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舞の家に遊びに来て!と唐突に誘われたのは、今日――4月11日のことだった。
ちょうどツアーの初日で、次の日もコンサートの予定が入っていたから、日を改めてもらおうと思ったのだけれど・・・舞ちゃんは「明日に差し障らないようにするから!」となぜか引き下がらない。
それで、舞ちゃんのお家に招いてもらうことになったんだけれど・・・コンサート会場の駐車場に止まっている舞ちゃんのママの車の中には、一足お先に千聖がちょこんと座っていた。

「あれー?」
「ウフフ」
「まぁまぁ、入って、愛理!」

私をぐいぐい押し込みながら舞ちゃんも乗り込んで、いよいよ車は出発した。

「愛理、お茶飲む?」
「あ、うん。いただきまーす。・・・ねえねえ、何かこの3人だけで遊ぶのって初めてじゃない?」
「ウフフ、言われてみればそうね。本当、楽しみね。」
「うん。わくわくしちゃうよーケッケッケ」

2人に直接言ったことはないけど、私はキューティーガールズでわいわいするのが結構好きだ。
千聖は自分のことツッコミだと思ってる天然ボケで、それはお嬢様の千聖でも明るい千聖でも変わらない。舞ちゃんはそんな千聖にバンバン突っ込み返したり、一緒にイタズラを考えてにやにやしたりしてて、そこに私が入ろうとすると、大抵2人して私をいじってきたりする。

今日もそんな感じで、たっぷり笑って過ごせたらいいな。私は楽しそうにおしゃべりする2人を交互に見比べて、ムフフと笑いを噛みころした。


「お邪魔しまーす・・・」

家に着くと、さっそく舞ちゃんのお部屋に通された。わりとさっぱりしてるけど、ぬいぐるみや可愛らしい小物入れがさりげなく置かれていて、センスがいいな、なんて思った。


「ほい、じゃあそこ座って愛理!千聖はこっちね。あと、あれ。」
「ええ。」

透明なガラステーブルを挟んで、舞ちゃんはオレンジジュースを並べ始めて、千聖はバッグの中をゴソゴソやっている。

「ちぃ?用意できた?」
「待って、もう少し・・・」
「もー、早くぅ!」

しびれを切らした舞ちゃんは、千聖の横に肩を並べると、なにやら一緒に作業をし出した。

「おーい?」
「あっ待って!愛理は見ちゃダメ!」

覗き込もうとしたら、2人してガバッと私の視界から何かを隠してしまった。

「もうちょいだから、メールでもしてて?千聖、これはこっち。違うってばー」
「あら、こうでいいのよ。それより、ここを・・・」

ちぇー。何かすごい気になるけど、こういう風になるとこの2人は結構長いのは、経験上わかっている。
私はオレンジジュースをちょびちょび飲みながら、ケータイをいじって待つことにした。


「お待たせ!ごめんね愛理。では。ちぃいくよ、せぇーのっ」
「えっ?」


「「愛理、お誕生日おめでとうー!」」

「・・・・ありがとー!」


パチパチパチ、と2人分の拍手を受けて、私はペコリとおじぎを返した。

「思いついたの急だったからさ、コンビニケーキでごめんね。」

ニコニコしながら2人が差し出した三角ケーキには“HAPPY BIRTHDAY AIRI”とデコペンで描かれていて、チョコチップやアラザンで可愛らしく飾り立てられていた。

「ううん、嬉しいよ!ありがとー!」

まさか前日に、しかもこのメンバーでお祝いしてくれると思わなかったから、喜びとびっくりが重なって、ケッケッケ笑いが止まらない。

「また改めてキュートのみんなでお祝いすると思うんだけどね、今年は特別だから。」
「特別?」
「ええ。キューティーガールズが、MCカッパー&チッサーとDJマイマイが、中学生トリオでいられる、最後の年になるでしょう?」

―そっか。確かにそうだ。どれだけ年をとったところで、キュートの中では私達はいつまでも最年少だけれど、中学生と高校生じゃその末っ子トリオのあり方も全然違ってきてしまう気がする。
いつまでも変わらないつもりでも、私達の中で目に見えない速度で変わっていってしまうものは確実にあって、2人もそれを感じてくれていたのがとても嬉しかった。


「何かさ、うちら個性とか全然違うのに、こうやって喋るの楽しくない?」

ニコニコご機嫌な舞ちゃんの言葉に、私も千聖もうなずく。

「だってね、昨日舞思ったんだけどね、3匹の子豚ってあるじゃん?あれで考えるとぉ、絶対千聖って、藁の家建てるタイプでしょ?」
「あら、私は舞さんが藁のおうちを建てると思うわ。私が藁を選ぼうとしたら、“舞これがいい!”って取っちゃうでしょ?」
「えー何で?舞はちゃんとレンガだもーん。」


