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「ちょっと待ちなさい!舞!」
ママの怒った声を遮るように部屋のドアを閉めて、私はベッドに潜り込んで泣いた。
こんな情けない涙は誰にも見せたくない。
夕食を食べている時、急にママから
「最近千聖ちゃんの話しないのね。喧嘩でもした?」
と聞かれて、一番聞きたくないその名前を出された私はムカッとしてこんなことを言ってしまった。
「知らない!千聖はもういないの。消えたんだよ。」
「舞、何てこというの。友達だからって言っていいことと悪いことがあるでしょ」
事情を知らないママは、私が千聖と喧嘩をしてひどい言葉を言ったのだと思ったみたいだ。
「だって本当にいないんだよ!」
「いないって?キュートを辞めたってこと?」
「…違うよ。もういいでしょ。ママには舞の気持ちなんかわからないよ!」

もう誰とも口をききたくない。千聖と私のことについて誰からも触れられたくなかった。
あの事故の数時間前、私と千聖は小さなことで喧嘩になった。
多分悪いのは私。
背が伸びないことを気にしている千聖に背比べをしかけた。
千聖が悔しそうに苦笑するのが嬉しくて、何度もしつこく
「千聖が一番小さいね!」
とか言っていたら、千聖はうつむいて
「もういいでしょ。」
と泣きそうな声でつぶやいた。
しまったと思った私はすぐに話題を変えてみたけれど、千聖は黙って早貴ちゃんの方に行ってしまった。
撮影中も目を合わせてくれない。
二人きりのショットでも私を見ようともしない。
何だよ身長ぐらい、と正直思ったけれど、千聖にとってはかなり地雷だったのかもしれない。
何とか仲直りのきっかけを見つけようとしていたら、階段を降りて行く途中で前を歩く舞美ちゃんと千聖がくすぐり合ってはしゃぎ始めた。
この輪に混ざれば自然に元に戻れるかもしれない。

舞美ちゃんは笑っていたけど千聖はその場を離れようとした。
「待っ…」
千聖の肩を掴む。びっくりした顔で振り向いた千聖は、そのまま足を滑らせて…

「私のせいだ。」
もう何百回呟いただろう。
誰も私を責めなかったけれど、私のしたことで千聖は千聖じゃなくなってしまった。
「どうしたら言いのかな」

みんなが新しい千聖を少しずつ受け入れ始めている。
私と二人でそれを眺めていたはずの舞美ちゃんも、この頃はあの千聖と笑い合うようになっている。
でもあんな子は千聖じゃない。私が謝りたい千聖はもういなくなってしまった。
私はどうしようもなく辛くて、だんだんとこの苦しみはあの新しい千聖のせいだと考えるようになっていた。



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