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「千聖?おーい・・・」

私の腕にしがみついていた千聖は、力を失ってぐったりともたれかかってきた。
千聖の好きな観覧車の眩い電飾が、小麦色の肌を照らしている。瞳は閉じられたまま、軽く体を揺すっても反応しない。


――やりすぎちゃったかな・・・


今日の私は少し変だった。
日中デートを楽しんでいた時から、何だかよくわからないけれどずっとムラムラしていた。
キラキラグロスでおめかしした唇とか、上目でまっすぐに見つめてくる子犬みたいな目とか、・・・服をボイーンと押し上げてるお胸、とか。
山手通りからの帰り道、舞ちゃんと愛理に呼び止められなかったら、私はもしかしてどこかのトイレに千聖を連れ込んで、軽く1回戦を行っていたかもしれない。
正直、どこから私達のデートコースが割れたのかとても気になるけど、そういう意味ではあそこで合流したのは正解だったのかもしれない。

ただ、問題はその後。

舞ちゃんは観覧車の中で千聖にぶちゅっとキスをかまし、(消したら呪われそうなので写真はデジカメに残ってる・・・)私を煽った。
舞ちゃんの千聖に対する気持ちは知っていた。二人で旅行に行くと行って先に挑発したのは私。にもかかわらず、こういう事態は予測できなかった。舞ちゃん・・・いえ、舞様を見くびっていた。

ただ、いつものヘタレえりかと決定的に違っていたのは・・・この事件が私の嫉妬心を呼び起こしたこと。心が折れて、このまま何もせずにホテルで朝を迎えることも、自分の性格ならありえることだったのに。


千聖を渡したくない。自分だけのものにしたい。


今頃、こんな気持ちを覚えるなんて。ずっとずっと、千聖の思いから逃げて、体だけ繋ぎ止めて苦しめてきたのに。そして、私はもう、ずっとそばにいることはできなくなってしまうのに。


それでも、千聖が私をまだ必要としてくれるなら。私は今からでもその思いを受け止めるだけ受け止めたい。


そんな決意の後、私はむさぼるように何度も千聖の小さな唇を奪った。“千聖は舞のもの”そのおきまりの言葉にすら、嫉妬を覚えた。
何かに操られるみたいに、言葉で千聖を恥ずかしがらせて、初めて指を千聖の体に繋げた。私の千聖だ、って今更主張したくなって、持て余した思いをぶつけてしまった。


「千聖・・・」

どうしよう、本当に愛しくてたまらない。
強く抱きしめて、千聖の匂いを感じるだけで、涙がこぼれそうになる。もっともっと触りたい。夜景の綺麗なホテルで、2人っきりで、我慢なんてできそうになかった。


「・・・んん」


そんな私の気持ちを感じ取ってくれたのか、私にもたれかかるようにぐったりしていた千聖が、私の腕の中でもそもそと身を捩った。


「えり、か、さん」
「起きた?・・・ごめんね。ひどくしちゃった」
「いえ、あの・・・・大丈夫、れす」

舌たらずに答えた後、千聖はおそるおそるといった感じに、お湯の中へ目線を落とした。

「もう抜いたから、大丈夫」

こういうダイレクトな言い方は、きっと千聖を恥ずかしがらせる。案の定、耳まで真っ赤にした千聖は「あ、そんな、私・・・」とフガフガ口ごもって抱きついてきた。


「さっきの千聖、ぴくんぴくんしてて可愛かった。もっとちっさー食べたーい!とかいってw」
「もう・・・今日のえりかさんは意地悪だわ」


抗議の声もどこか甘く響いて、また私達は自然に唇を寄せていた。


「・・・ベッド、行こう」
「ええ。」


いつぞやのコテージの時みたいに、舞美が降りてきてくれれば、かっこよくお姫様抱っこでもしてあげられたのに。残念ながらノーマル仕様の私じゃ、肩を抱いてあげることぐらいしかできなそうだ。

洗面所に戻って、千聖の髪にドライヤーを当てる。
ふにゃっと柔らかいくせっ毛に、私の愛用のトリートメントが馴染んでいく。


「ちょっと髪傷んじゃってるみたいだから、えりかスペシャルトリートメントね。」
「ウフフ。覚えれば私も出来るかしら?お風呂上がりに明日菜や弟がジャレてくると、どうしてもドライヤーがおろそかになってしまって・・・」
「千聖ったら、乙女になっちゃって。前の千聖だったら、こういうの全然気にしなかったのに。」


