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だけど、私もお嬢様もそれぞれ学園祭の担当分野の仕事が忙しく・・・そのチャンスはなかなか訪れなかった。

“ごめんなさい。しばらくは慌しくて、二人きりではゆっくりお話できないかもしれないわ”

お嬢様からのメールの返信を見て、ため息がこぼれた。

今回私は料理部として、他の食べ物のお店よりもお高めな本格ランチを出す企画に携わっている。それプラス生徒会のお手伝い、放送委員としての仕事がある。
お嬢様はお嬢様で、私と同じ生徒会のお手伝い、放送委員、さらに今年は愛理たちのステージの裏方をやるとあってかなりバタバタしている。
それに、お嬢様は木曜日以外はいつもの可憐なお姿に戻ってしまうもんだから、なんとなくギャルの日の話を振り辛いというのもある。・・・こりゃまいった。



「・・・で、このレトロギャルブームをどうしたらいいかなって話ですかい」
「そうなんだよー。ここは佐紀様のご意見をと思いまして!」


日曜日。
私は佐紀をお買い物に誘って、繁華街にあるお気に入りのカフェでの休憩中、お嬢様ギャル化についての相談を持ちかけてみた。

寮のみんなともこの話は何度もしているんだけど、いつも堂々巡り。
おそらく、この件に関しての対応は統一したほうがいいんだろうけど、なかなか噛み合わない。

面白そうじゃない?むしろちょっと興味あり。ちょっとなら乗っかってもいいかなっていうのが舞美と栞菜。
まあまあ、温かく見守ってあげましょう。お嬢様の行動に賛成も反対もしないけど、っていうのが舞ちゃんと愛理。
ギュフーーーーーーーーーーーー!!!っていうのがなっきぃ。
ウチは・・・なんだろう。漠然としているけど、もう少し平和になったらいいなと思っている。お嬢様が落ち込んだり怒ったりすることなく、なっきぃの胃痛の原因を緩和できれば。

でも、そんな自分の意見って、何かずるいんじゃないかとも思う。みんなそれぞれ考え方は違うけど、主張ははっきりしている。
私は単に、全部うやむやにして、適当に丸く収めたいだけなんじゃないかって・・・そう考えると、自分がとんでもない卑怯者のように思えてしまって、昨日は女の子の日だったこともあり、情緒不安定で1人部屋に篭ってオンオン泣いてしまった。
「ふむ。まあ、何ともえりからしいっていうか」


口を挟まず、私の話をじっくり聞いてくれた佐紀は、ちょっと首を傾げて細い息を吐いた。
今回の件に関して、見たところ佐紀は割とお嬢様の行動を支持しているように思う。
仲良しの雅や徳永さんがギャルを満喫しているからか、木曜日は少しだけメイクを濃くして、ルーズを履いてきたりなんかもしている。

「そんなに悩まなくても・・・って言いたいとこだけど、えりかはある意味お嬢様の保護者的な立場でもあるし、私みたいに面白そうなとこだけ乗っかっちゃうってわけにもいかないんだねぇ」

えりか、本当はこういうの参加したいタイプなのにね、と言って佐紀は笑った。

「なんか行き詰っちゃってさぁ。結局ウチは何をどうしたいんだろうってことを突き詰めて考えてくと、どっかで矛盾してたり、何の解決にもなってないって気づかされちゃったり」
「それだけえりかが、お嬢様のこと真剣に考えてるってことでしょ。そういう優しい気持ちまで、自分自身で否定することないんじゃない?」
「佐紀ぃ~」
「おお、よしよし」

またべそをかき始めた私の頭を、大きめニットの袖からちょこんと出た手で優しくなでてくれる佐紀。
何か、頼っていいんだって思えたら、すごく安心してしまった。

「私が気持ちを整理したい時にやるのはねえ、まず、優先順位を決めることかな。で、何でその順番なのかって理由をちゃんと考えてみる」
「優先順位・・・」
「そう。結局さ、何もかも自分が望んだとおりになんてならないじゃん。だったら、順位の低い事柄については妥協しないとね。」

佐紀はバッグからメモを取り出して、ペンを手に取った。

「とりあえず、えりかが今思ってること書き出すから、思いついたこと全部言ってみて?時間はたんまりあるんだし、ゆっくりでいいよ」
「・・・佐紀ぃ、ごめんねぇ。せっかくウチから遊びに誘ったのに」


まあまあ、いいからいいからと佐紀は笑って、私の言葉を熱心に書き出してくれた。


「・・・うん、うん。それじゃ、さっきのえりかのお父さんのことは?お嬢様とか早貴ちゃんの方が大事?」


「そうだね。パパは別に、そう大したことではないかな、よく考えたら。
それより、なっきぃのことが心配っていうのが結構大きい。だから、学校の評判とかいうのも、ウチの問題っていうより、それがなっきぃの胃痛の原因になってるってことが気がかりだったのかもしれない」
「あー、なるほどね」

ゆっくり引き出してもらいながらいろいろ考えることで、どうしたいのかっていう意思はまとまってきたような気がする。

「ありがと、佐紀」
「んん?いいよー別に。そんなことより、上手くお嬢様を説得できたらいいね。・・・そうだ、私も相談したいことがあってさ、何か、この前の調理実習の時に、私が作ったの食べた子が大げさに倒れてさー」
「あっはっは!」


――こういう生真面目で落ち着いたところと、急にテンション上がったり、なぜかスポーンとできないこと(料理とか!)があるそのギャップが、“先生(♂)キラー”なんて言われる所以なんだろうな。

ゲラゲラ笑いながら、私たちはその後しばらく、話題をポンポン飛ばしながらおしゃべりに話を咲かせた。

「えりか、まだ時間大丈夫?何かカラオケ行きたくなっちゃったんだけど、どう?」
「おーいいねー!行こう行こうっ」


寮に戻ったら、もう一回頭を整理して、ちょっと無理矢理にでもお嬢様に会いに行こう。
久しぶりに2人っきりになることを考えると、楽しみなようなそわそわするような不思議な感覚を覚えた。



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