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周りの生徒たちの視線を遠ざけるように、小さな円になった私たち。
そこで打ち明けられた、お嬢様からの相談っていうのが・・・

「・・・なるほど。それは面白いですね、お嬢様」
「うん、絶対なかさきちゃん喜ぶよ!うちも協力するっ」
「じゃあ私、学校新聞にお嬢様のご提案を掲載しますね」
「じゃじゃじゃじゃあ私も協力します!フヒヒヒwww」


それは弱っているなっきぃへの、お嬢様からのサプライズ提案。
テンパってなければ結構的確な意見をくれる熊井さんと、お嬢様を中心に、 “それ”を実行に移すため、私たちは本格的な話し合いに入った。

放課後も学園祭準備の合間に時間を取って、ミーティング。
結構長引いてしまって、お迎えの車が岡井邸の門扉に着く頃にはもう19時近くなっていた。


「・・・あの、えりかさん」
「はい?」

私は寮に、お嬢様はお屋敷へと別れる途中、ふいにお声がかかった。

「・・・あの、えっと、も、もし、お嫌でなければ」
「いいですよ、なっきぃが回復するまで、何日でも泊まってってください。ウチの狭い部屋でよければ」
「本当!?ありがとう、えりかさん」


お嬢様は仔犬みたいにぴょこんと跳ねてから、あとで準備して伺うわと笑顔で手を振って去っていった。


「あ、えりかちゃんおかえり」

一息つこうと向かったロビーのソファ。そこで栞菜と舞ちゃんが、ペンチやらニッパーやら工具を片手になにやら作業をしていた。


「な、何してはるんですか・・・」

舞ちゃんの可憐なお膝に、鎧兜と保護メガネが一体になったような不思議なマスクが乗っかっている。・・・なんだっけ、これ。昔映画かなんかでみたような・・・

「あ、これね。これはガスマスク。」
「・・・はい?」
「執事さんから、お屋敷でいらなくなったガラクタもらって作ったの。舞栞菜特製、ダー○ベイダーモデルだよ。これ被ったら、千聖もなっちゃんのお見舞いに行けるでしょ?」


――なっきぃ、シュコーシュコー。お加減はシュコーどうかしらシュコーシュコー
――ギュフー!!!(バタッ)



「・・・それは、やめたほうがいいのでは」
「ん?なんで?」


2人とも、せっかく賢く生まれてきたっていうのに・・・こういうのを才能の無駄遣いって言うんですね、わかります。

無駄に完成度の高いそのマスクを被った栞菜が、あの映画のテーマを歌いながらウロウロ動き回っていると、背後でヒッと息を呑む声がした。

「あ、千聖」
「あ、ああああのどどどどちら様でフガフガフガフガ」
「シュコー、お嬢様怖くないシュコーですよグヒョヒョヒョでもこれシュコー超息苦しいシュコーんですけど」

涙目であとずさるお嬢様を庇うように、めぐぅが前に立ちはだかった。

「この℃変態め!お嬢様に危害を加えたら許さないからねっ!」
「まだ何にもしてないシュコーかんなっ」

拳法のポーズを取る鬼軍曹メイドVS、首から下はルームウェアのダー○ベイダー。何それ怖い!

意味不明な緊張感に包まれているロビー。それをどうにか取っ払おうとしたのか、お嬢様がめぐぅの背後から、引きつった笑顔を見せた。

「あ、あら、栞菜だったのね。ウフ、ウフフフ・・・な、な、なぁに?そのマスクは」
「ハァーンお嬢シュコー様!これはですねシュコー」

そのまま近づこうとする栞菜からマスクを剥ぎ取って、「ちしゃと。これはね、ちしゃとがなっちゃんの・・・」と舞ちゃんが説明を始めた。


「まあ・・・それを、千聖が?」

お嬢様は目を丸くして、お面の表面をそっと指で辿った。
リボンとかピンク色とか、可愛らしいアイテムが大好きなお嬢様のことだから、さすがにこれはちょっと・・・と思っていたら

