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「ちょっとー、まだやることいっぱいあるんだからそんなことしてる場合じゃ」
「まあまあ、いいから!はい、勉強中断!」

千奈美はみんなの手からペンを奪って、円になるように机を並べ替えた。


「それじゃーうちらもお年頃ってことで!恋話でもしよー!誰か彼氏いる人ー。・・・いないのかよっ!うちもいないけどっ!」

千奈美の1人ボケツッコミが炸裂する。まだ誰も何も言ってないのに。


「え、じゃあさじゃあさ、好きな人のタイプとかどう?右から順番に言ってこうよ。はいまず佐紀ちゃん!」

さっきまでの真面目モードはどこへやら、こういう話題になるとちなみやびはいきなり元気になる。

「えぇー、急に言われてもなぁ。そうだなあ・・・」

勉強会は中断になったけれど、佐紀もこの手の話題は嫌いじゃないらしく、楽しそうな顔をしている。


「あ、千奈美だけにちなみにうちはね、やっぱイケメンがいいな!で、何か面白くて、ノリがよくてー、あんまうちより頭よすぎるのは困るなあ。あとはねー」
「ちょっと、私の番じゃないの?もー。・・・まあ、私は落ち着いてる人がいいかな。勉強でも趣味でも、いろんな話ができる人。容姿とかは別に気にしないけど。はい次!えりか!」

あ、照れてる。可愛い。

「ウチは頼れる人で。あと、顔はいい方がいいでーす。」
「だよねだよね!じゃあ次の人!」


「明るくてスポーツできる人って良くない?一緒にグラウンド走ったり、とか言ってw次どうぞ!」
「私は・・・チャラい系はもういいかな。普通に気が合って、面白い人がタイプ。はい次ー」
「私も清水先輩と一緒で、いろいろ語れる人。私結構ネガティブだから、励ましてくれると嬉しいかな。あ、でも可愛い女の子も絶賛受け付け中ですよお嬢様!痛いよ舞ちゃん、ぶたないでよ!」
「・・・舞は頭悪い人はお断り。あ、でも別に勉強できなくてもそれは構わないからね千聖!そういうことじゃなくて(ry」


やっぱりこの手の話題はみんな興味津々みたいで、人と自分のタイプの違いを比べたりして、かなり盛り上がった。

「あとは・・・・えっと・・・・」

舞ちゃんのお隣。ちょこんと座って私達の話をにこにこ聞いてるお嬢様に、いっせいに視線が注がれる。


―こういう話、箱入り娘のご令嬢に聞いていいものなのかしら。


口には出さないまでも、みんな思っていることは一緒みたいだ。・・・約1名を除いて。


「あ、じゃあ最後千聖お嬢様ですね!どんな人がタイプですかー?やっぱり、別荘が10個以上あるとかそんな感じ??それとも、逆にビンボー人萌えとか?」

さすが新聞部。興味のあるトピックには、ガンガン突っ込んでいく気概のようだ。


「・・・好きな人のタイプ・・・というのは、婚約者や恋人のことなのかしら?」

少し考えながら、お嬢様は首をかしげてつぶやいた。

「うーん・・・まあ、大体そんな感じですね。お付き合いしてみたい人、と考えていただければ。」
「ふふん。千聖はおこちゃまだから、まだそういうのわかんないんじゃない?桃太郎侍とか黄門様がいいんでしょ?」

舞ちゃんがからかう口調でそう言うと、お嬢様はほっぺたを膨らませた。


「もう、舞はそうやっていつも子ども扱いするんだから。」
「だって本当のことじゃーん。」
「私にだって、恋人はいるのよ。」
「そうそう、だから千聖は子供だって


・・・・・・・・・・・・・・え?」


もともと大きい舞ちゃんの目が、零れ落ちんばかりに見開かれる。


「お、おじょ、おじょお嬢様・・・今、何と?」


「ですから、私、恋人はいます。」


お嬢様は口を尖らせながら、もう一度繰り返した。



「「「「「ええええええええええええええ!!!!??」」」」」


5人分の絶叫が、教室に響き渡った。

「あら、そんなに驚かなくても。ウフフ、えりかさんたら、お口がぽっかり開いていらっしゃるわ。」

「お、驚きますってそんなの!」

だってだって、まさかお嬢様に先を越されるとは・・・じゃなくて、こんな何にも知らないような顔して、彼氏がいるですって!?