でたでた、いつものちさまい争い。どうでもいいことをいつまででも言い合うところは、お嬢様の千聖も明るい千聖も同じみたいだ。


「・・・まあ、でも愛理は木の家だよね。」
散々討論した後、唐突にターゲットは私になった。

「ええ、それは賛成。ウフフ」
「えー何で何で?」

「「愛理は、詰めが甘いから。」」


―なるほど。なかなか鋭い。

「でも私、千聖はレンガだと思うよ、うん。」
「えぇーなんで??」


不服そうな舞ちゃんをまあまあと宥めながら、オホンと一つ咳払い。

「何か千聖は、途中まで一人でレンガ積むの頑張るんだけど、もーいい!ってなっちゃうの。それで、どこからともなくなっきぃが現れて、一緒に作り始めて。
そのうち舞美ちゃんやえりかちゃんも手伝って、栞菜と舞ちゃんも千聖のこといじりながら組み立ててあげて、はい完成!
千聖が作ったけど、住むのはキュートみんな!みたいな。ちなみに私は組み立ては手伝わないけど、後で食料を持って行くから中に入れてね。ケッケッケ」


「それずるい!」
「愛理ったら、お手伝いしてくれないなら木の家で一人暮らしよ!」

またおかしな話題で盛り上がっていると、いきなり背後のドアが勢いよく開いた。


「ちーーさーーまーーいーーー!」


ホールケーキを片手に、仁王立ちしていたのはなっきぃだった。

「えええ!?」

「ちょっと、いつまで待たせるつもり!?舞ちゃんのご家族にだって申し訳ないでしょ!豚の話とかどうでもいいでしょうが!」

な、な、なんだ?
突然のことに口をぽかんと開けたまま固まっていると、なっきぃを先頭にして、「おっそいよー!」と笑いながら舞美ちゃん、「眠くなっちゃったよー」とあくびをしながらえりかちゃんが部屋に入ってきた。

「えぇ~・・・」

「あのね愛理、今日はファンの皆さんや愛理の家族より先に、みんなでお誕生日祝っちゃおうって計画だったの。
そしたらちさまいが、先にキューティーガールズだけで話したいっていうから、ある程度時間が経ったら2人の合図でドッキリ風に登場する予定になったの。
だから外でずっと待ってたのに、ぶ、豚とか、豚とか、どうでもいい話し出して!どうせなっきぃたちがいるの忘れてたんでしょ!」
「「忘れてました・・・」」
「キー!」

さすが裏リーダー。高校生になって、さらにちゃきちゃき仕切りがパワーアップしている。そんな頭から湯気が出ちゃってるなっきぃを、「まあまあ。」と舞美ちゃんが肩を叩いて落ち着かせた。

「それじゃ、今からお誕生日第2部やろう!愛理、まだケーキ入る?」
「うん、余裕~」

テーブルの上を簡単に片付けて、六人でテーブルを囲んだ。まだリハビリ中で来れなかった栞菜からも、えりかちゃんが手紙を預かってくれていた。(来年は絶対参加するから!と書いてあった。)

「こりゃ、お泊りになっちゃうかもね。」
ママー!お布団!と舞ちゃんがリビングに走っていく。

なっきぃは相変わらずキャンキャンと千聖になにやら話を続けてるけれど、目が笑っているから、もう別に怒っていないんだろう。何気にさっきの三匹の子豚の話が気になってるらしくて、「なっきぃはね、」なんて自説を話し出してるみたいだ。

「愛理。」

ニコニコしながらそれを見ていたら、年上2人組がほっぺたをつんつん突っついてきた。

「ちっさーと舞と3人で、楽しかった?」
「うん、すごく!」
「それは良かった。千聖も舞ちゃんも、かなり張り切ってたからさ。こっからはウチらのプロデュースだよん。ケーキ食べ終わったら、パジャマパーティー!」
「いえーい♪」

これは千聖も知らされてなかったらしく、目をパチクリさせている。

「はい、千聖はママに電話。愛理は?大丈夫?」
「え、あ、うん。じゃ私も。」

お母さんにメールを打ちながら、私のほっぺは綻んでいた。こんなにいっぱい祝ってもらえるなんて、すっごい幸せなことだよね。
キュートで良かった、なんて常々思ってることだけど、こうしてみんなの優しさに触れた時は、その気持ちがより強くなる。

「ちさとー!お布団手伝ってぇ!」


奥から舞ちゃんの声が聞こえてきた。
誕生日第2部も、すっごく楽しくなりそうだ。


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