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「・・・・飽きたわ。」

お嬢さまは手にしたUNOをポイッと投げ捨てた。

「えぇ~またですかぁ」
「だって、どのゲームをやっても栞菜が勝つじゃない!千聖はつまらないわ」

オセロにトランプ、チェスにUNO。
テレビが見れないならと始めたゲームも、お嬢様の退屈を満たすには事足りなかったみたいだ。

お嬢さまは嘘がつけない上に、相手の手を読んで戦略を考えるといった行動もお得意ではないらしく、ババ抜きやダウトでは一発で手持ちのカードを読まれ、オセロは私が張った罠に毎回まんまと引っかかり、ジタバタ悶絶している。

「じゃあ、次は何やります?そろそろネタもつきてきたんですが」
「・・・・そうね、栞菜、何か面白いことをしてちょうだい。」
「えっ!そんなこといわれても」

いきなりのムチャ振りに硬直すると、お嬢様はクフフと笑って「あら、えりかさんはお願いすれば面白いことをしてくださるわ」なんて当然のように言い放った。ちょっと!私のお姉ちゃんに何やらせてるのお嬢さま!


「ね、栞菜。何かないのかしら?」
「うーん・・・・急に言われても・・」

お庭で公開処刑若しくは露出SMプレーを行っていたあの2人も、さすがに疲れ果てて一時撤退していったみたいで、喧騒は止んでいる。時計を見れば、もう12時前。部屋から一歩も出ていないとはいえ、若干おなかがすいてきた。

「お嬢さま、この辺でそろそろお食事を持ってきていただくというのはいかがでしょうか。」
「あら、まだ私はそれほどおなかがすいていなくてよ。我慢なさい。」


くっ・・・!何その上から目線!(そりゃあお嬢さまのおうちだけど!)


我慢していると思うと、ほんの少しだったはずの空腹感はなぜか急に高まっていく。
お嬢さまの性格からすると、さっきの裏切りの代償として、わざと作るのがめんどくさい昼食を要求するだろう。おそらく、調理人にめぐぅを指名して。

そんなことになったら、いつおまんまにありつけるかわかったもんじゃない。ここはさっさとおなかをすかせていただかないと!


「お嬢様!じゅるり」
「な、なに?面白いことをしてくれるの?ねえ、何なのその笑顔は」

いきなり立ち上がった私を本能的に警戒したのか、お嬢様はゆっくりとソファの端っこに移動する。


「ふっふっふっふ。栞菜のお口はどうしてこんなに大きいかわかりますか?それはね・・・お嬢様を食べちゃうためだよっ!!!!」
「きゃあああ!」

1人赤ずきんを披露しながら、私はお嬢様にガバッと飛びかかった。が、お嬢様は抜群の運動神経で、寸でのところでひらりと交わした。勢いよくソファに顔をぶつける私。鼻打った!痛い!でも負けない!


「お嬢さまああああ」
「もう!なんなの!こっちへこないで!」

私だって、瞬発力には自信がある。懲りずに飛び掛ってはかわされ・・・を繰り返すうちに、2人とももんどり打ってベッドに倒れこんだ。


「ふへへへ、叫んだって誰も来ないぜ。アタイと楽しもうぜ千聖」
「ちょっとやめなさい!命令よ!もうっ何するの!何でそんなところ触ろうとするの!栞菜!」


キーキー騒ぎながらも、お嬢さまは結構楽しそうに私にプロレス技をかけてくる。ど、どこで覚えたんすかそれ!
私は一人っ子だから、正直こういう兄弟同士でやるような遊びに飢えているところがある。

愛理が相手じゃ深刻な空気になりそうだし、なっきぃは本気で泣くだろうし、えりかちゃんは何か凹ませちゃいそうだし、舞美ちゃんじゃ私が即死だ。ハギワラさんはまだデータが少ない。

「くらいなさいっ!腕ひしぎ十字固め!」
「あだだだだだ!負けるものかっ!キャメルクラッチ!」
「きゃー!」

部屋着の乱れを気にしつつも、お嬢様はかなり勇敢に立ち向かってくる。面白くてたまらない。

まだ入寮したばかりの私は、添い寝係なんかしてるとはいえ、他のみんなよりもお嬢様との関係が薄いと思っていた。

「アイタタタタ!お嬢様、大人しくはずかし固めされなさいよ!腕をお離し!」
「何なのそれは!私は栞菜の思い通りにはならないわ!やめなさい、胸を触るのは反則よ!」

――でもきっと、お嬢様にこれだけひどいことができるのは私ぐらいだ。これが私なりのお嬢様への接し方・・・っていいのか、それで。倫理的にどうなんだ。

「はー、はー・・・」
「あー・・・・もう、お嬢様、スタミナありすぎ・・・」

やがて疲れ果てた私達は、どちらともなく体を離してベッドにうずくまった。
こうやって頭空っぽにしてこんなに力いっぱい遊んでいると、もう細かいことはどうでもよくなってきてしまう。
親とケンカしたことも、お嬢様とご両親のいざこざも、この勢いでどうにか収束するんじゃないかって、楽観的な考えさえ浮かんでくる。

「し・・・信じられないわ・・・妹だって、ここまでひどいことはしないわよ」
「だってぇ・・つい楽しかったもので・・・」

一応セクハラプロレスの言い訳なんぞをしてみると、お嬢様は汗をかいたおでこをハンカチでぬぐいながら、ニッと笑った。

「栞菜は刺激的で楽しいわ。」
「光栄です、お嬢様。」

そんなやりとりをしているうちに、2人のおなかが同時に“グーッ”と鳴った。

「まぁ、恥ずかしいわ。」
「お嬢さま、もういいですよね。お昼!ランチ!ご・は・ん!」

「もう、栞菜ったら。お昼ごはんのために、ここまでするなんて。仕方ないわね。
本当はめぐに意地悪をして、作れそうもないものをオーダーしようと思ってたのだけれど、私ももうそんなに待ちたくないわ。手早く作れるものをお願いしましょう。」

お嬢様がそう言って腰を浮かせかけた時、大きなテレビの電源が唐突に入った。

「げっ・・・・」

すっかり忘れていた、寮生の皆様が笑顔で着席している。

「お嬢様ー見てますかぁ?キュフフ、今日の私達のお昼、何だかご存知ですかぁー?」

鼻の頭にばんそうこうを貼ったなっきぃ(たぶんさっきのSM・・・)が、挑発するようにお嬢様に問いかける。

「えっ?知りたいって?じゃあ、一品一品見ていきましょうねー。まずはぁ、焼肉!」
「「「イエーイ!」」」
「ラーメン!」
「「「ヒュー!」」」
「パスタ各種!」
「「「まぁ、なんて豪華なのお!」」」
「ちょぉおおっと待ったぁ!これだけじゃないんです!今ならデザートにラフランスのシャーベット(ry」

な、なんて卑劣な!
テレビ通販番組の如くわざとらしい口調で、みんなはお嬢様を煽る。知ってます・・・私、知ってます!お嬢様はこういうベタな誘惑に弱いんです!

「らーめん・・・」

お嬢様は案の定目を潤ませて、モニターに見入っている。

「我慢ですよ、お嬢様!」
「でもでも」

こうなると、何が何でも屈したくなくなってくる。さっきまではお嬢様を宥めていたはずの私が、今度は意地を張り出したのだった。



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