「め・・・村上さん。これを被ったら、なっきぃに会ってもいいのかしら?」
「えぇっ!」

意外なほど、お嬢様はあっけらかんとした表情だった。

「いや・・・ちさ・・・お嬢様。それはちょっと・・・うーん」

いつもなら両手で思いっきり×を作って「ダメですっ!!」と叫んでいたところだろうけど、根本的には優しいめぐぅ、舞ちゃんや栞菜の汚れた手を見てしまったら、無碍に断れるものでもなかったらしい。

「あ、あのさ!」

微妙な空気になりかけているのを悟って、私は慌てて口を開いた。

「側にまで行くのは難しいかもだけど、せめて部屋の玄関か廊下までっていうのはどうかな?ほら、大丈夫だよこんな立派なマスクがあれば!あははウチも被っちゃおうかなーとかいってw」

カポッ

――うえっ、蒸し暑っ!

「プッ・・・もう、仕方ないですね」
1人で焦りまくってる私が面白かったのか、めぐぅは表情を和らげて、お嬢様の頬を軽く撫でた。

「いいですか、廊下までですよ。早貴さんの顔を見たら、速やかに部屋から出る事!」
「めぐ、本当に?いいの?」
「はい。・・・私だって、別に鬼じゃないんですから」

最後の発言に舞ちゃんと栞菜は首を捻っていたけれど、とにかく、めぐのお墨付きということで、お嬢様は律儀にマスクを被って、階段を上がっていった。


「シュコー」
「んへぁっ!?」
「うひゃあ!」

そして丁度、なっきぃの部屋から出てきた愛理と舞美ちゃんが、ダースお嬢様を見て腰を抜かした。

「あはは、驚かせてごめん。あんまり気にしないで・・・。それより、なっきぃはどう?」
「へえ?あ、え、えーっと、だいぶ回復してきたみたい!今は微熱ぐらいだし、さっき鮭と梅干のおかゆも食べてたよ!あはははは!」

喋りながら、お嬢様のマスクをコンコン叩いて遊ぶ舞美。

「ねーあとで私にも被らせて!これでなっきぃのとこ行ったら、ショックで逆に元気になるんじゃない?とかいってw」
「ケッケッケ。私も興味あるなぁ~。じゃあまたね!」

最初はびっくりしたものの、さすがの適応力というか。2人はニコニコしながら、お屋敷のお手伝いをしに、1階へ下りていった。
その背中を見届けて、ついにお嬢様はなっきぃの部屋の前に立った。

「うるさくしちゃったら悪いし、こっからはえりかちゃんと2人でね」

肝心なところは暴走しないでくれる舞栞菜に安心して、私は深呼吸を一つ、なっきぃの部屋にお邪魔した。

「ちょっと待っててくださいね」

ベッドルームに繋がる廊下でお嬢様に一声かけて、一人でなっきぃのベッドまで足を運ぶ。
「なっきぃ、お疲れのとこごめんね」
「あ・・・えりこちゃん」

ちょうど、布団に入ろうというタイミングだったなっきぃは、少し赤みの戻ったほっぺたを緩めて微笑んだ。
今朝は起き上がるのもつらそうだったぐらいだから、舞美たちの言うように、かなり良くなってきたみたいだ。
「ケホケホ・・・ごめんね、まだ咳だけ残ってて」
「無理しないで」

律儀に立とうとするなっきぃの肩を抱いて、そっとお嬢様のいる方向を指さす。

「シュコー」
「ひぎぃっ!」

一瞬、その異様な出で立ちに目を剥いたものの、なっきぃはそれが誰だかすぐにわかったみたいだ。

「えりこちゃん・・・」
みるみるうちになっきぃの目に涙が溜まって、お鼻が真っ赤になった。

「よかったね」
「ん・・・」
「シュコー」

ブハッ

顔だけダー○ベイダーの小さな肢体を見つめながら涙ぐむ、病床の少女。よく考えればシュールなこのシチュエーションは、私の笑いのツボをゆっくり刺激し出した。

「さ、さて!なっきぃはこのまま療養に専念すること!これで微熱も引いたら、お嬢様をちゃんと部屋にお招きできるからね。また寝る前に、お嬢様と来るから」
「うん・・・ありがと、ケホケホ」

はにかむ笑顔に、安心感を覚える。
このまま例の計画とともに、なっきぃの体調も本調子になるといいな、と思いながら、私はダースお嬢様の肩を抱いて、ひとまず部屋をあとにした。



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