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「ゲキハロが終わったら、千聖と2人で旅行に行って来るから。」


それは、ゲキハロのお稽古真っ最中のことだった。
レッスン終了後、着替え中にえりかちゃんが私に告げた言葉。


「は・・・」


突然の報告に、とっさに言葉が出なかった。


「何・・・で」
やっとしぼり出した声は、私らしくもない弱弱しいもので、ちょっと情けない気持ちになる。

「何でって、これのお礼にね。」

そう言ってえりかちゃんが指で弄んだのは、キュートのメンバー全員でえりかちゃんの誕生日に贈った、ハートのネックレスだった。


「だ・・・だってそれは、舞たち全員からっ」
「うん、もちろんわかってるよ。ウチが千聖にお礼したいのは、ウチと一緒にみんなへのお返しプレゼントを考えてくれたこと。」

えりかちゃんの話は続く。


「ま、旅行って言っても、横浜だけどね。観光して、中華街でご飯食べて、ちょっといいホテルに泊まる。」
「ま、待って。ホテ、ホ、ホテルじゃなくていいじゃん!えりかちゃんちでいいじゃん!」
「えー、いやいや、それはちょっと。ムフフフ」



私の背中を、イヤーな汗が滴り落ちる。
えりかちゃんは、私の千聖に対する気持ちを知っている。知っていて、こういうことをわざわざ言うというのは、つまり、その、なんだ、うん。



「ま、舞の方が、千聖のこと好きだもん」
「・・・だとしても、千聖はウチのお誘いに乗ってくれたよ。すごく嬉しそうに。舞ちゃんは、千聖が望んでいることでも認めたくないの?」
「でも、だって・・・」

こういう時のえりかちゃんは、いつもの天然で優しいお姉ちゃんじゃない。私の知らないことをたくさん知ってる、18歳の大人の顔をしている。ここで私が「嫌だ」といっても、絶対にその予定を白紙にはしてくれないだろう。


「一応、舞ちゃんには言っておいたほうがいいと思ったから。」
「そんな思いやり、嬉しくないよ・・・」
「黙って行ったら、その方が嫌だったんじゃないの?」


悔しい。悔しいけれど、えりかちゃんは舞の気持ちなんてお見通しなんだ。しかも、純粋に私を思いやってる気持ちだけじゃなくて、自慢っていうか、上手くいえないけれど、そういう気持ちも入ってる気がする。

ふと、千聖の方に視線を向ける。
千聖は上半身下着のまま、なっきぃと何か楽しそうに話している。なっきぃが千聖のブラのタグを見ていたから、下着の話でもしてるんだろう。そういえば、今日の2人の下着は色違いだ。仲良しだから、一緒に買いに行ったのかもしれない。

だからって、別になっきぃに嫉妬心は沸かない。2人の関係は信用できる。なっきぃは千聖にすごく優しいし、もちろん変なこともしない。
その点では、愛理はちょっと怪しい(性的な意味で)。舞美ちゃんも危ない(悪気のない暴力的な意味で)。もちろん、えりかちゃんなんて論外だ。もし千聖とえりかちゃんがオソロのブラなんてつけてたら、絶対に剥ぎ取る。


「何がそんなに気に入らないの?」

えりかちゃんの声は相変わらず笑っている。わかってて聞いてるんだ。もー、普段はドMのくせに、こういう時はとことんイジワルなんだから!


「・・・わかってるなら聞かないでよ。」



そういうとこに泊まるっていうのは、つまり、そういうことをするっていうことでしょ。
去年の夏、えりかちゃんと千聖がコテージでしていたことを思い出す。



千聖の上に覆いかぶさる、えりかちゃんの白い背中。
その背中に回された、千聖の小麦色の腕。
2人の唇がくっつく。おっぱいも、大事なとこもくっつく。
えりかちゃんの茶色い髪と、千聖の黒髪が混じる。
聞いたこともないような、甘ったるくて甲高い千聖の声。えりかちゃんの湿った声。



私は悔しくてたまらなかったのに、そのことを思い出すたびに、頭がボーッとして、体がおかしくなっていた。
恥ずかしながら、夜ベッドの中で、えりかちゃんを自分に置き換えて妄想したこともある。
そして、誕生日に、千聖に同じ事をして欲しいとねだった。果たしてその願いは聞き届けられたのだけれど、いろいろ不本意な形に終わった(そもそも失神したのでよく覚えていない件)。

こんなんじゃ、えりかちゃんに全然勝てない。おまけに、こうしてまた差をつけられてしまうのを、指をくわえて眺めているだけなんて。


「事後報告、いる?」
「いらないよっ」


もう聞いてられない。私はえりかちゃんの元を離れて、舞美ちゃんに頭を撫でてもらいにいった。

「お姉ちゃん・・・」
「ん?どうしたの?よしよし」

大きい手にわしわし頭を撫でられて、少し気分が良くなった。


「えりかちゃんにいじめられた。」
「ええ?えり、コラだめじゃないかー!とかいってw」


えりかちゃんは黙って肩をすくめて両手を挙げるジェスチャーをした。欧米か。

再び千聖の方をチラ見する。すると、視線がぶつかった。何となくピースサインを送ると、首をかしげながらピースを返してくれた。三日月目のスマイル付き。あぁ、やっぱり可愛いな・・・


そのまま2人して手遊びゲームをしていたら、ふいに後ろから肩を叩かれた。

「ん?」

そこにいたのはなっきぃ。いつのまに着替えを終えたのか、バッグまで持って、今にも帰れそうな感じだ。


「舞ちゃん・・・今日、一緒に帰れる?」
「?舞と?うん、大丈夫・・・」


突然のなっきぃからのお誘い。ちょっとびっくりしたけど、もちろん嬉しくないわけがない。ちゃきちゃき着替えを済ませて、私は一足先に、なっきぃと一緒にレッスン場を出ることにした。



「今日暑いねー。」
「うん・・・」
「稽古楽しいよねー」
「そうだね・・・」



外に出てからいろいろ話を振ってみるものの、なっきぃは上の空だ。

「ねぇ、なっき・・・」

何か悩んでるなら、と口を開きかけた時、ぴたりとなっきぃの足が止まった。


「舞ちゃん。あのさ、」
「うん。」

いつもの可愛らしい声より、少し低くて真剣な雰囲気。私の背筋も伸びる。けれど、次のなっきぃの一言によって、盛大に脱力させられることになるとは・・・



「ま、ま、舞ちゃんて、・・・・・エッチビデオとか、み、み見たことある?」


「・・・・・・・・はああ!?」




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