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「はあぁぁあん・・・」
「栞菜ったら、もう!情けない声出すなよっ!」

月曜日の学校のホームルーム。
お取り巻きさんたちにまで義理チョコを配っているお嬢様を見て、私は机に突っ伏した。

「お嬢様、私達なんかのために、こんな可愛らしいチョコレートを!!!!すぐに御返しを準備しますねっ!!!」
「ウフフ、お気遣いなく。美味しく召し上がっていただけたら嬉しいわ」


「ちーさとっ♪桃のチョコかわいー!ありがとねー」
「お嬢様、私もありがとうございます!クッキー焼いてきたんで、よかったら食べてくださいね」

――そりゃあね、嗣永さんとか夏焼さんがもらってるのは、まあ仕方がないと思う。
でも、でも、でも!


「・・・ねえ、私、お嬢様に聞いてみようか?喧嘩しちゃったわけでもないのに、2人にだけ何にもあげないなんておかしいもん」

なっきぃは優しくそう問いかけてくれるけど、テンションダダ落ちの私も、目が吊り上ってる舞ちゃんも「・・・いい」と同時に首を横に振った。

「こうなったらちしゃとから直接話が来るまで、絶対にこっちからはチョコの話振らないから」
「うん・・・それに、貰ってるなっきぃから打診してもらうなんて、ライバルとして屈辱的だかんな」
「でもさ、」
「オランジェー・・・」
「オレンジピィィィール・・・」
「ひぎぃっ」

ガーッされた恐怖が蘇ったのか、なっきぃは大げさにのけぞる。
その後すぐにホームルームの先生が入ってきてしまったので、話はそこで中断された。


「ああもう、何だよ千聖のやつ!」
「本当だかんな、これはお仕置きされても文句は言えない事例だかんなっ」


舞ちゃんとともに口を尖らせて、前の席でイチャイチャしてる嗣永さんとお嬢様を見てるうちに、すぐに終了時間が来てしまった。


「じゃ、また後でね」
「うん、それじゃ。・・・行くよっちしゃと!」
「きゃんっ!もう、舞、そんなに引っ張ったら痛いわ!」

ちょっと、いやかなり乱暴にお嬢様の手を引く舞ちゃん。
憤っているとはいえ、完無視とかはしないのが舞ちゃんらしいこと。

2人の姿を見送ってから、高等部の教室へ向かう。


「・・・ん?」

机に教科書を入れようとしたら、引き出しの奥でコツンと違和感がした。

「ん?」

覗いてみると、なにやら四角いタータンチェックの箱。
これは、もしや・・・


「あれー?どうしたの、それ」
「うわっ」

視界が翳ったと思ったら、後ろから大きな熊・・・もとい、熊井ちゃんが、私の手からそれをひょいっと掴み取った。

「何か、机の中に入ってた」
「ふーん」

上下左右、じっくりくまなく観察すると、熊井ちゃんはニヤニヤしながら私に箱を返してくれた。

「これは本命チョコだねー」
「えっ」
「お尻にカード挟まってるよ」

見れば、レースのリボンに絡まるように、ちょこんと挟まっている小さなハートのカード。
ホームルームの前に、クラスの友だちや寮のみんなとのチョコ交換は大方済んでいるから、本命かどうかはおいといて、多分私の知らない人からの贈り物なんだろう。

「開けないの?」
「ちょっと、友理奈ちゃん!こーゆーの覗き込んだら失礼でしょ!」

とか言いつつ、なっきぃも鼻の下伸ばして私の手元を気にしている。
――どうしよう、これで開けたら「期待したかバーカwwwww」なんて書かれてて、中身もうんこチョコ(リアルver.)とかだったりしたら・・・。

「ちょっと、一人で見てくる」

お嬢様の件もあって、チョコにはかなりナーバスになっている私、ネガ栞菜。
小走りで廊下の隅っこまで移動すると、おそるおそるカードを開く。


「あ・・・」

“有原先輩に憧れてます。もしよかったら・・・”というメッセージの下に書かれていた名前を目にした途端、私の頭の中の原色美少女大図鑑が自動的にペラペラとページをめくり始めた。


――知ってる、この名前。


大変申し上げにくいことなのでございますが、それは初等部の生徒さんだった。
幼等部から大学部まで揃った懇親会の時、目にした美少女。芸能界のお仕事をしているらしく、華やかで目立っていた。
即座に原色(以下略)に登録されたから、よく覚えている。


「いやいや・・・だからって、ロリはあかんやろ」
「ハァッ!?なに言ってんの栞ちゃん!!!」
「うおっいたのか!」

忍者のごとく忍び寄ってきたなっきぃが、私の取り落としたチョコを拾う。
私のリアクション&発言(ロリ)で何となく事態を把握してくれたみたいで、つめたーい視線を向けてくる。

「いや、大丈夫でげすよなかさきの助。わてはお嬢様一筋でがんす。フヒヒwww」
「・・・私、栞ちゃんが逮捕されたらテレビのインタビューでありのままを話すからね」
「ちょっとぉ~」

何の犯罪だか言わなくても通じてるところが哀しいかんな・・・。って、そんなことよりも


「どうするの?」
「どうするって、一応ホワイトデーに何かお返しするけど。・・・何、その顔!私がしょしょ小学生に手を出すとでも!?見くびってもらっちゃ困るかんな!まあ興味はあるけどな!私は℃変態は℃変態でも、健全な℃変態なんだよっ」
「あーもーわかったって!そんなこと大声で言わなくていいから」

私の主張に苦笑(というか冷笑)したなっきぃは、後ろに回していた手をスッと差し出した。


「ん?」

赤×ピンクの不織布のギフトバッグ。中をのぞくと、オレンジゼリーがコロコロと3つ。


「・・・キュフフ、私ももらっちゃった」

名前を聞くと、それは中等部1年生のこれまた原色(ryな大人びた美少女だった。
何度か明日菜お嬢様と行動をともにしているのを見たことがある。


「体育祭のチームが一緒で、仲良くなったんだ」
「覚えてるよ。応援演目で、なっきぃと妖精みたいなキャラになりきってペアでダンスしてた子でしょ。・・・ちょっとぉ~なにデレデレしてんだよぉ。私のこと℃変態とか言えないじゃんかよぉ」
「キュフ、痛いよ叩かないでよ、もう。だって嬉しいじゃん。風紀委員の時とかみんなにガミガミ言ってばっかなのに、慕ってもらえるなんて」
「またまたご謙遜を。なっきぃに人気あるのはさぁ、わかりきってることじゃん。こないだの1人ギャル騒動の時にだって」
「そりは言わないでケロー!」


キャアキャアと騒いでいたら、ちょっと人だかりができてしまったから「すいませーん」と抜け出して、またなっきぃと並んで歩く。


「でもさ、栞ちゃん。お嬢様にチョコ貰えなくたって、こういう嬉しいこともあるんだから落ち込まないでよ」
「・・・そりゃ、なっきぃはもらったからそんなこと言えるんだよぅ」

とは言いつつ、確かにさっきより心は晴々している。
ずっと追う恋(?)だったから、こんな風に慕われて、嬉しくないはずがない。


「ふう・・・めぐる恋の季節だかんな・・・」



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