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「おー、舞美じゃないか!」

振り向くと、我が校名物の天然生徒会長が立っていた。

「何か久しぶりじゃなーい?ていうか、珍しい組み合わせだねー」

空いている席に元気よく座り込んだ舞美は、楽しそうにニコニコ笑っている。怖い話で変な熱気の篭っていた室内が浄化されていくような気がして、私たちもつられてどこからともなく笑いがこぼれる。

長いこと黒髪ロングで清純派っぽいルックスだった舞美は、最近バッサリと髪を短くした。
学内の舞美ファンクラブでも賛否両論だった新しいヘアスタイルだけど、スポーツ大好きな舞美のイメージに合っていて、私は結構いいと思っている。顔の印象が若干変わっても、さわやかでちょっとぽわーっとした舞美独特のこういう空気感は健在みたいだ。

「舞美さん。今ね、新聞部の皆さんと、学校新聞に載せる怪談についてお話していたのよ」
「かいだん?バリアフリー?それとも校長先生と教育委員会の先生の・・・」
「どっちもちがーう!怖い話の怪談だよ!」

――このとおり、天然も相変わらずの様子だし。


「怪談かぁ・・・めg、じゃなかったお屋敷のメイドさんで、怖い話が得意な人いますよねー?お嬢様」
「でも、彼女のお話は残酷すぎて掲載できないみたいなの。」
「そっかぁ。私も怪談はあんまり知らないし・・・あ、でも」


舞美は漫画みたいにポンッて手を打って、体を起こした。

「学校新聞に載せるなら、やっぱりこの学園にちなんだ話のほうがいいよね?」
そういって、ぐるりと生徒会室を見渡す。

「まあ、こだわらないけど、どっちかって言ったらそのほうがいいのかな」

「何かね、私はそういうの全然感じないんだけどね、佐紀が、ここはヤバイってよく言ってるんだ」
「えええ・・・」

茉麻がわかりやすく青ざめて、全然隠れ切れてないけどお嬢様の後ろに身を潜める。

「佐紀ちゃんかぁ」

1学年上だけど、佐紀ちゃんと私、あと雅の3人は結構つるんでることが多い。
合同授業がきっかけで仲良くなった佐紀ちゃんは、一見頭がよくてお堅い優等生っぽく見えるけど、深く付き合うと結構はっちゃけてて面白い性格。
しっかりしつつ絶妙にネジのぶっとんだところがあるもんだから、オジサマ(てか先生)うけがいい。日々の生徒会の議案が概ねスムーズに先生たちに承認されるのは、佐紀ちゃんの力が大きいんじゃないかって私はにらんでいる。


閑話休題。
「・・・そういえば、佐紀ちゃんって霊感強いんだよねー。前にさ、雑誌の心霊写真コーナー2人で見てたら、佐紀ちゃんパッパッてどこに霊が写ってるのか当てちゃうの。すごくない?」

雅の言葉を受けて、茉麻はさらにブルッと体を震わせた。

「マ、マジですか・・・佐紀ちゃんが言うなら間違いないじゃん!」
「しかもね、えりも何か感じるって言い出して、佐紀と2人でいろいろ調べてみたんだって。そしたら・・・どうやらずーっと昔、ここで亡くなった生徒さんがいるとか」
「ぎええ!!」
「茉麻、落ち着いて!」

続きを聞くのが怖い。怖いのに、なぜか耳を塞ぐ事ができず、妙にホラーがかった舞美の顔からも目がはなせない。

「そ、その方は、どうしてお亡くなりに・・・?」

小さな鈴がふるふる震えるような微かな声で、お嬢様が問いかける。

「その、亡くなった人はね、若い男の先生と恋愛関係にあったらしくて。生徒会長で、とても真面目な人だったから、しばらくは誰にも知られずに済んでいたみたいなんだけど」

ゴクリ、と雅がつばを飲み込んだ・

「先生が生徒会顧問だったこともあって、2人はいつも早朝に、ここで密会してたんだって。だけどね、ある日、そんな2人のことを目撃してしまった生徒がいて。
すぐに学園中の噂になってしまって、先生は姉妹校に転勤。生徒会長さんは少しの間謹慎っていう処罰が下ったみたい。
だけど先生が去っていく日、こっそり家を抜け出した生徒会長さんは、学校に来たの。いつもどおり、朝早い時間に、ここに向かったんだって」
「そ・・・それで・・・」
「いくら待っていても、先生は来てくれなかった。・・・だって、謹慎中の彼女が、こんなところにいるなんてわからなかったから。
生徒会長さんも、あきらめて家に帰ろうとしたんだけど、ふと振り返って窓の外・・・茉麻の後ろの、ね」
「ぎえぇ」
「窓の外を見たら、ちょうど大好きな先生が去っていく後ろ姿が見えたんだって。それで、窓からほとんど体全部を乗り出して夢中で“先生!”って呼びかけたの。



