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「違います!私はマノスパイでもマノ呪いドールでもないんですっ!信じてください!」

もはや最初の清楚なお嬢様生徒会長の面影はなく、真野さんは勢いあまって私の首を絞めながら叫ぶ。

「・・・・もー、とりあえず2人とも戻ろうよ。廊下で騒がないのー」

苦笑するももが、真野さんに優しく話しかけて、体を起こしてあげる。
まさか、ももに学校での行動を指摘されちゃうなんて・・・なんか屈辱的なんですけど!


「大きな熊さん、大丈夫ですか?」
「お嬢様ぁ・・・」
「きゃっ!」

私のスカートのほこりを、エチケットブラシで払ってくれるお嬢様。
緊張と混乱がやっと収まってきて、思わず抱きついておいおい泣いてしまった。


「びえええ」
「ほらほら、くまいちょー行くよ。千聖はあんま抱きつかれるの好きじゃないんだってば」
「あ、あら・・・大丈夫よ、わ私なら。ウフフ」
「グス・・・もも冷たい!そんなぶりぶりしてるくせに、もっと女の子らしく気づかってよね!ふえーん」


私の苦情スルーなんて慣れっこなももは、はいはいと手をヒラヒラ振って、真野さんの手をつないだまま、先に歩いていってしまった。


「ひっくひっく」
「泣かないで、大きな熊さん。千聖がいるから、大丈夫よ」

ももの言うとおり、お嬢様はあんまりスキンシップが好きじゃないらしい。しがみついた小さな体はすごく強張っている。


それでも、お嬢様は優しい声で、私を宥めようと背中をさすってくれた。

「大丈夫、大丈夫・・・」


まるで子守唄みたいにそう繰り返されて、いつのまにか私の涙も引っ込んでいた。


「ありがとう、お嬢様」
「いいえ、落ち着かれたみたいで良かったわ。さあ、ももちゃんと真野さんのところに行きましょう」

お嬢様は親切に、手を繋いで私の前を歩いてくれた。
後ろから見ると、本当ちっちゃいんだな・・・なんて、頭のてっぺんのつむじを眺めながらしみじみ思う。ももと同じぐらいの背丈なのかな。
でも、妹や弟がいっぱいいるだけあって、お嬢様は何だかたのもしかった。・・・私だって、一応弟2人を従える長女なんだけど・・・実質、末っ子みたいだなんてよく言われるし。
梨沙子は「岡井さんって何考えてるかよくわかんない。いっつもボケーっとしてるし!」とか言ってるけど、ここぞという時にはやるタイプなんだろうな、きっと。


「・・・真野さんは、本当にとても優しい方よ。」
「うん・・」

控え室のドアの前で、お嬢様は独り言のようにつぶやいてドアを開けた。


「おっそーい!!もぉたち先に食べ始めてるからねー」


部屋に入ると同時に、ご飯を口いっぱいにほおばったももが、お箸を高く掲げた。
もぉたち、とか言ってるけど、真野さんは膝に手を置いたまま、うつむいている。

「真野ちゃんも食べなよー」

「え、ええ・・・でも」

目を伏せる、ストレートヘアの美少女の前に、特大のソースカツ丼。その不思議な取り合わせを見ていたら、じわじわ笑いがこみあげてきた。


「むふふふ」
「何何?今度は笑ってるわけ?くまいちょーは忙しい子だなぁ」
「あ、あの!」


ももと2人で、いつものくだらないやりとりをしていると、いきなり真野さんがガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。


「はいっ!!」

思わず兵隊さんみたいに敬礼しながら返事する私に、真野さんはガバッと頭を下げた。


「さっきは、驚かせてしまってすみませんでした!しかも突き飛ばして転ばせてしまうなんて、私・・・」
「え、え、そんな。うちのほうこそ騒いだりしちゃって。てか全然怒ってないっていうか、うちのほうが悪かったかもしれないし。じゃなくて、うちが多分悪かったんですけどよくわかんないっていうか」

慌ててフォローしようとするも、こういう時、どういう風に言ったらいいのかわからない。
オロオロしていると、「あのね、くまいちょー」とももののんびりした声が割って入ってきた。


「真野ちゃんはね、超一生懸命で、超真面目な子なの」
「え・・・」

まあまあ、座ろうじゃないかと促されるままに、私も真野さんも再び席に戻る。


「もぉ、この前学校新聞見て何事かと思ったよー。まるで真野ちゃんがお嬢様みたいな話になってたし。んま、あそこまで徹してたらしょうがないか。真野ちゃんの適応力ハンパないし」
「え、ど、どういうこと?」

だって、こんなにおしとやかそうな・・・


「・・・騙しているつもりはなかったんです」

真野さんはポツリと話し出した。

「私、3年生になって初めて生徒会の仕事に携わって・・・しかもいきなり生徒会長をやらせてもらって。大変だったけれど、生徒会のみんなに支えてもらって、ここまでやってきたんです。
こちらの学園祭に参加させていただくのは、私にとってもう残り少ない生徒会長としての仕事だから・・・絶対に、失敗したくなかったんです」
「それで、前にもぉが千聖のことを話したの思い出して、粗のない、本物のお嬢様みたいに振舞うことにしたんだよね?
真野ちゃん頑張りやさんだからさ、実は結構前からこっそり来賓室で千聖と2人で会って、しぐさや言葉遣いを参考にしてたわけ。
もぉはさ、真野ちゃんと知り合いだったから、元がこういうキャラじゃないの知ってるけど、初めて接する人は完璧お嬢様だって思うよね。すっごいなりきっててびっくりしたもん。
あ、でもねあれだよ?さゆみちゃんみたいなエセお嬢様とは意味が違うんだからね?そこんとこお間違いないように!」
「ウフフ。真野さん、来られるたびに、千聖のお相手をしてくださるのよ。嬉しいわ。
真野さんのような生徒会長さんがいらっしゃると、生徒の皆さんも心強いでしょうに。・・・あ、で、でも舞美さんも真野さんに負けないぐらい素敵な生徒会長だと思うけれど。・・・もう、ももちゃんったら笑わないで!」


