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ちっさーって、美人なんだ・・・
小鳥のさえずりのような「僕らの輝き」を聞いたえりかちゃんがヒーヒー言いながら去っていくのを見届ける横顔を見て、私はそんなことを考えていた。
マスカラののりがとても良さそうな長くて濃い睫の下で、少し茶色がかった瞳が不安げに揺れている。
「えりかさん、体調を崩されてしまったのかしら。」
目が大きいとか、くっきり二重とかいうわけではないけれど、ちっさーの目は切れ長で黒目がちでとても神秘的だ。困ったような表情で見つめられて、少しドキドキしてしまった。
私とちっさーが一緒にいる時は、大抵一緒にバカなことをやって大笑いしていたから、ちっさーと言えば笑顔、元気、明るい、という印象が強かった。
そのギャップの大きさもあるのか、こうして間近で見つめるおしとやかなちっさーはとても可憐で、守ってあげたくなるようなオーラを纏っている。
「大丈夫だよ。なんかテンション上がりすぎちゃっただけだって。ちっさーが気にすることないよ。」
私が明るく返すと、ちっさーは胸の前で握った手を少し緩めて
「ありがとう、栞菜さん。」
とにっこり笑った。

・・・・千聖はふざけてるわけじゃないよ。
昨日の夜、電話で愛理から真面目なトーンでそう言われたことを思い出す。ちっさーが変わってしまったあの日から、私は何となくちっさーと二人きりになることを避けていた。
元気キャラじゃないちっさーとどうやって話したらいいのかわからなかったし、もしこれが全部ちっさーのわるふざけだったら、私はちっさーを嫌いになってしまいそうで怖かったのだ。
そしてそんな風に考える自分のことも何だかイヤになってしまって、ここ数日、かなり落ち込んでいた。
そんな時、私を気遣ってくれたのか愛理が電話をくれた。私はちっさーに関して自分が思っていることを全部打ち明けた。
感情が高ぶって途中でボロボロ泣いてしまったけれど、愛理は優しい声であいづちを打ちながら、私の話を聞いてくれた。
「そうだよね、千聖が急に違う人になったら怖いよね。」
愛理の声はとても落ちついていて、しゃくりあげる背中をさすってもらっているような気持ちになった。
「でも、あの千聖もちゃんと千聖だよ。
変わっちゃったように見えるかもしれないけど、前と同じで優しくてみんなのことを大好きって思ってくれてる千聖のままだ。
だから私は今の千聖と一緒にいるの。」
何か気が合うっていうのもあるんだけどね、なんて照れ笑いしながら愛理は言った。
「明日、栞菜も千聖と話してみたら?何にも心配することないよ。」
そんな愛理からのアドバイスで、今日はずっと千聖と話す機会を伺っていたのだけれど、結局今に至るまでずっと話しかけられなかった。
「栞菜さん、あまり私とはお話したくないでしょうか?」
「へえっ!?」
悶々と考えこんでいると、いきなり千聖に話しかけられた。
「家族にも、友達にも、千聖は変わってしまったと言われます。でも私には、以前の私がわからなくて。大好きな方たちを困らせてしまうのは嫌なのですが・・・」
「ちっさー・・・」
そっとハンカチで目じりを押さえるちっさーを見ていたら何だかとても悲しくなってしまって、私はちっさーの頭を抱え込むように抱いて一緒に泣いた。
「不安にさせてごめんね、ちっさー。でもキュートはちっさーの家族だから。話したくないなんてありえないから。本当にごめんね。」
そして、いつまでも戻ってこない私たちをなっきーが呼びに来てくれるまで、ずっと抱きしめあって泣いた。(なぜかなっきーも号泣した。)

「どーしたの!?瞼腫れてるじゃん!」
鼻をグズグズさせながら休憩室に戻ると、舞美ちゃんが慌ててかけよってきた。
「喧嘩?殴り合いとか?仲直りは?」
「違うよぅ。」
慌てる舞美ちゃんがちょっと面白くて、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
「私たちは仲良しでっす!さて、顔洗ってくるね!いこ、ちっさー」
「あ、栞菜さん。」
「・・・栞菜でいいよ」
「はい。・・・・・栞菜。」
ちょっと!私だってまだ愛理さんなのに!と愛理が後ろで叫んでいるのを尻目に、私とちっさーは手をつないで水道まで走った。



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