そして、先生が振り向いた瞬間、足を踏みはずした生徒会長さんは、下のコンクリートに・・・」


舞美は軽くため息をついて、なぜかニコッと笑った。

「ま、でも、本当かどうかはわからないみたい。あくまで噂だって・・・えーっちょっとどうしたの茉麻?夏焼さん??」


「・・・ケッケッケッケッケ」

空ろな目で、某カッパ帝国のお姫様のごとく引きつった笑い声を漏らしている茉麻、はともかくとして、


「ううう・・・超泣けるんですけど」
「何でやねん。」


雅はなぜかビービー泣き出して、お嬢様の差し出した白いレースのハンカチをマスカラで黒く染めている。

「わ、わたし、永遠の別れとか、弱いんだよー。マジ怖いっていうより、ウウウ・・・2人がもう会えないっていうのがぁ」
「へー、夏焼さんはえりと同じだね!えりも私にこの話しながらすっごい泣いてて、鼻水だーだーたらしてるから私思わずその顔見て笑いそうになっちゃった!とかいってw」
「ち・・・千聖は、怖かったのだけれど」
「お嬢様、うちもです。っていうか、うちらがフツウの反応です。安心してください」


――まあともかく、やっと学校新聞向きの話が来た、と私はひそかにほくそえんだ。


「この話さ、いいんじゃない?実際に学園に関係ある噂だし、記事読んだ人もいろんな感じ方するみたいで面白いじゃん?うちとかお嬢様みたくフツウに怖がる人もいれば、雅みたいに泣ける話っぽく受け取る人もいたり」
「ん、でもさ」

気を取り直した雅が、鼻をすすり上げながら私を見る。


「たしかに目玉としてはいい話だと思うんだけど、これ一本だと、ちょっと弱くない?もう一声欲しいんだよね」
「えー、めんどくさぁ。ぶー」
「あ、あら?千奈美さん?あら?あら?何を?」


なんだよー、せっかくいいネタ見つかって、どうにか形になりそうだと思ったのに!元来ものぐさな性質の私は、若干やる気を失って、隣にいるお嬢様のほっぺを高速でつついて八つ当たりをした。


「・・・まーまー、そう言わずに!せっかくちぃメインの記事なんだからさ、私も協力していい記事にしたいわけよ」
「そうだよ、千奈美!やっと“ダジャレを言うのは誰じゃ!”での功績が認められてここまで来たんだから、頑張ろうよ!」

――いや、そのコーナーを評価してくれるの舞美だけなんですけど・・・。

「そうそう、千奈美って着眼点がいいんだよね。校内の何でもランキングとか、レイアウトは千奈美でしょー?あれ、読みやすくてよかったよ!」
「そ、そう?」
「ええ、千聖もランキングの記事は今でも読み返して楽しんでいるわ。舞の写真をあんなに面白く加工出来るなんて、千奈美さんのセンスは素敵だわ。ウフフ」
「えー?マジでぇ??褒めすぎじゃない?いいこと言って、うちに仕事やらせようったってねぇー」

とは言いつつ、茉麻やお嬢様まで加わってみんなに持ち上げられまくり、私はなかなかいい気分になっていた。もともと垂れ気味の目じりが、さらにへにょっと下がっているのが自分でもわかる。

「まあ?うちクラスになると?中途半端な記事じゃ問屋が卸さぬっていうか?」
「でしょでしょ?よっ千奈美ちゃん、カッケーっす!」
「その溢れんばかりのアイデアを聞かせてちょうだい!千奈美がいなけりゃ始まんないよ!」


高2トリオの雅と茉麻は、私の扱いをよく心得ているようで。さっきまでの超絶リアクションはどこへやら、2人腕を組んで私を煽る。

「まあまあ、今考えるからちょっと待って」

私は一休さんみたいに、両手で頭をぐりぐりやって思考を巡らす。ベタだけど、これ、考え事に最適なんだよね。

数分後。


「・・・決めたっ!・・・・きもだめし、やろうぜ!」



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