三人の話を聞いて、私はどんどん血の気が引いていくような感覚に襲われた。

真野さんがせっかく、完璧な生徒会長になろうって努力していたのに・・・。
ちょっと驚いたぐらいでギャーギャーと、スパイだの呪い人形だのとまくし立てて、きっとすごく傷つけてしまった。


「ま、真野さん・・・うち、勝手に誤解して、ううう・・・ごめんなさーい!!」


「ああ、そんな、熊井さん。泣かないでください、私が悪いんですから」
罪悪感で、また涙がボロボロ落ちてきた。
私につられたのか、真野さんの目もどんどん潤んでいく。

「さっきご覧になったとおり、私、本当はかなり体育会系で。ついつい元の性格が出てしまって、驚いてしまいましたよね?本当にごめんなさい」

どうして謝るの?絶対絶対私が悪いのに!
そう伝えたかったんだけど、ヒックヒックと喉が鳴るのが邪魔して喋れない。


「あ、あのお2人ともどうなさったの?そんなに泣いては、千聖も悲しくなってしまうわ」
「ウフフ・・ちょっとぉ~何この空気?」


お嬢様は私たちを心配して涙ぐんでくれてるけれど、ももなんてのんびりふりかけご飯つっついてニヤニヤしてるし!笑うとこじゃないんだけど!

「ももぉ~」
「わかったわかった。・・・ねえ真野ちゃん。真野ちゃんはさぁ、お嬢様キャラ突き通すのもう厳しいかな?」

とがめるような視線を向けると、やっとももは仲裁体制に入ってくれた。

「グス・・・辛くはないです。ただ、またこういう風にボロが出てしまうかもしれないけれど」
「そか。千聖ぉ、他の生徒会のメンバーは、真野ちゃんの体育会系っぷりは全然知らないんでしょ?」
「体育・・・ええ、活発なお方だとすら思っていらっしゃらないかと」

お嬢様の答えに、ももは満足げにうなずいた。

「でしょー?だったらさ、とりあえず学園祭までは“お嬢様の真野生徒会長”で居続けるってのはどうかな?
リサイタルのリハ見たけど、完璧お嬢様って感じだったじゃん!せっかくだから、このままのキャラでやったほうがウケると思うんだよね。
最後に実は結構暴れん坊将軍でーすって暴露しちゃうのもアリだし、演じきるならそれもそれで面白いし」

「ももちゃん・・・」
「大丈夫だから。うちの学校、みんな異様にノリがいいし、怒る人なんていないよ。
新聞部がスクープとして、おバカネタ記事にするかもしんないけど」

珍しくももが饒舌になって、頑張っている。
普段はぶりっ子してるわりに醒めてて、友だちとかもぉ軍団以外には、そんなに深く立ち入らないようにしているのを知っているだけに、それはちょっと感動的な光景だった。
私も触発されて、「真野さんっ」と大きな声を出した。


「は、はい」
「あの!これは!四人だけの!秘密と!いうことで!これからも!ぜひ!」


真野さんの綺麗な手をガシッと掴んで、ぶんぶん握手してみる。


「・・・くまいちょー、秘密ならもっと音量下げて」
「うん!わかった!!!」
「あのね・・・」

「あはは・・・」

私ともものやりとりがツボに入ったのか、真野さんはやっと笑ってくれた。
お嬢様も安心したのか、いつもの三日月笑顔を見せて私たちを見比べた。


「いいですくゎあ?これはチーム・真野さんの秘密を守り隊だけの極秘情報だからね」
「やーだぁ、もっと可愛いチーム名にしてよぅ。どーせくまいちょー明日には忘れるくせに」
「・・・わかりやすいほうがいいからこれでいいの!それにさーももの考えるのってラブリーピンクとかチェリー姫とか変なのばっかりだし」
「あの・・・」
また口げんかしかかったところで、おずおずと真野さんが手を挙げた。


「・・・円陣、組みませんか?」
「ほ?」
「その、チームの結束を強めるのにもってこいだと思うんです」

言葉の途中で、真野さんはガシッと私とももの肩を抱いた。

「えっ」
「えっ」
「あら?」

反射的に、私もその肩を抱き返して、もうかたっぽの手はお嬢様の肩に添える。ほどなくして、お嬢様の手の感触が私の腰に回ってきた。・・・勢いで、円陣完了。

「みなさんのお心づかいに、甘えさせていただきます。ありがとうございます、嗣永さん、熊井さん、千聖お嬢様」

真野さんは可憐な笑顔でそういうと、いきなりキリッとした勇ましい表情になった。

「真野さん?」
「・・・行きますよぉ~、気合入れてくぞ!!ファイトー!!!」
「「「お・・オー!」」」
「声が小さーい!もいっちょいくぞー!」

「「「「オー!!!」」」」


なぞの掛け声で親睦を深めた後、私たちはやっとお弁当にありついた。

「ウフフ、楽しくなりそうね。大きな熊さん」
「ですね!」

目の前でももと笑い合う真野さんを横目に、私はお嬢様と微笑み合った。








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 州;´・ v ・)<声大き・・・
 リl;∂_∂ル<全部聞こえてるんですけど
 州;´・ v ・)<記事には・・・
リl;∂_∂ル<学祭終わるまでは黙っときます(関わったらヤバそうだし)
州;´・ v ・)<知らない知らない
リl;∂_∂ル<何も聞いてない聞いてない



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