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やっと笑いの発作がおさまってから、私はお父様に連絡を取り、駅まで迎えに来てもらった。


「明日菜。」

家に着くと、リビングにいる明日菜に声をかけた。

「・・・何。」
「さっきの、メールのことを話したいの。」
「今、テレビ見てるから。」
「でも、私は今お話したいのよ」
「うっさいな」


ちょっと後ろめたいことがあると、ぶっきらぼうになるのは明日菜のいつもの癖。私に、叱られでもするんじゃないかと怯えているのだろう。

「ねえ、明日菜。」

だから私は、可愛い妹の前にしゃがみこんで手を握った。振りほどかれなかったから、そのまま手を取って、2人で部屋に戻る。
明日菜は無言で、2段ベッドの下――つまり、私のスペースにもぐりこんで、枕を抱きしめながら上目遣いで私を伺った。
ちょっと生意気なところもあるけれど、こういう妹らしい振る舞いは可愛いと思う。普段ぼんやりしていて、姉らしく扱われない私にとっても、プライドをくすぐられて心地よい。


「私ね、よくわからなかったの。」
「うん・・・」
「どうして明日菜は、・・・私がエッグの活動に参加したらいいと思うの?」
「うーん・・・・」

普段の明日菜は、少なくとも私には、思ったことを何でもはっきりと伝えてくる。

そういえば昨日も、「お姉ちゃんの豚まん!」「まあ!人のことを言えるの!?」「両方ともチャーシュー!(弟発言)」と一戦やらかしたばかりだった。まったく、少しは私に姉としての威厳を・・・


――閑話休題。


その、負けん気の強い明日菜が、私に「いいから黙って(ry」と迫ってこないのだから、何かあるんだろう。吉澤さんたちや、新垣さんたちのこととの関連も。


「・・・別に、深い意味はなかったんだけど」
「ええ。」

しばらくすると、明日菜は私のタオルケットから頭を出して、床に座る私の髪をいじりながら喋りはじめた。

「何か、お姉ちゃんは結構、エッグのみんなの面倒みてくれるし、ツアー日記とかに一緒に撮った写真載せてくれるでしょ。」
「そうね。エッグの楽屋に遊びにいくと、構ってもらえて楽しいわ。」
「それで、お姉ちゃんがエッグに入ったら面白いかなって何となく言ったら・・なんかみんな私が思ってたより、盛り上がっちゃって。ごめん。いつか言わなきゃって思ってるうちに、期限が」
「期限?」

首を傾げると、明日菜は慌てて「なんでもない!」と指に絡まっていた私の髪を引っ張った。


「きゃんっ!」
「あ、ごめん・・でも、今のはなんでもないから。期限とか、ただのいい間違いだから。」
「ええ。・・・明日菜、お姉ちゃんの話を聞いてくれる?」

私は床に正座をして、明日菜の方へ向き合った。それを見た明日菜もベッドの上で膝を揃える。


「私は、エッグの皆さんが好きよ。」
「うん・・・」
「でもね、だからといって私が所属するという風には考えられないわ。その、事務所の方からの辞令ではないわけでしょう?」
「・・・うん。そうだよね。変なこといってごめんなさい。そう、そうだよ。うん」

私の答えを聞いた明日菜は、どことなくホッとした顔でうなずいた。

「エッグの皆さんには、私から何か説明したほうがいいかしら?」
「あっいい!それは大丈夫!それよりお姉ちゃん、国語の宿題教えて欲しいんだけど・・・」
「あら、私で大丈夫かしら?」

それから私たちはもうその話は一切せず、一緒に宿題をやって、おしゃべりして、布団に入った。



翌日。

「ちっさー?今日早いねー!ちょっと話さない?」
「あ、はい。」

劇団ゲキハロのお稽古。
集合時間より、だいぶ早く着いてしまった私は、1人でストレッチをしていた。そこに、鮮やかなピンクのジャージを纏った舞美さんが来た。


「えーと・・・最近、どうかね。勉強とか、学校とか、仕事とか?」
「・・・ウフフッ」

最近テレビで見た、“思春期の娘にぎこちなく話しかける父親”を思い出して、私は思わず笑い声を漏らしてしまった。

「おかげさまで、学校は面白いです。勉強も、根本が理解できれば楽しいということがわかりました。」
「そか、いいねえ」

人格が変わってしまった当初、まったくその自覚のなかった私は、一時的に友人やクラスメートから奇異の目で見られてしまっていた。
でも、メンバーの協力のおかげで、今は学校では前(?)の私のキャラクターで通すことができている。本来の性格を擬えているからなのか、前の自分を演じていても、不思議と苦にならない。
まだ学校ではそんな感じだけれど、最近では、えりかさんがいれば、ほんの短い時間だけど元の私の性格に戻れることがわかった。もっとも、その間の記憶は少しあいまいになってしまうのだけれど。


「仕事は、いつもどおり毎日わくわくしながら励んでいます。ゲキハロ、うまくいくといいですね」
「そうだねー。」
「・・・」
「・・・」


沈黙が訪れた。

私はそれほど口数が多い方ではないから、こういうことはよくある。同じくわりと物静かな愛理と一緒にいるときなんかは、ただなんとなく寄り添ってぼんやりしていることもしばしばあるぐらいだ。
でも、今の舞美さんはそういう感じとはまた違う。
「うーん」とか「あー」とつぶやきながら、私と目が合うと、あいまいに笑ってあさっての方向を向いてしまう。


「あの・・・?」
「えーとね、ちっさー。いきなりだけど、聞いてくれる。」
「はぁ・・・」

隣にいる人の肩を抱くのは、舞美さんの癖。でも、今私の肩を包むその手はいつもより汗ばんでいて、しかもギリギリと力がこもっている。


「ま・・・舞美さん、手、少し、力を・・・」
「あ、ごめんごめん!あの、それでさ・・・ちっさー」



「Hi-Kingに入らないか?というお話でしょうか。」



舞美さんの綺麗なお顔が、大きくお口を開けたまま、静止してしまった。


「当たりですか?」


顔を近づけてニッと笑って見せると、舞美さんの表情も緩んだ。・・・と思っていたら。


ガンッ!



「きゃんっ!」
舞美さんの顔がどんどんアップに・・・そして、おでこに衝撃が走った。そのまま、床に倒れこむ。


「ごめんちっさー!また加減が」

どうやら、舞さんがよく私にふざけてする軽ーい頭突きの真似事だったみたいだ。でも、一発で頭がくらくらしてしまうほどの威力があった。

「ごめんねー本当に。」

抱き起こされて、えりかさんより固めな膝に頭を乗っけてもらう。


「ふふ、ふふふ」
「あははははは」
「うふふ」


ああ、もう何が何だか。
まさか、℃-uteのメンバーまでが、ユニットの話を持ってくるとは思いも寄らなかった。

問いつめることもできず、かといって舞美さんからそれ以上の話がでることもなく、私たちはメンバーが集まってくるまで、ひたすら苦笑し合った。



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