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「・・・でさー、その時、舞ったら」
「うっそマジで!ウケるんだけど!そうそう、そういえばこの前・・・おっと」

時間も忘れて舞美とくっちゃべっていると、スカートのポケットの中で、ケータイがビビッと震えた。

「もっしー。・・うん、うん。わかったー。じゃーまた後でね!」

勝手しったる仲だから、話もあっさり。さくさく会話を終了させて電源を切ると、「誰?」と舞美が首をかしげた。

「ん、雅からだった。ぼちぼち花壇のとこ集まろうってさー。」
「あ、そっか。たしかにもう暗くなってきてるもんね。っていうか、一番空に近いとこにいるの私たちなんだから、一番最初に気づかなきゃダメじゃん!とか言ってw」
「でへへ」

だって、舞美との語らいが楽しすぎて。今日はお嬢様と茉麻にだけ会えれば(というか、取材と謝罪ができれば)それでよかったんだけど、偶然舞美と顔を合わせることが出来て嬉しかったから。こんなに盛り上がっちゃうのは仕方ないのさ。


「まーいみっ」
「なになに?あまえんぼう?とかいってw」

イチャイチャしながら花壇まで戻ると、お嬢様も茉麻たちももうすでに着いていた。
冬だけあって、結構日が落ちるのが早いみたいだ。まだ7時前なのに、近づかないと3人の顔が確認できないぐらいだ。

「お待たせー!」
「遅ーい!・・・お嬢様、門限とか大丈夫ですか?」
「ええ、今日は遅くなるって、運転手にも伝えたから。舞美さん、帰りは一緒に車で帰りましょう」

お嬢様はニコニコ笑いながら、「これからもっと冷えるでしょうから」とカイロを配ってくれた。・・・なんか、すっごい楽しみにしていてくれてるんだなあって、嬉しくなった。
やっぱりあれだけすっごいお屋敷のお嬢様だし、いろいろ行動に制限もあるんだろう。こんなちょっとしたイベントでも面白がってくれるなら、これからもいろいろ思いついたら声かけてみようかな、なんて思った。

「で、千奈美?きもだめしって、具体的にはどうやるの?1人ずつ行くの?」
「んー。最初はそうしたいなって思ったんだけど・・・5人で1人15分としたら、結構時間かかっちゃうしさ、ここは3組に分かれませんか!」
「3・・・って2人、2人、・・・・1人!?ってこと?結局1人で行く人発生するんじゃん!」

茉麻がきええと声を上げて、私をギロリと睨みつけた。

「だってさー、3人じゃ多いでしょ。多分ふざけて、楽しくなっちゃうし。まあ、そこはくじ引きで決めよう!確率は5分の1だから、何とかなるよ茉麻!」
「うー・・・まあ、くじなら仕方ないか」

そうと決まれば、と、雅がノートをちぎって、数字を書き始めた。小さく折った紙片を、お嬢様の持っていたカイロの空き袋に入れてよく振る。


「えー、なんか緊張するねー!」
「ち、千聖は子供じゃないから、1人でもだだ大丈夫」
「お嬢様べろべろー!!とかいってw」
「きゃー!・・・もうっ舞美さんたら!」


お嬢様と舞美が犬の兄弟みたいに走り回ってジャレてる間に、茉麻、雅、私の順番にクジを引いていく。

「まだ見ちゃだめだよー。・・・お嬢様、舞美ちゃん、早くー」

茉麻の呼びかけで戻ってきた二人も、「残り物には福がなんちゃら」と言いながら1枚ずつクジを手にした。
緊張が高まる。・・・当然ながら、イカサマとかはないから、私が1人で生徒会室を探索する羽目になることも考えられるわけで。


「せーのであけよう。・・・いくよ。いっせーの!」
バッとクジを開いて、お互いに見せ付けあう。


「「「「「・・・・あ」」」」」


Aグループ、茉麻と私。
Bグループ、お嬢様と雅。
そして・・・


「ウソー!?本当にー??」


そう、“☆★お一人様コース★☆しかもトリ!”と書かれたクジを持っていたのは、舞美だった。

よぉっしゃ!と舞美に見えないようにこっそりガッツポーズを繰り出す茉麻。お嬢様と雅は、「よろしくお願いします」なんて笑顔を見せ合って、和やかな雰囲気だ。


「えー、どうしよう!怖くない?1人とか!」


一方、舞美はおでこに汗を浮かべつつ、順番に私たちにクジを見せて回っていた。あんまり怖がっているようなら、どっちかのグループに入ってもらおうかとも思ったんだけど・・・なんかめっちゃニコニコしてるし、これは大丈夫かな?


「じゃあ、今からきもだめし兼幽霊の噂検証を行います!一応、雰囲気出すために、生徒会室の電気は点けちゃダメ。
それで、懐中電灯で室内をグルッとみて、異常がなければそこの窓から手を振ってください。下から写真を撮ります」


「なかなかこだわるねー、雅」
「まあ、せっかくやるならルールがあったほうが面白いだろうし。ちなみに撮った写真は記事に使わせてもらうんで、いい顔してくださいよー」

はーいとお行儀よく返事して、まずはAグループの私と茉麻から。

「いってらっしゃーい」

3人に手を振り返して、私と茉麻の冒険(?)が始まった。



「ううう・・・」

昇降口から階段を上って5階を目指す間、茉麻は私の腕をガッチリ握り締めていた。痛い、痛いよ茉麻!自分の腕力を考えてからそういう萌える行動をしてください!

