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栞菜と喧嘩をした。
新曲の振りつけレッスン中に、悪ふざけを仕掛けてきたから注意をした。
自分で思ったよりもキツい口調になってしまったから、栞菜はかなりシュンとしてしまった。
謝った方がいいのかと一瞬思ったけれど、私は別におかしなことを言ったわけではないから黙っていた。
すると、口を尖らせて「なっきーはちょっと頭が固いよ・・・」なんて呟いた。
私はこういうのを聞かない振りができない性格だ。
「ちょっと待って。今は真面目にやらなきゃいけない時でしょ?真剣にやろうって言って何が悪いの?」
「だからそれはわかったって。でもさぁ」
「でもじゃないじゃん。」
「まぁまぁ、もう栞菜も反省してるし、いいじゃないか。ね?」
舞美ちゃんが体ごと割って入ってきた。
あーあ。いつもこのパターンだ。私はレッスン中の態度のことで、しばしば栞菜とぶつかる。
栞菜のことは好きだ。だけど、私はけじめをつけるところはちゃんとしておきたかった。
だから毎回のように注意をするのだけれど、必ず舞美ちゃんが喧嘩両成敗のようにまとめてしまう。
「わかった。真面目にやろうとする私が悪いんだね。ごめんね。」
「なっきー誰もそんなこと」
「いい。時間もったいないから続きしよう。」
強引にさえぎると、誰も何にも言えなくなって、変な空気のままレッスンが再開になった。
・・・どうしてこうなってしまうんだろう。
めぐが脱退してから、私はキュートの中間年齢として、かなり神経を張ってやってきた。
舞美ちゃんやえりかちゃんに年下組の状況をまめに報告して、年下組にはダメなことはダメと注意して、エッグから途中加入で不安そうだった栞菜には同い年としていろんな相談にのって。
でもいつしか私の行動は空回りになっていたみたいで、
「なっきーは頑張りすぎだよ。」
「もっと肩の力抜いていこうよ。」
なんて諭されるようになってしまっていた。
ひそかにため息をもらしながらチラッと横を見ると、千聖が真剣な顔で振りのチェックをしていた。

・・・前の千聖にはよく怒ったっけな。今はまったく手のかからない子になったけど。
舞ちゃんの気持ちを聞いたせいだろうか。何だか無性に昔の千聖に会いたくなってしまった。
千聖はお調子に乗りやすい子で、ふざけだすと止まらなくなってしまうところがあった。
私はそれじゃダメだと思い、気になればビシッと言うようにしていた。
怒られると千聖はシュンとなってしまうけれど、気まずくなってしまうということはなく、今ははしゃいでいいという時間になれば、グフフッて笑いながら私のところにも遊びに来てくれた。
だから私も、千聖には遠慮なく思ったことを言えたし、千聖もそれを受け止めてくれていた。
一番の仲良しじゃないけれどそれなりにいい関係だった。人によって態度を変えない千聖が好きだった。
今の千聖が嫌いなわけじゃない。すごく優しくていい子だと思う。
レッスンも真剣に受けているし、誰にでも同じように素直なところは前と変わっていない。
でも彼女は千聖であって千聖でない。
私は年上だから舞ちゃんのようにあからさまなことはしなかったけれど、寂しかった。
キュートの中で私の気持ちを正面からうけとめてくれる子がいなくなってしまったから。
キュートのメンバーのことは大好きだ。家族のように温かい。
でも私はもっともっとキュートで上を狙っていきたいし、お互いをライバルと思う気持ちを忘れてはいけないとも思う。
私が悪者になってキュートが良くなるならそれでもいい。
多分そういう押し付けがましい考え方がだめなんだろうけど。
「じゃあ、今日はここまで。お疲れ様!」
振り付けの先生の声で、私の心は現実に戻った。
ダメだ。今日はまったく身が入っていない。
「なっきー帰らないの?」
鏡に向かっておさらいを始めた私に、舞美ちゃんが声をかけてくる。
「もうちょっとやってく。」
「そっか。」
何か言いたそうな顔をしながらも、舞美ちゃんはえりかちゃんと一緒にスタジオを出ていく。
栞菜は愛理と一緒にこっちを見てコソッと何か言っているみたいだ。
二人の表情からして別に悪口ではないんだろうけど、言いたいことははっきり言ったらいいんだ。私は見えないふりをしてダンスに没頭した。



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