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「うへへへ」

「うへへへじゃないでしょー、もう、ヤバイぞ新聞部!」

机にだらーんともたれかかってニヤける千奈美と雅を、佐紀がペンで突っついた。

今日は進級前最後の期末テストの一斉返却日。放課後2年生の教室で佐紀、舞美と一緒に結果を見せっこしていたら、「佐紀ちゃあん、助けてー!」
なんて言いながら、2人が飛び込んできた。

「うーわ、これは・・・」


私も決して人のことは言えないんだけれど、お2人ともすさまじいスコアをたたき出している。主要5科目がほぼ、赤点・・・・・


「まったく、雅は外部受験で入学してきたんでしょー?なんだなんだこの成績は!」
「だってー。あの時は頑張る動機があったからさー。入学したら超バカに戻っちった。だはは」

のんきに笑ってる雅につられて一緒に笑っていたら、佐紀がバン!と机を叩いた。
「笑ってる場合じゃなーい!いい?2人とも。ちゃんと追試で合格しなかったら、新聞部の活動は休止してもらうからね!」
「ええー!?ひどーい!」
「文句言わない!進級できなかったらどうするの!それが嫌なら今から勉強勉強!」

スイッチの入った佐紀は、優等生モードで2人を近くの席に座らせた。まるでうちのなっきぃさんのようだ。さすが、わが校の誇るWサキはだてじゃない。


「あら?ごきげんよう。どうなさったの?皆さんお揃いで・・・」

その時、開けっ放しのドアの向こうを見慣れたツーショットが横切って、すぐに後ろ歩きで引き返してきた。

「あー、こんにちは。舞ちゃん、お嬢様。」

2人は手を繋いで教室へ入ってきた。帰り際だったのか、開いてる方の手にはスクールバッグを持っている。


「あのね、今帰るとこだったから、えりかちゃんたちはどうかなって思って。ほら、それなら千聖も一緒に帰れるし。」
「あー。」


以前誘拐されそうになったことがあってから、千聖お嬢様は、登下校は車で送迎されるようになっていた。
でも、いつのまにか舞ちゃんが、お嬢様のご両親に交渉していたらしく“登下校時、3人以上の生徒と一緒なら、歩いて帰ってもいい”という文言を勝ち取ってきてたのだった。(といっても朝はだるいから、相変わらずお嬢様は車で登校している。ちゃっかり者め!)

「お忙しいかしら?」
「いえいえ、もう帰れますよ。それじゃ佐紀、ウチらはそろそろ・・・」
「えー!帰っちゃうの!一緒に苦しもうよ!」
「置いてかないで!」

ギャーギャー騒ぐちなみやびに興味をそそられたのか、お嬢様は「何をなさってるの?」と近くに寄ってきた。

「お嬢様、この2人はね、赤点コンビになっちゃったんですよ。」
「あら・・・赤点・・・?」


お嬢様は眉を軽くしかめてから、おずおずと机にプリントを置いた。


「・・・あらー」



数学、理科。お嬢様の成績一覧表にも、みごとに2箇所赤い文字が躍っていた。


「英語はこの前なっきぃが教えてくださったから、大丈夫だったけれど・・・」
「あはは、大丈夫ですよ!てかうちら、赤点トリオじゃないですか!これは縁起がいい!」

しょんぼりうつむくお嬢様に、千奈美がニヘッと笑いかけた。

「ちょっと、ちぃ!失礼なこといわないの!大丈夫ですよ、お嬢様。私もお勉強手伝いますから。ね、えりか?」
「・・・あはは。」

佐紀に話を振られて、私はドキッと跳ね上がる心臓を押さえながら、力なく笑った。

「何その笑いは。ま、まさか・・・・・」


「はい、すみません。」


おそるおそる差し出した私の一覧表にも、燦然と輝く赤い文字。化学に数学、世界史。



「えり、だめだめじゃーん。なっきぃが見たら怒っちゃう!とか言ってw」
「うけるんだけど!こりゃ赤点トリオじゃなくて、赤点カルテットだね!」
「ウフフ」

「ウフフとか言ってる場合かー!もう、私がまとめて面倒見てあげるから!そこへ直りなさい!」

半ばキレ気味の佐紀ちゃんにピシャリと注意されて、全員背筋が伸びる。


「・・舞に言ってくれれば、千聖の勉強ぐらいみてあげたのに。」
「あら、だって舞はできないとぷろれすでいじめるじゃない。」
「ふふん、嬉しいくせにー。」

しぶしぶ理科の教科書を開いたお嬢様は、舞ちゃんとイチャイチャしながら勉強を始めた。
私には舞美がついてくれたんだけれど・・・・教えてもらってる立場であれなんですが、舞美はあんまり説明というものが上手じゃない。

「ここは、さっきの公式を使えばいいんだよ。」
「え?何で何で?」
「何でって・・・えー、何でだろう、とか言ってwでも大丈夫だから、これで解けるから」

うぐぐ!そういうことじゃなくてー。頼むよ舞美!

結局、隙あらばふざけ出すちなみやびに手を焼いた佐紀ちゃんが、応援に栞菜を召還した。

「私今度は、えりかに付くから。舞美はちぃをお願いね。舞ちゃん、高等部の内容でもわかるでしょ?」
「・・・まあね。」

というわけで、なんと中等部1年生の舞ちゃんが、雅の指導に回った。

「ビシビシいきましゅよ、新聞部め!」
「ひえー」

お嬢様の指導係を外された舞ちゃんは、不機嫌そうにものさしで机をピシピシ叩いた。

「じゅるり。お嬢様、栞菜が手取り足取り乳取り教えてあげますからね。」
「きゃん!栞菜ったらどうしてそんなところ触るの!」

―大丈夫、だよね?

いろいろ不安はありつつ、それぞれマンツーマンで勉強を始めてみたら、意外と集中力が出始めた。
私は丁寧に教えてくれる佐紀の指導が向いてるし、千奈美は一方的に教わるより、一緒に考える舞美との方が合っていたみたいだ。雅はひーひー言ってる。
栞菜もなんだかんだできっちり教えてあげてるみたいだし、若干気分が乗ってきたぞー・・・・っていうタイミングで


「・・・飽きた。」

千奈美がポィッとシャープペンシルを放り出した。

「ねー、もう飽きた!てかすごくない?もう一時間経ってるし!うち頑張った!ねーちょっと休憩しようよ!話しようぜ!ガールズトーク!」



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