「てか、怖がりすぎー!茉麻、いっつもウチらに怖い話とかしてくんじゃん!そんで驚くと喜んだりしてるくせにさー」
「私、自分で話すのは好きだけど、人から聞くのは苦手なんだって!オバケ屋敷も無理なのに、何故今私はこんなことをしているか!」
「何でカタコトやねん」

とりあえずおしゃべりしながら足を進めていくと、案外早く目的の階にたどり着くことが出来た。


「・・・にしても、全然人いないねー」
「こっち、準備会場じゃないからねぇ」

茉麻の言うとおり、ここまでくる間、一度も誰かにすれ違うことはなかった。
それもそのはず、夜の学園祭の準備は、どの学年もまとまって、大体育館で合同でやるのが決まりになっているから。

うちの学校は、いくつか校舎が分かれている。
中等部校舎、高等部校舎、その間に位置する通称“部室塔”が、今私たちのいる校舎。中等部との合同授業が多いから、音楽室や家庭科室、ホームルームの教室なんかもここに入っているけど。


自由な校風ゆえ、普段は結構生徒の行き来も活発なんだけど・・・さすがに、女子校の夜の校舎のそこかしこに生徒が散らばっているのはよくないということらしい。

ウチらだって、舞美の生徒会長権限(職権乱用とも言うもんに!)のおかげでここにいるんだから、あんまり長居はできない。さくさく探索して、戻らなきゃ!



「・・・行くよ、茉麻」
「う、うん」

生徒会室の扉の前で、2人並んで深呼吸。決心が鈍らないうちに、勢いよくドアを開ける。

「うへぇ・・・なんかひんやりしてる」


廊下の小さな電球だけしか光のない部屋には、無機質で大きなキャビネットや書棚が聳え立っていて、やけに圧迫感を感じる。
こんなとこで怖い話なんてしてたんだ・・・と思うと、ゾクッと鳥肌が立った。


「ど・・・どう?」
「どうって・・・あっコラ!何で天井見てんの!うちだって怖いのにずるい!ほら、行くよっ」

私は手にしていた懐中電灯のスイッチを入れて、茉麻の顔を照らしてやった。

「うおっまぶしっ」

それから数分かけて、私たちは部屋の隅々にまで光を当ててみた。

「んー・・・やっぱり別になんもないね」
「ま、まあ、考えてみたら、普段フツウに使ってる部屋なんだし、何か変化があるわけないんだけどね。ははは」

怪異がなかったことに安心したのか、茉麻は俄然いつもの調子を取り戻してきた。

「でも、佐紀ちゃんの霊感は」
「はっはっは!それも気のせい!じゃあ、さっさと下覗いて写真撮ろう!」


さっきまでの萌えキャラはどこへやら、豪快に笑って窓のとこまで私を引きずる茉麻。
鍵を開けて下を覗き込むと、待ち構えていたように、3人がいっせいに手を振ってきた。


「おーい!どうだったー?」
「残念ながら・・・別に異常なーし!」

普段だったら声が届かないような距離だけど、今は周りで物音1つしないから、声を張り上げればお互いに何を言ってるか聞こえるみたいだ。

「それは、安心したわー!」

お嬢様も意外と声を張れるタイプらしく、ちゃんとこっちの耳に入ってきた。


「でも、怖いから早く写真撮ってー!」

はいはい、と笑いながら、雅が2,3枚連写する。すっかり元気になった茉麻とともに、変顔やおバカポーズで応えてみせた。


「よっし、戻ろう!・・・茉麻?」

任務完了。でも、私がくるっとドアの方に体を向けても、茉麻はまだ窓の外を見ていた。


「どうかした?」
「んーん。・・・いや、ここ、結構高いなって。」

そう言われて改めて下を覗くと、たしかに、おっしゃる通り。
昔の生徒会長さんの怖い話を聞いたときは、ぶっちゃけ「こんなとこから落ちて死ぬかなあ?」なんて思ってたけど、頭でも打ったら一発だね、こりゃ。


「・・・考えてみたら、あんな位置に花壇あるのっておかしいよね。」
「え、ちょ、何今更」
「もしかして・・・ほ ん と う に こ こ か ら ひ と が」
「ひいいいい!」

思わず後ずさりした私を見て、茉麻はしてやったりとばかりにニヤッと笑った。


「ヘイヘイ、ビビッてんなよ新聞部!じゃ、帰ろうか」
「ひどーい!待ってよーもう!」


結局、私と茉麻は無事怪異に見舞われずに済んだ。新聞部的には何かあったほうがよかったんだろうけど・・・それは残りの二組に。

ちゃっちゃとバトンタッチをするべく、私たちは早足で階段を駆け下りた。



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