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「たのもー!」
「どうれ。って何何!朝っぱらから!」

庭をホウキで掃除していためぐが、ただならぬ私達(ていうかまいかんなっきぃ)の気配に、反射的に玄関の前に立ちふさがった。

「ちしゃとは!ちしゃとに会いに来たの!」
「あー。」

頭の回転の速いめぐは、それだけで大体事態を把握したらしい。面白がるようにムフフと笑うと、ちょっとイジワルな口調で
「昨日、ずいぶん遅くまでいちゃいちゃお楽しみだったみたいだから、まだ寝てるんじゃない?とかいってw」とニヤニヤしながら舞ちゃんのほっぺたをつついた。

「のおおおっ!そんなの、そんなの認めてたまるかあ!お嬢様は、お嬢様はなぁ!そんな御子やあらへん!」
「ええっ?」
もはやキャラが崩壊したなっきぃにめぐが怯んだ隙に、ほふく前進の栞菜と舞ちゃんが脇を抜けていった。

「あっコラ!」
「かんちゃんは添い寝係やめへんで!」

まるで捨てゼリフのようにそう言い残すと、二人はあっという間に玄関ホールを抜けていった。

「ちょっと待ってよー」
「もう、えりこちゃん早く!」

なっきぃに腕を引かれて、私もお屋敷の中へ入っていく。
2階の長い廊下の先、奥まったところにあるお嬢様のお部屋の前には、鼻息の荒い2人が待ち構えていた。

「まあまあ舞ちゃん、落ち着いて。」

私は今にも扉を蹴破りそうな2人を諫めて、「お嬢様、おはようございまーす。梅田ですけどー」と軽くノックして声をかけた。


「えっ・・・えりかさぁん・・・・」

耳をくっつけると、ふにゃふにゃした小さい声で名前を呼ばれたのがわかった。鍵はかかっていない。

「お嬢様、入りますよ!ってうわっ!」


ノブを回した瞬間、後ろにいた3人組に押されて、将棋倒しになってしまった。

「イタタタ・・・」
「えりこちゃん、大丈夫?」

一応心配をしてくれるなっきぃとは裏腹に、舞栞コンビはひょいっと私を飛び越えて、ふかふかベッドへ一直線に向かっていった。

「うぅー・・・」

よたよたと近づいていくと、眉をしかめたお嬢様が、うるうるお目目をこちらに向けてきた。そのちっちゃいお体をさゆみさんが抱き枕みたいに抱えていて、半ばのしかかっているような体勢になっていた。

「キエエエエ!」

3人の中では比較的理性を保っていたはずのなっきぃが、奇声とともにベッドにダイブした。そのまま2人の真ん中に割って入って、アクション映画のようにさゆみさんと絡まってゴロゴロ転がり、ベットの下に落ちた。

「痛―い!!何なの!?」
「それはこっちのセリフですっ!お嬢様に何するんですかっ!」

寝起きにキャンキャンとなっきぃに吠えられて、さゆみさんは目を白黒させている。

「てか何このおばさん!この人が千聖の小姑?本当に?」
「おばっ!失礼ね、さゆみはまだ成人もしてないのにっ!いつまでも若いと思ったら大間違いよ、あなたたちだって!」
「ハッ。今若いのは事実だし。大体、舞がそのぐらいの年になる頃にはあんたは何歳だと思ってんのさ」

自己紹介もせずに口げんかを始める面々をよそに、私と栞菜は硬直したままのお嬢様に駆け寄った。

「ああぁぁああぁ・・・千聖お嬢様がキズモノにされてもーた・・・わしかて我慢しとったのに」
「・・・キズモノ?なぁに、それは」
「いや、されてないから!それより、大丈夫ですか?顔色がすぐれないようですけど」

どうやら、一晩中抱っこされっぱなしだったらしい。親しい人にはわりと物事をはっきりいえるお嬢様も、恋人(一応)の妹さんとなると、いつもと勝手が違ったんだろう。
ただでさえお嬢様は人に抱きつかれるのが生理的に嫌で、舞ちゃんでさえなかなかハグさせてもらえないというのに、さぞ辛かったことでしょう!
案の定、お嬢様はふてくされた顔でおふとんに包まって「今日はお休みしたいわ」とつぶやいた。

「昨日はさゆみさんのお話を夜通し聞き・・・いえ、2人でお話していたから、寝不足なの。」

お嬢様の目の下は少し青ざめていて、寝不足の証の隈ができていた。

「あぁ、可哀想なお嬢様。今から栞菜が添い寝してあげるかんな」
「ダメよ!千聖ちゃんはちゃんと学校に行くの。それが真のレディとしてのただしい振る舞いだとさゆみは思うの。さ、千聖ちゃん着替えましょうね。さゆみが手伝ってあげるから」
「ちょっと、誰のせいでこうなったと思ってんの!」

騒ぐ3人をハイハイと往なして、さゆみさんはパンパンと手を叩いた。すると、待ち構えていたかのようにめぐが部屋へ入ってくる。

「はい、お三方とえりは外へ出てください。朝食を用意してますから。」
「ちょっとめぐ、どっちの味方よ!」
「私はしがない一メイドですので。・・・ていうか、客人をもてなすように昨日旦那様から連絡が入ったから。」

後半は私達にだけ聞こえるボソボソ声で、めぐが教えてくれた。あ、面白がってるな。若干目が笑っている。

「ちしゃとは子供じゃないんだから、一人で着替えぐらい」
「はーい千聖ちゃん、脱ぎ脱ぎましょうねー。あっ千聖ちゃんの制服可愛いね!メイドさん、さゆもこれ着たいんだけど!換えはないの?
あ、そうそうそれでね千聖ちゃん、昨日の話の続きなんだけどー、さゆのお姉ちゃんがね、ゲームに負けてがっぺムカツクっていうあれを」
「はぁ!?人の話聞きなさいよこのバ」

ついに禁断の一言を発しそうになった舞ちゃんを慌てて廊下に引きずり出す。・・・やばい。ものすごいしかめっつらになってる。

「―えりかちゃん、さっき私、言ったよね。千聖の結婚相手の条件。」
「あ、は、はい。」

「舞、絶対絶対絶対認めないから!もうっ!こんなんなら舞が千聖と結婚する!同性同士の結婚が認められてる国はどこでしゅか!あんな人に千聖は渡さないでしゅ!」
「いや、別にさゆみさんとお嬢様が結婚するわけじゃ」
「ふんっ」

舞ちゃんは肩を怒らせて、朝ごはんのお部屋に早足で向かっていってしまった。

「さゆみ様、別に悪い人じゃないんだけどねー」

そんな光景を後ろから見てためぐが、ムフフと口を押さえて笑った。

「むしろいつもワガママ放題な千聖がオロオロしててちょっと面白い、とかいってwあ、今の舞ちゃんには内緒ね。さて、制服制服!」


「もう、めぐぅ・・・」

なぜかるんるんスキップのSモードなめぐの背中を見つめながら、私はため息をついたのだった。



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