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「「はーい、お邪魔しまっす!」」
「えっ!?」

生徒会室のドアを開けると、びっくり顔の2名――千聖お嬢様と茉麻、が同時に振り返った。

よかった。事前調査のとおり、他には誰もいないみたいだ。

「どうしたの?珍しいじゃん」
「まあまあまあ、狭い所ですがとりあえず座ろうじゃないか!お嬢様、隣、失礼しまーす!」
「・・・千奈美、日本語おかしいから。ごめんなさい、今時間、大丈夫ですか?」

雅がそう聞くと、困惑しながらも2人はうなずいてくれた。

「あの・・・」

お嬢様は少し怯えたような顔をして、茉麻のブレザーの裾を握っていた。・・・少し胸がズキンと鳴った。まあ、仕方のないことなんだけど。



“去年、新聞部の記事でお嬢様を傷つけたことが、私はずっと気になっていた。

私は自分の書いた記事でみんなが笑ってくれたり、面白いネタで新聞部からブームを作ったりできたらいいなって思って、新聞部に入った。
だけどあの頃、メインになる記事はいつも人の噂話とか、悪口とか、そんなのばっかりだった。お嬢様のゴシップ記事も、その一つ。
結局発刊はされなかったし、あの鬼部長も関係者に謝って解決したことにはなっているけど・・・本当に、それだけでいいのかな?と何かが心にひっかかり続けている。

あの事件の後、確かに新聞部は変わった。
生徒会とのコラボ企画をやったり、人気の生徒へのインタビューとか、記事の内容は大幅に見直されるようになった。
生徒会のお手伝いをしているお嬢様とも、ちょこちょこ絡むことはあった。そういえば、赤点取った時、一緒の教室で恋バナとかしたこともあったっけ(お嬢様の彼氏って、結局なんだったんだろう。)

そういう時、お嬢様は一見、ごくごくフツウの態度で私や雅とか新聞部のメンバーとも話してくれているようにも見えた。


だけど、例えば偶然学内で私を見かけた時、一瞬だけお嬢様の表情は硬くなる。つい最近、動物園で遭遇した時もそうだった。
そういう時、お嬢様はすぐに微笑みで顔の強張りを上書きする。だけど、私はその度に凹まされていた。今も、私たちの仕出かしたことに胸を痛めているっていうのを、実感させられてしまうから。”



「・・・・というわけで、私はお嬢様と仲直りをする機会を狙っていたわけであります。」
「長いよ!何その説明口調!」
「ていうか、普通そういうのって心に留めておくもんじゃないの?ほんと、千奈美ってさぁ」

「もー、クレーム多すぎ!」

2人分の文句を背中に受けながら、私はお嬢様と向き合った。また怯んだ様子だったらどうしようかと思ったけど、お嬢様はしっかり私を見返してくれた。

――へー、結構、可愛らしい顔してるんだ。あんまりジロジロ顔を見たことなかったけど・・・黒目がちでウルウルした目とか、丸い鼻とか、小麦色のお肌とか、何となく近所にいるわんちゃんを思い起こさせる。血統書つきの高い奴じゃなくて、ミックス犬ね。


「あ、あの、千奈美さん?」
「ち、千奈美!何て失礼なことを!」
「え?」


ふと我に返ってみると、私は無意識にお嬢様の頭をナデナデしていた。茉麻はアハハって笑ってるけど、雅が慌てて私の手を引っぺがした。

――そ、そうだ。相手は超お嬢様なんだった。真偽は定かではないものの、逆らったら退学レベルの相手だ。
そう考えると、新聞部のやらかした事って、もしかして本当の本当にとんでもないことだったんじゃ・・・いまさら、そんなことに気がついた。

