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アハハッ
ウフフッ
ギギギッ


楽しげに高級ジュエリーをショーウィンドウ越しに覗く2人を、阿修羅怒りの面で歯軋りしながら電柱の陰から覗く舞様。

「・・・中華街、行くって行ってたのに。さっさと移動しなさいよね。買いもしない首輪だの耳輪だのずっと見てて楽しいわけ?全く、女の買い物はこれだから」
「いやいや、舞ちゃんも女の子・・・・あっ、移動するみたいだよ!今度はバッグのお店入っちゃった。」
「もー!!」

舞ちゃんはバンバン足を踏み鳴らして、不愉快そうにため息をついた。


カフェを出た二人は、舞ちゃんの予言(?)どおりに中華街のほうへ行くと思いきや、立ち並ぶ雑貨屋さんや洋服屋さんを散策し始めた。
前にショッピングモールでデートした時に思ったけれど、千聖の買い物時間はそれほど長くない。結構パッパッと決めてしまう。
だけど、えりかちゃんはファッションに関してはじっくり慎重に見定めるタイプだから、当然千聖もそのペースに合わせる。そうして時間がどんどん経っていくにつれ、舞ちゃんの眉間の皺も深くなっていく。


私は結構、人の流れとか見ながらボーッとするのが好きなほうだから、別に苦じゃないけど・・・隣で舞ちゃん周辺の空気がどんどん澱んでいくのが恐ろしい。


「あれって、やっぱりおそろいのもの探してるのかな・・・。」

千聖とえりかちゃんは今度はかばん屋さんに入って、カラフルなディスプレイを熱心に見ながら、いろんな色のキーホルダーとか革のストラップを手にとって話し込んでいる。

「舞、千聖と2人だけのおそろいの物とか持ってないんだけど。・・・負けた気分。」
「あれは旅行の記念っていうか、お土産みたいなものじゃない?」
「そうかなあ・・・」

普段は強気なわりに、舞ちゃんは急にしおらしくなったりするのがかわいいと思う。

「千聖の性格からして、おそろいを持つこと自体にそんなにこだわりはないと思うよ。なっきぃとだって、おそろいのストラップつけてたじゃん。あれはよかったの?」
「だって、なっきぃはちーに優しいし変なことしないし。いや、でもあのデスメールではおなっき・・・」
「デス?」
「ううん、こっちの話。愛理、ありがとうね。・・・ね、舞達も何か見に行かない?」
「いいの?」
「舞のちーセンサーによると、まだ当分2人はこのあたりでうろうろするはずだから。」

千聖センサー・・・そりゃ頼もしい。

「ね、行こ?こっそりだよ。」
「ケッケッケ、こっそりね。」

抜き足差し足なんてしたって全然意味ないのに、変にテンションの上がった私たちは、背中を丸めてスパイのようにその場を立ち去った。


「ところで舞ちゃん、どうして今日の2人の同行を把握してるの?舞ちゃんの千聖センサーが優秀だからって、具体的にわかりすぎじゃない?」
「あーうん・・・実は、なっきぃに密偵を頼んだの。ちーは舞がこの旅行に反対してるの知ってるし、えりかちゃんも教えてくれなそうだから、なっきぃにね」

なっきぃかぁ。確かに、千聖と仲良しななっきぃなら、日程について聞き出すことぐらいできるだろうけど・・・


「もちろん直接聞いたら怪しいから、さりげなく横にいて会話から推測してもらったんだけどね」
「えー・・そうなの?」

何か、不思議な感じ。なっきぃの性格を考えたら、密偵なんかしないで、直接千聖かえりかちゃんにストレートに聞きそうなのに。

「なっきぃは、しばらく舞からのお願いは断れないから。探る方法も、舞がお願いしたとおりにやってもらうんだ」
「断れないって、どうして?」
「どうしても。ふっふっふ」
「・・・」

さっき舞ちゃんが言いかけた、デスメールというなぞの単語が脳裏をよぎる。・・・舞ちゃん、やっぱり恐ろしい子!



