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翌朝。

「なっきぃ!!」
「わっ! め、めぐっ?!」

お嬢様と登校する為に玄関ホールへと移動した私を呼び止め空き部屋へと引き摺った人物。
お嬢様専属メイドと言っても可笑しくない、村上愛こと通称めぐ。
仁王立ちをするその姿の後ろに仁王像が見えるのは私の目の錯覚だよね?

「いいって言ったんだってね」
「えっと…観劇の事でしょうか?」
「それ以外に何があるっていうの! 千聖すごく喜んで私に「なっきぃは私の話を一方的に
否定しないから好きだわ。それに比べてめぐは意地悪ね」とまで言い放ったのよ!」
「えっと…それ私に関係ある?」
「大ありよ! 仕事が入ってなければご一緒したものを!」
「ようは…私に対して嫉妬してるって事?」
「私の口から言わせないで! なっきぃじゃなかったら…なっきぃじゃなかったら
こんな事言わないのに!」
「えっと……ごめん」

普段とは違うめぐにたじろぎながらもそんなめぐを可愛いとさえ思ってしまった。
めぐをここまで変える事が出来るなんて。本当、お嬢様は愛されてるなぁ。

「で、何時行くの?」
「に、日曜日の千秋楽はさすがに無理だったから土曜日に。今日の帰りにコンビニに
寄ってチケットを受け取ってくるつもりだけど」
「じゃあ、これ」
「何? これ」

普段のめぐに戻った彼女から渡された一枚の封筒。中には

「め、めぐ! これ!?」
「奥様にお電話した後に代理の家長を務めている執事さんから渡されたの。「中島さんには
大変感謝してるわ」って言伝と一緒に」
「で、でもそれにしては多いよ?」
「交通費と昼食費。あとなっきぃのチケット代もだって」
「そ、そんなの受け取れないよ。チケット代は自分で払うつもりだったのに」
「そう言わずに受け取って。奥様の気持ちも汲んでほしいの」
「………分かった。自分でお礼を言いたいから後で滞在先の電話番号を教えてもらえる?」
「それなら一緒に封筒の中にいれておいたから。じゃ、私からの話はこれで終わり。
いってらっしゃ~い♪」
「ほんと隙が無いなぁ、めぐは。じゃ、いってきます」

部屋を出て持っていた鞄に封筒をしまうと玄関ホールへと急いだ。
そこにいるのは私を待っていてくれる五人の寮生達。

「ほら、なっきぃ。早く行かないとお嬢様拗ねるよ!」
「ごめんごめん。ちょっと…ね。あ、今日は私、一緒に帰れないから」
「ん、了解。戻ってくる時間は? 遅くなりそう?」
「う~ん。そんなに遅くならないと思う」

話しながら靴を履いて玄関を出るとそこにはお屋敷で待っている筈のお嬢様がいた。

「お、お嬢様っ!?」
「おはようございます。皆さん」
「お、おはようございます。ど、どうされたんですか?」
「フフフッ。ちょっと嬉しい事があったから早く起きてしまったの」
「嬉しい事…ですか?」
「ええ。あ、なっきぃ。……ちょっと」
「あ、はい」

お嬢様に袖を引っ張られて皆の輪から外れる。舞ちゃんと栞菜の目が怖かったのは
見なかった事にしておこう。

「き、昨日お願いした“例の件”はどうなったの?」
「今日の帰りにコンビニに寄って受け取ってくる予定です。あの、千秋楽はさすがに
今からだと無理でしたので土曜日の一回目の公演ですが宜しいですか?」
「それは全然構わないわ。そ、それとお金の方は……?」
「それでしたら先程、奥様から家長代理の執事さんとめぐを通して頂きました」
「お、お母様からっ?!」
「ええ。寮に戻ってからお礼のお電話をさせて頂きますので」
「わ、私も電話したいわ。ご一緒していい?」
「もちろん。というかご自分のお母様に電話するのに遠慮はいらないですよ」
「そ、それもそうね。会う機会が少ないから……上手く甘えられなくて」

淋しげな笑みを浮かべてしまったお嬢様。……あぁ。早貴の(略)
視線が…視線が痛いんですけど。“なに淋しげな顔させとんじゃい! われ!”みたいな
普段の二人はどこって?! って感じの声が脳内再生されたんですけど。

「ち、チケットは当日まで私持ちでいいでしょうか?」
「……そうね、お願いするわ。フフフッ。じゃあ、なっきぃチケットを受け取ったらお屋敷まで
来てちょうだい。その方が皆にばれ難いでしょ?」
「そうですね。では帰りに伺いますね」

確認の意味も込めて微笑み合うと再びお嬢様に袖を引っ張られて皆の輪の中に戻った。

「何? 二人してこそこそと。舞達の前では話せない事?」
「お嬢様! まさか私を捨ててなっきぃと!?」
「「「栞菜! 妄想しないっ!!」」」
「フフフッ。ごめんなさい。舞、栞菜。今回はどうしてもなっきぃじゃないと駄目なの」
「「うっ! そんな顔されたら許すしかないんですけど」」

……え~と、私が言うのもなんだけど。このままだと遅刻するよ? 皆。



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