「お嬢様、詳しく聞かせてください。お2人の馴れ初めは?いつからのお付き合いで?ていうか、相手の方っていったい」
「ち、ちしゃとおおおおおおおおおおお」
「うわっ」

新聞部モードでお嬢様に詰め寄る2人片手で押しのけて、舞ちゃんがお嬢様の肩をガクガク揺さぶった。

「きゃあ!?な、何をするの、舞!」

「おろろろーん!ちしゃと殿おぉぉおう!拙者は悲しいでござるよおぉおう!」
「拙者もでござるよおおおおぅおおおう」

「わー舞ちゃんと栞菜が壊れた!」


慌てて2人を引き離して、舞美がズルズルと廊下に引きずっていく。それで、何となくこの場はお開きになってしまったのだった。




「・・・ヒック。愛理、お代わり頂戴。」
「あたいも。ヒック」
「2人とも、飲みすぎだよぅ・・・」

寮に戻ってからも舞ちゃんと栞菜の落ち込みようはすごかった。

「ふふふ。愛なんて、所詮儚い蜃気楼でしゅ。疲れ果てた舞はちしゃとの幻を愛したんでしゅ」
「そうだかんな。あの楽しい日々は愛の影法師、うたかたの夢だったんスよ。」

もはや何を言ってるのかよくわからない。ショックなのはわかるけど、あまりにどんよりした顔を見てると、逆に笑いがこみ上げてくる。
私は不謹慎なネタに弱い。本気で心配している舞美と愛理とは裏腹に、1人、笑いの発作と戦っていた。

「てやんでぇ、こんちくしょうめ」
「なっ・・・何どうしたの?飲酒!?」


学校から帰ってきたなっきぃが、食堂でくだを巻く2人に驚いて駆け寄ってきた。


「大丈夫、オレンジジュースだから。」
「ひっく。」
「あ、そ、そうなの?でも一体なにがあったの?」


ドン引き顔のなっきぃに、とりあえず事の顛末を説明する。


「・・・・お嬢様に、恋人が」
「うん、それで2人とも・・おーい、なっきぃ?」
「キュフフ、フフフキュフフフフ」

なっきぃはふらりと立ち上がると、舞ちゃんの手からオレンジジュースのビンを奪って、ラッパ飲みし始めた。

シラフ酔っ払いが3人になってしまった。そろそろ笑い袋が破裂しそうになってきたので、私はとりあえずこの場を離れようかと思い始めた。

「・・・でもさ、何か変な感じじゃない?」
「え、何が?」

腰を浮かしかけた私を、愛理が呼び止めた。

「うん、だってね私達、毎日誰かがお屋敷にお手伝いに行ってるじゃない?休日だって、一度は顔を出してるわけだし。」
「・・なのに、そのお嬢様の恋人を見た人が誰もいない、と。」
「そう。それに、お嬢様はそういうの隠そうとするタイプじゃないと思うんだけどな。」

―確かに。お嬢様は結構おしゃべりが好きで、日々起こるいろんなことを寮生にもいっぱい話してくれる。第一、嘘がつけないタイプだから、恋愛関係で何かあったのなら、絶対誰かしらに感づかれているはずだ。


「・・・謎だね。」
「だね。」


涙止まらぬ涙あああぁあぁぁあ!


肩を組んでシャウトしている3人組を眺めながら、私達は首をかしげた。



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