「いいの、千聖?」
「え?」


目を上げると、えりかさんが少し顔を近づけてきていた。胸がトクンと音を立てる。

「舞ちゃんたち、追いかける?」
「あ・・・」

いつのまにか、店外の柱の陰にいたはずの舞さんと愛理は姿を消していた。
何色も種類のある、動物の形のキーホルダーを夢中で選んでいたから、気がつかなかったみたいだ。


「やっぱり、カフェでお見かけしたときに声をお掛けした方がよかったかしら。」
「いやー、あの時は掛けなくて良かったと思うよ。多分」
「そうですか・・・」


舞さんの姿を見つけたときは、少しだけヒヤッとした。


“えりかちゃんと旅行に行くのやめて”舞さんの言葉がふと脳裏をよぎったから。“千聖のためにならない”とも言っていた。
まさか、止めに・・・?だけど、えりかさんが「大丈夫。」と手を握ってくれたから、そのまま気づかない振りを続けた。

舞さんは、私のことを好きと言ってくれた(でも同時にとてもひどい行為を・・・)。今は元通り、仲良しなちさまいコンビに戻ることができたけれど、私は結局何も答えられないままだった。
このまま、いつまでもなあなあにしておくことはできない。でも、どうしたらいいのかわからなかった。だって私は・・・

「千聖、買うの決めた?」
「ええ、これを・・」
「いいね。それなら色も結構種類あるし、値段もちょうどいいね。割り勘で大丈夫?」
「もちろんです」

えりかさんの手が、商品を持つ私の手ごと優しくつつんだ。

「旅行のおみやげって、こんな近場でおかしいかな?」
「でも、皆さんに差し上げたいのでしょう?」
「うん。急にお揃いのものとか増やしたくなっちゃって。・・・ね、それ買ったら、中華街の前にちょっと行きたい所があるんだけど。近くだから、付き合ってくれる?」
「ええ。もちろん」

ピンク、黄色、オレンジ、緑、青、紫。いろんな動物の形の皮のキーホルダー。今日のお土産に、キュートのみんなに私たちからのプレゼント。

「千聖と舞美は犬なんだね。イメージどおり。舞ちゃんは猫?わかるわかる!」
「ウフフ、そんなに意識して選んだわけではないんですけれど・・・」

両手をお皿みたいにしてキーホルダーをレジへ運ぶ私の肩を、舞美さんがいつもするように、えりかさんは優しく抱いてくれた。

「エアコン、効いてるね。寒くない?肩が冷たくなってるみたいだけど」
「ありがとうございます、大丈夫です」

今日のえりかさんは、何故か私の体によく触れる。普段はどちらかと言えば、適度な距離感を持つ方なのに。柔らかくて滑らかな手の感触に胸が高鳴る。


(思い出づくり・・・?)


ふと、考えないようにしていた言葉が心を通り抜ける。・・・やめよう。せっかく誘ってくださったのに。


「千聖?」


「あ・・・ごめんなさい、お待たせして。今、包んでいただいてるので、店内で待ちましょう」
「そか。じゃあ、バッグの方行かない?気になるのがあるんだ」
「ええ。そうしましょう」

今度は腰に手が回って、触られるとムズムズするウエストの辺りをつつかれた。


「きゃんっ!」
「ムフフ」
「・・・もう、えりかさんたら」


いたずらっ子みたいに笑う表情は、えりかさんの大人っぽい顔立ちと対照的で、つい見とれてしまう。

「あ・・・やっぱりパスケースも見たいな。行くよ、千聖。」
「はい。」


いつも優しいえりかさんが、少し強引に、当たり前みたいに私の手を引いてくれるのが嬉しい。

熱心に小物に見入るえりかさんの綺麗な横顔を、すぐ傍でジーッと見つめることができて、幸せだった。



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