「お、お嬢様!」
「きゃあっ!?」

自他共に認めるちゃらんぽらん人間な私だけど、せめて誠意が伝わるように、両肩を押さえて思いっきり顔を近づける。

「あの!いろいろごめんなさい!今のは、何かお嬢様が近所の犬に似てるから・・・じゃなくて、新聞部の記事のこととか本当、ちゃんと謝ってなくて・・・てか私は書いてないからこんなこというの変かもしれないけど!でもやっぱ、こういうのうやむやにするのはよくないしっ」
「あ、あの、徳永さん?」
「いや、千奈美でいいです!なんていうか、もっと仲良くなることはできないんですかねえ!?私らは!」
「ちょ、何言ってんの千奈美」
「え、自分でもよくわからん!まあ、だから、とにかくもっとお互いに心を開きあって、明るい学園生活をですねぇ」

「ウフ、フフフフ」

暴走の止まらない私の意味不明な演説は、お嬢様のウフフ笑いに阻まれた。

「ウフフフフ、いやだわ、徳・・千奈美さんたら。ウフフフ、フフフフフ。舞美さんのウフフフフお友達ウフフさすがウフフフフフフ」
「え、ちょっと、お嬢様笑いすぎ!」


よっぽどツボに入ってしまったのか、お嬢様は目を三日月アーチにして笑い続ける。
泣かれたりキレられるよりはマシだけど・・・どうすんの、これ。雅と私は目を合わせて首をひねった。


「ほーら、お嬢様!爆笑ストップ!」
「ひゃん!」

そんな私たちの空気を汲み取ってくれたのか、茉麻がお嬢様の両脇を素早く突っついて、強制的に笑いを止めさせた。さすがママ!パネェっす!


「ご、ごめんなさい。私舞美さんに千奈美さんのお話をいろいろ聞いていて・・あぁ、それよりも」

お嬢様は目の縁の涙をハンカチでふき取ると、微笑んで私の手をとった。小さな手は柔らかくてあったかい。


「あの記事の件でしたら、もう気になさらないで。済んだことです」


「でも・・・」
「まだ、私の態度がおかしいことがあるかもしれないけれど・・・それは新聞部の方達のせいではないのよ。私自身の問題ですから。それより、私は千奈美さんや雅さんが、こうして私のことをお気に留めてくださっていたことが嬉しいわ。」
「じゃあ、お嬢様」
「ええ。私も、もっとお2人とお近づきになりたいわ。迷惑でなければ・・・」
「とんでもない!よかったー、どうなることかと思った!」

とりあえず、親愛の証に思いっきり抱きついてみる。OH、ぬいぐるみみたいにコロンとした柔らかい抱き心地・・・そういえばお嬢様はパイオツが結構アレでそれで

「あー、千奈美ダメダメ。お嬢様は抱きつかれるのはあんまり好きじゃないの」
「あ、そうなの?それは失礼しましたー・・・」
「ダ、ダイジョウブデス。ウフフフ」

茉麻の言うとおり、お嬢様は思いっきり体を強張らせていた。・・・まあ、せっかく心が通じたわけだし、ダメなこととかはこれから覚えていけばいいか。


「で?今日はどうしたの?」
「え?」
「別に、それだけ言うためにここに来たわけじゃないんでしょ?何か私たちに協力要請でも?」

茉麻は大きな目をニヤッと細めて、「取材ノート、持ってるし」と雅の右手を指差した。

「雅は何かお願い事がある時、右足がパタパタするんだよねぇ。ちなみに千奈美は、舌で口の中モゴモゴするの。モゴモゴ」

得意げにそんなことを言われて、私は無意識に動かしていたベロをピタッと定位置に戻した。・・・さすが、某バーロー眼鏡探偵ヲタは推理力が違う。


「そこまでバレてりゃしょうがない。」
「実は今、新聞部ネタ切れでございましてぇ・・・企画の持込みをさせていただこうかと」
「企画?」
首を傾げるお嬢様と茉麻。私は雅と「せぇーの」で声を合わせた。

「「名づけて、生徒会プレゼンツ!学校の怪談冬の陣!」」



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