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「そ、そんなに仲良くなりたいならさー、もぉが紹介するよ?千聖食いしん坊だから、ランチとか誘ったら絶対ついてくるって。」
「梨沙子から誘ってもいいけど?」
「えー、そういうんじゃないの。誰かの紹介とかじゃなくて、もっと自然な流れで運命的な友情がぁ」

―めんどくせぇ・・・

2人の唇が同時にそう動いた。め、めんどくさいってぬゎんですか!


「もーいい。うちはうちのやり方でお嬢様のこと調べ上げてやる!」

自分の頭から湯気が立ってるのがわかる。勢いよく立ち上がると、私は屋上の扉の方へ歩いていった。


「くまいちょー、アドバイスが欲しかったらいつでも言ってね?ウフフ」


私のプンプンなんてもう慣れっこなんだろう、ももは余裕で手をひらひら振ってきた。何か悔しい!



「くっそー・・・」

独り言を言いながら廊下を進む。かなり大またでわき目も振らず歩いていたら、階段との十字路のところで小さな人影が飛び出してきた。


「ひゃあ!」
「きゃん!」


避け切れない!そう思った私は、とっさに手を伸ばして、その体を抱きとめようとした。・・・けれど、運動オンチな私は結局体勢を整えることができなくて、その人の腰を掴んだまま、思いっきりしりもちをついた。


「いたたた・・・」
「おじょじょおおじょ、お嬢様!大丈夫ですか!お怪我は!?」
「え、ええ、私は大丈夫ですけれど・・・」


間髪いれずに、真っ青な顔のなかさきちゃんが飛び出してきた。そして、どういう力加減でそうなったのか、私の上に馬乗りになっているその生徒――千聖お嬢様、の体をペタペタと触っている。

「もー、友理奈ちゃんたら!お嬢様がお怪我でもなさったらどうするの!」
「ひどい!うちの心配はしてくれないのなかさきちゃん!」
「どーせまた変なこと考え込んで、前方不注意だったんでしょ!?それにその髪!巻かない方が友理奈ちゃんは可愛いって言ってるのに!」
「それ今関係ない!」


どうも私となかさきちゃんは、顔を合わせればこんな言い争いばっかり。私は廊下にねっころがったまま、顔を覗きこんでくるなかさきちゃんに反論した。


「――まあまあ、それよりお嬢様、熊井ちゃんの上からどいてあげてください?熊井ちゃんも、しまパン見えてるから。」


そんな微妙な空気を、ハキハキした明るい声が遮ってくれた。


「茉麻ぁ・・・」


オロオロするお嬢様を後ろからひょいっと抱え上げて、私のスカートを直してくれたのは、学年1個上の茉麻だった。

「全く、君達はトムとジェリーだね。」

そんなことを言いながら、茉麻は強引に私となかさきちゃんを握手させた。
私は口げんかを途中で止められるのはあんまり好きじゃないはずなんだけれど、茉麻みたいにカラッとしている人は別だと思う。お母さんに仲裁してもらった姉妹みたいに、「ごめん」「なっきぃもごめん」なんてどちらともなく謝って、変な空気は自然に解消された。

「ごめんなさいね、千聖も生徒会のお手伝いの段取りを考えていて、前を見ていなかったの。腰、打ってしまったようですけれど・・・大丈夫ですか?」

千聖お嬢様は体を起こした私の前にひざまずいて、じっと顔を見つめてきた。
こんなにお近づきになったことは今までなかったから、ちょっとだけドキドキする。
ビー玉みたいな目。バニラみたいないい香り。ふわふわした喋り方。とても、もも達が言うようなおてんばなタイプには思えない。でも、実際に私もキャッキャとはしゃいでる姿は見たことがあるわけで・・・何ていうか、ギャップがある。どういう人なのか、うまく分類できない。


「熊井ちゃん?平気ならそろそろいいかな。今ね、生徒会で使う書類運んでたんだ。」


そのまま無言で見つめ合ってると、茉麻が苦笑まじりに私とお嬢様の間をチョップで遮った。

「あ、そうなんだ。うちは大丈夫。何か、驚かせてしまってごめんなさい。」
「いいえ、こちらこそ。大きな大きな熊さんに、ケガがなくてよかったです」


――大 き な 大 き な、く ま さ ん


「あの!私は熊井です!くまさんじゃなくて!あとそんなに大きくないんで!」

いや大きいよ、という茉麻のツッコミは受け流して、私はお嬢様の両肩をガシッと捕まえた。


「ひっ」


そういえば、お嬢様は梨沙子のことも「すぎゃさん」とか変な呼び方をしていた。ここはちゃんと直してもらわないと、今後も「大きな大きな(ry」呼ばわりされたらたまらない。


「何か違う呼び方にしてください!ゆりな、でもゆり、でもいいんで!熊さんとかゴツイし!」
「あら・・・どうしましょう、そんな、急に言われても。大きな熊さんたら」
「ぬゎんで大きな熊にこだわるんですかぁ!」


せっかく空気が緩和されたと言うのに、ムキになる自分を止めることができない。だんだん人が集まってきて、そろそろヤバイと思いつつ、私は引くに引けなくなってしまっていた。


「まあ、呼び方はまた後で決めればいいじゃん。ね?熊井ちゃんは千聖お嬢様と仲良くなりたいんだよね?」

無意識に茉麻に顔を向けると、いつものお母さんな表情で助け舟を出してくれた。私は無言でぶんぶんうなずくと、とりあえず「ごめんなさい」と驚かせてしまったことをお詫びした。


「あら・・・私も、大き・・いえ、くま、くまい、さんと、仲良くなりたいわ。」
「・・・まあ、お嬢様がそうおっしゃるなら。なっきぃも今度時間があるときに、お膳立てさせてもらいます。キュフフ」



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