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「この前は驚かせてしまって申し訳ありませんでした」
お嬢様の自室に招いてもらった私はまずお詫びの言葉を口にした。
私なりに考えての発言のことだったにしても、転校の件では
お嬢様の気持ちを乱してしまったのは事実だったから。

お嬢様は硬い表情のままだったが、小さくうなずいてくれた。

「うちの言葉が足りないせいで、余計な心配をかけてしまいました。
 改めてうちの考えをお伝えしたいと思います」

お嬢様の目をしっかり見て、たとえ拙い言葉であったとしても
誤解のないようにじっくり自分の気持ちを伝える。
結局これがベストの方法だと舞美が教えてくれた。めぐも同意してくれた。
大丈夫、間違いなくうまく行く。
ヘタレで泣き虫の私だけど今は弱い自分に負けない。

「年度の途中で転校することについては真剣に悩みました。
 今すぐでなくて、卒業してからでもいいんじゃないか、
 このチャンスを仮に逃しても、次の機会があるかもしれないとも思いました」

「でもお嬢様を見ていて、そんなことではいけないと思いました」
「どういうことかしら」
「舞ちゃんと気持ちがすれ違ってそして仲直りをした前後で、お嬢様は変わりました。
 以前はわがままで泣き虫なところもあったのに、
 めぐや舞ちゃんに負けないくらい強くなりました」

「一歩を踏み出すことでどんどん強くなっていくお嬢様を見て、
 立ち止まっていては皆に先を越されてしまう、
 実現できるチャンスがあるならそれを生かすことで
 うちも将来の夢をかなえられるように努力しようと決心しました」

「舞ちゃんと仲直りするときにお嬢様はとっても不安だったと思います。
 うちも自分の環境を変えることに不安はあります。
 でもそれを乗り越える勇気をお嬢様から貰いました」

「私はえりかさんが仰ってくれるような、大したことをしたわけではないのよ。
 皆さんに気を遣っていただいて、勇気をいただいて・・・」
「うちもお嬢様から勇気を貰ったんです」

お嬢様の表情が徐々に柔らかくなっていくのがわかった。

「それからもう一つうちが決断するときに背中を押してくれたことがあります」
「寮生になってお嬢様や他のみんなと一緒に時間をすごすうちに、 
 うちらは家族みたいだなと感じるようになりました」

「お嬢様は今ご両親やご兄弟と一緒に住んではいません。
 そのことを寂しく思うこともときにはあるでしょうが、
 どんなときでも、どんな形でもご家族はご家族です」

「うちや舞美から舞ちゃんまで年齢差がある以上、いつまでも寮で
 一緒に生活はできません。でも進学して、就職して、
 いつか寮を出て生活するようになっても
 寮生の絆はいつまでも続きます。そう、家族はいつまでも家族のように」
「えりかさん・・・」

「私とえりかさんの絆は永遠なのね」
「違うよ、お嬢様」
「えっ、それではお話しが違」

うちはお嬢様の言葉を遮った。

「うちとお嬢様、それから舞美、なっきぃ、愛理、舞ちゃん、栞菜、もちろんめぐも。
 みんなの絆はどんなときでも、どこにいても永遠です。
 だからうちはちょっと寂しいけど、でも胸を張って勇ましく新しい世界に行けるんです」
「えりかさん」

お嬢様は泣き出してしまった。
「ごめんなさい、またお嬢様を泣かせちゃった」
「そう言うえりかさんも泣いているわ」
「うちはいいんです、涙は出ていても笑顔だから」
「あら私も笑顔よ。ただ涙が出ているだけで笑っているわ」


こうして私の決断をお嬢様は祝福してくれた。
この先は今までよりも辛いことが多いかもしれない、いや間違いなく多い。
しかしどんなときでも私を応援してくれる人、見守ってくれる人がいるんだ。
きっと乗り越えられる。夢をかなえてみせる。


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