうのもうなずける。
「でもさ、これいつアンケートあったの?私知らなかったんだけど。」
私が尋ねると、2人は一斉に首をひねった。
「あれ、知らない?2週間ぐらい前にホームルームで配られたけど。」
「うっそーん!知らないよ!なんだ、私も投票したかったぁ。」
ちょうど風邪をひいて3日ぐらい休んでたことがあるから、その時だったのかもしれない。・・なんだ、知ってたら私、あの高等部の先輩をミス○校に投票したかったのに・・・・・んんん???
「ね、もう1個質問!このランキング、変じゃない?」
「何が?」
「だってね、例えば“妹にしたい”とか“お嬢様っぽい人”なら、愛理が入ってるはずだと思うの。“勉強を教えて欲しい”なら清水先輩は?風紀委員長さんは?生徒会長も、あんなに人気あるのに何にも入ってないよ!・・・・・・あと、岡井さんも。」
生徒会長、副会長(風紀委員長)。清水先輩に梅田先輩にまーさ、愛理に岡井さん。さっきの徳永先輩。転校生でめっちゃ頭いい有原さん。・・・私の憧れのあの人。
ちょっと考えただけでも、学園内ですごく人気のある人たちは、全くと言っていいほどランクインしていない。
「ああ、これ新聞部と生徒会の合同企画だからさ。企画に携わった人への投票は無効になるって話だったよ。」
「へー・・・そっか」
「そう、だから、梨沙子の大好きなみやに投票してもどっちみち無駄だったということさぁ」
あばばばばばば!バレてた!ハズカシー!
顔が真っ赤になってるのをからかわれる前に、私は話題を逸らすことにした。
「お、岡井さんも生徒会のお手伝いしてるんだったね!そりゃあランキングに入ってないわけだ!」
「あれあれー?梨沙子やっぱりお嬢様のこと気にしちゃってー。好きなら好きって認めちゃいなさいよー!」
「もー!違うもん!」
否定しつつも、もしこの何でもランキングに岡井さんも入っていたなら、一体どうなっていたんだろうとちょっと気になっていた。無効でも、とりあえず岡井さんの名前を書いた人って結構いたんじゃないかな?
何もご機嫌取りって意味だけじゃなくて、普通に人気があるのは私だって認めてる。
“妹にしたい”とか、正直私より岡井さんの方が1位になってそうだ。“デートしてみたい”とかはどうかな。それこそ、“ミス○校”は?いや、それは、何か違うかな。
「梨沙子?」
「んー。」
投票されていたかもしれないし、されてなかったかもしれない。無効票が公開されてない以上、絶対に解明できないその疑問は、なんとなく私をやきもきさせた。
「結局寮生は、この子だけだねー。ランクインしてるの。」
黙り込んだ私の目の前に、半笑いのももが新聞をずいっと突きつけてきた。指差す先には“お仕置きしてほしい人”ランキング。
「ちょーウケる!イヒヒヒヒヒヒヒヒィ!」
「笑いすぎ、梨沙子!ウフフフ」
「あはははー」
そこには萩原さんと、美人だけど怖いと噂の新聞部の元部長さん(引退したから無効票じゃないらしい)が載っていた。ちょうどにらみ合うような構図に加工された写真つき。2人は同率1位だ。
「千奈美、舞ちゃんと千聖のとこにもこれ持ってたのかな?反応見たいんだけどー!」
“何これ!ちしゃと何笑ってんの!ちょっと!”と萩原さんがプンプンしてる姿が想像できる。
他にもドS系のランキングや、頭いい系のにも萩原さんはいっぱい載っていたけど、これは本当傑作だと思う。
教室戻ったら、岡井さんにも新聞見せてあげようかな。別に私だって、いつも岡井さんにプンプンしてたいわけじゃないんだ。一緒に盛り上がれる話題があるなら、そうしたいし。
「梨沙子、ニヤニヤしちゃってぇ。またみやのこと考えてた?」
「違うもーん。これ、りぃが先に貰ってもいい?」
「ん、もぉは後で貰うからいいよー」
なかさきちゃんに見せて文句言うんだから!と張り切ってメモを取る熊井ちゃんを待ちながら、私のニヤニヤは止まらないのだった。
最終更新:2013年11月22日 07:07