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放課後。

「あーいりっ♪」

ホームルームが終わるとすぐに、私は愛理の教室へ向かった。
お部屋に遊びに行く件、無事にオッケーをもらうことができた。
生徒会や委員会で忙しい愛理とは、放課後ゆっくり2人で遊ぶ時間があんまりない。
岡井さんのことがなくても、かなりわくわくしている。人気者の愛理を独り占めできるなんて、ちょっと鼻が高かったりして。

「梨沙子ぉ~あははぁ~」

私が扉からひょっこり顔を覗かせると、クラスの子達と喋ってた愛理は、すぐに私の方へ走ってきてくれた。

「じゃあ、行こうかぁ」
「行きましょ行きましょ!」

腕組んでおしゃべりしながら、昇降口を目指す。ホームルームのグループも違う私と愛理は、お互い募る話もいっぱいあるというもの。
ファッションの話に共通の友達の話、勉強の話・・・キャッキャとはしゃぎながら校門を抜けると、先生達の駐車場の出入り口に、窓を真っ黒に塗りつぶした怪しげな車が止まったのが見えた。
こう言ってはなんですが、ドラマで見る悪い人が乗ってるようなやつ。

「ねえねえ、あれって・・・」

私が指差したその車から、運転手さんが降りてきた。そして、厳かに開けられた後部座席へ乗り込もうとするのは・・・


「やっぱり岡井さんだぁ」
「あぁ、お嬢様も今お帰りなんだね。・・・・あれ?ねぇねぇ、あの一緒にいる人、梨沙子の仲良しさんじゃない?」
「そ・・・そう、っすね」


予感的中。ちびっこい岡井さんが一生懸命首を伸ばしておしゃべりしている相手は、熊井ちゃんだった。
結局メイクもスカートも直していなくて、運転手さんが若干気まずそうな顔をしているようにも見える。


「へぇー何か・・・すっごいねぇ。ケッケッケ」
「あばばば、ごめんなさい・・・」

おっとりお嬢様の愛理は、はっきりとは口にしないものの、そのありえない熊井ちゃんの変身っぷりに目を丸くしていた。
・・・本当に、もぉ軍団の構成員としてお恥ずかしい限りです。

「お嬢様ー?お帰りですかー?」

私が理不尽な罪悪感に襲われている間に、愛理が岡井さんを呼び止めて大きく手を振った。
一旦車内に入りかけた体を、にゅーっと道路側に戻して、笑顔で会釈する岡井さん。・・・と、ご機嫌な様子の熊井ちゃん。

「愛理、すぎゃさん。良かったら、寮まで送らせるけれど、どうかしら?」
「お乗せになって差し上げもうしあげますわよ、オホホ」

すっかり岡井さん側の人間になりきっている熊井ちゃんに、思わず頭を抱えてしまった。やめて!小もぉ軍団のみんなの夢を壊さないで!


「梨沙子、ご一緒する?」
「・・・愛理と2人で歩いていきたいかも」
「そか。・・・お嬢様ー、私達、お散歩がてら寮に行くので、後で遊びましょうー」


せっかくのお誘いだったけれど、まだ話したりないことがいっぱいあったから、ここは愛理との時間を優先させてもらうことにした。


「そう?わかったわ。では、また後でね」
「梨沙子、ばいばーい」

特にがっかりした様子もなく、岡井さんはあっさり引き下がった。
かなりの寂しがりやさんだって聞いてたけど、今日は熊井ちゃんという超希少種なオモチャ(と言っていいものか)が手に入ったから、機嫌はすこぶるいいみたいだ。

「梨沙子、私の部屋でいーっぱい喋ってから、後でお嬢様のところ行こうね。」
「え?」
「2人、気になるんでしょ?私も気になるから」
「あ」

目線とか、声の感じから、愛理はなんとなく私の考えてることを読み取ってしまったらしい。ほっぺたが熱くなる。

「何か、ごめん・・・愛理と遊ぶの口実にしたみたいで」
「んーん?何で?梨沙子が興味あることは、大体私もあるんだよ。気になるじゃーん、どうして熊井さんとお嬢様が一緒にいるのか。とりあえず、私の部屋でまったりしてからあっち行こうじゃないかぁ」
「愛理・・・もう、大好き!」

私のことをわかってくれて、自然にフォローしてくれるのが嬉しい。同い年だけど、まるでお姉ちゃんみたいだ。
抱きついたりイチャイチャしながら、林道のいつもと違う道を歩いていくと、木々に隠されながらも十分に存在感のある、大きな建物が現れた。噂の、岡井邸らしい。


「うわぁ・・・さすがにおっきいね・・・」


帰り道、無意味に途中のベンチに座ったり、花の名前当てをしたりしながらたどり着いたから、結構時間が経ってしまった。もう、岡井さんたちは着いてるんだろうな。


「あ、そっちはお嬢様のお屋敷ね。寮の入口はこっち」
「そうなんだー」


そう言って愛理に連れられた、すぐ隣の建物も、とても学生寮とは思えないほどキレイで豪華だった。
森の中にひっそりと存在しているのもいい演出になって、まるで魔女の館だ。シックなこげ茶色のとんがり屋根がカッコいい。


「私もここに住みたいなぁー。愛理と共同生活ぅ」


「いいねいいねー」
盛り上がりつつ入口の大きなドアを開けると、そこは吹き抜けのロビーになっていた。

「すっごー・・・ん?」

端っこの方にある、応接セットみたいなソファに誰か座っている。
後ろ向きだから顔は見えないけど、そのさらさらの黒髪には見覚えがあった。愛理の腕をちょんちょんと指でつついて合図を送ってみる。

「なーに?・・・あ、舞美ちゃん?おーい、舞美ちゃん!」

どうやら正体は、生徒会長さんだったらしい。愛理の呼びかけに振り向いたのは、いつものさわやかでキレイな笑顔・・・・じゃ、なく、て

「・・・・ええええええっ!!!?」
「ま、舞美ちゃん!?一体・・・・」


絶句する私達の目に映るのは、清楚な生徒会長さんには不釣合いの、・・・・熊井ちゃんメイクを施されたお顔。
定番の付けまつげはもちろん、色白のほっぺたに、まるでコントみたいに真っ赤なチークを塗り込められている。唇はプール上がりのような情熱的な紫。

「愛理だー。あと・・・すぎゃやさん?だっけ?」
「ひえっ」

いつもおっとり冷静な愛理らしくもない、裏返った声が漏れた。立ち上がって私達の方へ足を進める生徒会長さん。
抱き合って、無意識に後ずさりする私達。生徒達の信頼を一身に集めるその笑顔が、今日は完全にホラーだった。

「ま・・・舞美ちゃ・・・」

「ギュフーーーーーー!!!!」

その時、裏手から、断末魔のような悲鳴が聞こえた。



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