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千聖が小さい手のひらに乗っけているのは、まるまるとした真っ赤なトマトだった。

「それって・・・」
「ウフフ、外のお庭で育てているトマトよ。千聖もたまにお世話をしているから、食べごろのものを二つもらえたの。良かったら、召し上がって?」

ちょうどさっき、あのトマト食べたいっ!話していたこのタイミングで・・・。何かすごい。やっぱり魔女だ、千聖って。

「いいの?だってそれ、他の誰かにあげるつもりだったんじゃないの?」
「あら、いいのよ。今月はお2人ともお誕生日でしょう?私からの、ささやかなプレゼントということで」
「誕生日プレゼントにトマトって。千聖ってやっぱ変わってるぅ」
「ウフフフ」

照れくさくて憎まれ口を叩いても、ほっぺたが緩んでいるから何の効果もないみたいだ。


「いっただっきまーす」


思いっきりかぶりついたトマトはよく熟れていて、ちょっとすっぱめだけど美味しかった。


「んーっおいしー!千聖、ありがとー」

愛理もいつもの“おいしい顔”になっている。

「喜んでいただけてよかった。あっ、でもちゃんとした誕生日プレゼントはあとで用意するわ。トマトだけってことではないのよ」
「ケッケッケ、別にいいよぅ」
「うん。これだけでも嬉しいもん」

そう言って、私はふとトマトを食べる手を止めた。
同じタイミングで、愛理もピタッと止まる。

「あら?どうなさったの?」
「愛理ぃ・・・なんか、多分」
「考えてること一緒じゃない?ケッケッケ」

こういうの、以心伝心って言うんだろうな。
私たちは千聖に向き直って、ニコッと微笑みかけた。


「食べさしで悪いけど、千聖も食べて?」
「うん、おいしかったから、千聖にも食べてほしいな」


綺麗に半分かじったトマト。
その残り半分を、2人して千聖に差し出す。


「まあ・・・、でも、そんな」
「いいからいいから」

私を後押しするように、千聖のおなかの虫がグーッと鳴った。

「あっ、違っ、いやだわ、私ったらフガフガフガ」
「あははっ!ほらぁ、食べてみて?ね?」

顔を真っ赤にした千聖は、そっと私の手からトマトを受け取った。
そのまま口に運んで、「・・・美味しい」と微笑する。

「ふふ」
「え?」
「いやー、前の人格の千聖だったら、そんな可愛く微笑まないで“うんまーっ!”とか言って騒いでるんだろうなって思って。
そんで、トマトの汁で周りべちょべちょにしちゃうの。
てか、そもそもトマトに何かイタズラしてから渡してきそうだし」

心当たりがないでもないのか、千聖は顔を真っ赤にして何かフガフガ言ってる。

「梨沙子、千聖のことよーくわかってるね」
「そりゃ、変な味噌汁飲まされた恨みもありますからぁ。・・・なんか、前の千聖にも会いたくなっちゃった」


私の言葉に、千聖は目をちょっと見開いた。

「あ、別に今のお嬢様状態が嫌っていうんじゃないよ!でもなんか懐かしくなっちゃって」
「ウフフ、大丈夫よ梨沙子さん、気になさらないで。お優しいのね」

そう言って、目を細めて私の手を握る千聖は、やっぱり綺麗で大人っぽくて・・・改めて、お嬢様なんだなって思った。


「ケッケッケ。ここにいる間に、元気な千聖とも会えたらいいね」
「・・・ええ、そうね。ウフフ」

2人は目を合わせて笑い合う。・・・うん、なんかやっぱり完璧なお嬢様同士って風にしか見えない。

「ケッケッケッケ、元の千聖にケッケッケ」
「ウフフ、いやだわ愛理ったらウフウフフフフウフフ元の千聖に」
「・・・いや、それは笑いすぎ」

――前言撤回。
お嬢様はお嬢様だけど、2人ともかなりの変わり者だ!完璧だなんてとんでもない。



千聖は結局、私と愛理のトマトを半分の半分だけ食べて、「みんな同じだけ食べれるように」って返してきた(あれ?半分の半分×2だから・・・違くない?まあいいか)


新鮮なトマトを堪能したあとは、お待ちかねのガールズトークに花が咲いた。


「・・・でも、お2人とももう16歳なのね。何だか取り残されてしまったみたいで少し寂しいわ」
「まあ、千聖だってもう2ヶ月後にはさぁ」
「そうだよ。それに、16歳になっても、別にそんな変わらないと思うけどな。何か出来ることが増えるってわけじゃないし。一応結婚できる年になるけど、当分ありえないでしょーイヒヒヒ」


喋っても喋っても、全然話題は尽きない。
今日は愛理とのんびりしようって思ってたけど、こんな嬉しいハプニングに遭遇できたんだから、ここに来て良かった。


「・・・ね、今何時ぐらいだろ」

ふと愛理がつぶやいて、時計を見ると、もう夕方になっていた。


「うっそ、ヤバッ!」

ここに来たのがお昼すぎだから・・・3,4時間近くお喋りしてたってことになる。

「まあ、今日はもう仕事も終わってるし、ちゃんと戸締りして帰れば大丈夫さぁ」
「あ、そっか、そうだよね。でも何か管理の人とかに悪いし、ちょっと先出てるねっ」

のんびりマイペースに後片付けする2人を残して、お先に思い切りゲルの扉を押す。

「あー、本当、もう夕方・・・って、ええっ!」

「あれ?梨沙子だぁ。やほー」
「ま、舞美ちゃん・・・」
「りーちゃんおっす。ねー、千聖は?」
「舞ちゃん・・・えと、中に・・・」
「キュフフ、りーちゃんお疲れー」
「なっきぃ・・・うん、お疲れさま・・・」



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