モデルを目指すと決めたときから、私はもともと関心の強かった美容について、さらに追求するようになっていた。
メンバーからスキンケアやヘアケアについて聞かれることも増え、千聖にスキンケアやヘアケアについてレクチャーすることも今まで何度かあった。
今だって、とりたててスケベなことをしてるわけじゃなく、単にヘアケアのコツを教えているだけのつもりだった。それなのに、なぜかまたムズムズした感情が湧き上がってくるのを感じた。

おそろいで着ている備え付けのバスローブは、千聖には腕も胸元もぶかぶかで、小麦色の肌がそこかしこからチラチラ覗いている。ドライヤーをかけつつ、その適度にぷっくりした肌についつい見惚れてしまう。
そもそも、大人っぽいバスローブは千聖にはあんまり似合っていない。キャラじゃないっていうのもあるし、何と言ってもまだ中学生だ。無理をして大人と同じ格好をしていることが、やけに淫靡なことのように感じられる。


「・・・できたよ、千聖。家でやるときはちゃんとタオルドライして、トリートメント付けるのも忘れちゃダメだよ。」
「はい、ありがとうございます」


胸が熱くなるのを止められないまま、何とか平静を装う。
ドライヤーを止めて、天使のリングがわかるように髪をパラパラと摘んで見せると、千聖は嬉しそうに笑ってくれた。


「ちさと」
「え?」


喉に貼りついたような、妙に乾いた声が出る。
私は後ろから千聖を抱きしめて、緩い襟ぐりに手を差し入れた。


「あっ」


逃げようとする肩を捕まえて、そのまま鏡の前の椅子に座らせる。さっきの行為の余韻で変化したままの胸の先に触れると、千聖は身をよじった。

「や・・・」
「千聖、鏡見て。」


無言で首を横に振るくせに、千聖はこっそり視線を鏡に向けている。私も鏡越しに、妙に真面目な顔で千聖の胸を弄る自分と目が合う。当たり前だけど、こういうことをしている自分たちを客観的に見た事がなかったなかったから、少し興奮した。


「千聖、ウチの香水の匂い好きって言ってたよね?一緒の匂いになろう」

ポーチの中から、小さなアルミの缶を取り出す。リップクリームやワセリンみたいな質感のそれを指でなぞると、千聖の胸の谷間に摺りこんだ。

「んぅ・・」

暖かくて弾力のあるその場所から、自分と同じ匂いが立ちこめる。所有物、なんて言うつもりはないけれど、千聖がほっぺたを紅潮させて、「えりかさんとおなじ・・・」とはにかんで笑ってくれたのが嬉しかった。

もう少し塗り広げようと、腰の紐を緩める。想像以上にバスローブは小柄な千聖には大きかったようで、一気に上半身がほとんど露になる。あわてて体を隠そうとする手を握りこんで、唇を合わせる。


しかし・・・なんていうか、女の子同士のエッチって、もっと可愛くてスマートなものかと思ってた。佐紀の家で見たレズものAV(・・・)は可憐な感じがしたのに、今鏡に映ってる私は、髪はバサバサ目はギラギラで、自分でいうのも虚しいけど、必死すぎ。


「えりか、さん」

眉を寄せた千聖と、視線がぶつかる。目にうっすら涙をためていて、これはちょっといきすぎたかと思って、体を離そうとした。


「ごめん、やりすぎ?」


だけど、千聖の手は私の指を離さなかった。乱れて落ちたバスローブの下から、褐色の肌が全部現れて、私の首に手を回す。


「ベッドに・・・」


子犬のような黒く濡れた瞳が、獰猛な動物みたいに、ギラッと鈍い光を放つ。
前の明るい千聖が、コンサートや舞台で本気の興奮状態に陥ったときに見せるのと同じ表情。魅力的だと言われている笑顔と同じぐらい、私の心を惹き付ける、精悍な顔。


「えりかさん、ベッドに連れて行って・・・」


完全に裸になってしまっているのも厭わず、耳元で千聖は妖しくささやきかける。高めの体温と、熱く篭った吐息に背中が強張る。

部屋からバスルームに来た時と同じように、また唇を重ねながらベッドに向かう。
くっつけては離れて、また合わせて。真っ白なシーツの上に倒れこんでも、まだキスは続いた。


――♪♪♪


その時、ベッドサイドの千聖のバッグから、電子音が鳴った。

千聖はわりとめんどくさがりだから、おおまかにしか着信音をわけない。友達、仕事、家族、ぐらいだと言っていた。だから、これが誰からなのかは千聖にもわからないはず。
千聖が好きだと言っているアーティストの曲が、私たちの間を通り抜けるように流れ続ける。

「出ないの?」
「だって・・・」


急に現実に戻されたからか、千聖はきょとんと困った顔で私を見つめた。
着信音は止まない。私はキスの続きをしようとしない。千聖はあきらめたようにもたもたと体を起こして、バッグを探った。



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