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もうとっくに仕事は終わっているはずなのに、まるで待ち時間みたいに、キュートのみんなそれぞれがお庭を眺めながら過ごしていた。


「あれー?みんなぁ」

やっとゲルから出てきた愛理と千聖も、それを見て嬉しそうに手を振る。


「おっそーい、千聖!舞、千聖がそこん中で寝てると思って、気ぃ利かせて待ってたんだからね!ほらもう帰るよ!」
「あら、舞さんたら。お待たせしてごめんなさいね」
「は?舞さ・・・ええ?・・・まあいいや、行こっ」

舞ちゃんはパタパタ走りよってきて、あっという間に千聖の腕を取って行ってしまった。

「ねえ、ねえ」

私は近くにいた舞美ちゃんに、そっと話しかけてみた。

「本当にずっと待ってたの?」
「んー、一回お昼食べに外出たんだけどね。舞が戻りたいって言うから、時間つぶしてたの。ここは自然いっぱいで、飽きないしね」
「そか。・・・あともう一個だけど、何で私たちがここにいるって知ってたの?」
「知ってたっていうか、まあここだろうなって。そこのテントがちっさーの隠れ家なんだって、舞が。
梨沙子たちも一緒っていうのはここ来るまで知らなかったけど、中から話し声がしたからね」
「ふーん」

バレてるんじゃ、隠れ家じゃないじゃん・・・。っていうか、何で知ってるんすか、舞ちゃん・・。

「まあ、ちょっと遅くなっちゃったし、今日はりーちゃんも一緒にかえろ」
「うん・・・」

せっかくなっきぃが笑いかけてくれたのに、何か気持ちが沈んだ。


だって・・・いないし、ベリーズ!一人も!


「・・・キュートって、仲良くていいなあ」
「ん?でもいつもこういう風に待ってるわけじゃないよ。帰り別々なことも多いし」
「そうじゃなくてぇ・・」

ま、わかってるけど。キュートとベリーズじゃノリが全然違うし。納得は一応してるけど、やっぱり寂しいものは寂しい。

「行こう、梨沙子」

何となく、私の気持ちを察してくれたのか、愛理となっきぃが手を繋いでくれた。
舞美ちゃんはよくわかんないけど、後ろから腰を抱いてきてムカデ歩きみたいになった。

「歩きにくいし!」
「もー、みぃたんたら無茶しないでよぅ」

わいわい騒ぎながら、屋上に繋がる階段を下りていく。
そこから通じるエレベーターでいっきに1Fまで下ると、私の目に、信じられないものが写った。


「あ、梨沙子さん」

笑いかけてくる千聖と舞ちゃんの奥。

「みや・・・」
「お疲れー。よかった、梨沙子残ってたんだ」
「何で?先帰らなかったの?」


何か約束してたってわけじゃないのに、みやがそこにいたことにびっくりして、思わず咎めるような口調になってしまった。


「いや、忘れ物しちゃったから・・・。ちょうど千聖たちに会って、梨沙子いるって言うから待ってたんだけど」
「あ、そ、そっか、ありがと」
「今日さ、梨沙子仕事終わってからすぐどっか行っちゃったじゃん?別にさ、子どもじゃないんだし大丈夫だろうけど、みんな心配してたんだよ。メール、送ったけど見てない?」

そう言われて、私はあわてて数時間ぶりにケータイの電源を入れた。
愛理や千聖と過ごすのが楽しすぎて、全然メールチェックなんてしてなかった。

「おー・・・」
「すっごーい!梨沙子人気者じゃーん!とかいってw」

横から覗き込んだ舞美ちゃんが、感嘆の声を上げた。


新着メール、30件。

みやは“帰っちゃった?”“とりあえずうちも帰るよ、お疲れ!”とか、普通の内容。
キャプテンは明日の連絡事項と、私の体調を気遣う内容、それから2人の間でブームなドラマの感想が入ってた。
ももはツ○ッターと勘違いしてない?ってぐらいの頻度で“今電車乗ったよー”とか“オレンジジュースおいちー☆”とか画像つきで。
茉麻は“今どこ?”“何かあった?大丈夫?”“気づいたら1回メールちょうだい”ってママっぽいメールが数件。
千奈美は意味わかんないダジャレと面白画像をたんまり送ってきて、“求感想!てか今もう家?”って送ってきてた。
熊井ちゃんはハマッている漫画の話を長文で、最後に“ところで梨沙子、いつの間に帰ったの?”なんて書いてた。


「愛されてるねー」
「・・・うん」


余計な言葉を言ったら泣いちゃいそうだったから、黙ってみやの肩に顔を押し付けた。
「どうしたどうした。甘えんぼうか」

髪を滑るみやの手が気持ちいい。


みんな、さりげなく私のこと気にしてくれてたのに。キュートは仲がよくていいな、なんて口に出した自分が恥ずかしくて、情けない。

「一緒に帰ろ?」
「うん・・・」


ささやかに誕生日を祝ってもらって、愛理とも千聖とも仲を深める事ができて、キュートのみんなに優しくしてもらって、ベリーズの絆を強く感じる事もできて。最高の1日だったと思う。

んま、できれば、元気なほうの千聖にも会いたかったけど・・・。



「じゃ、またね!」
「うん、バイバーイ」

駅について、それぞれの電車の乗り口に別れていく。
私は愛理・みやと途中まで一緒。千聖たちとはここでバイバイ。


「じゃーねー・・・ん?」

名残惜しく、みんなの後ろ姿を見送っていると、急に千聖の足が止まった。


「千聖?」

小走りで、私のところまで戻ってくる千聖。
黙ってジーッと見つめてきたと思ったら、その可憐なお顔が、だんだん不気味に歪められていく。

「ちょ・・・」


何か言い出す前に、背後に回りこんだ千聖は、私の頭を抱え込んで胸に押し付けてきた。
千聖の柔らかい胸の感触と、ギリギリ締め付けてくる息苦しさが同時に襲ってくる。


「グフフフ」
「ギ、ギブギブ!無理!」

早々に腕を叩いて降参を知らせると、千聖は満足そうに体を離してくれた。

「ケホケホ・・・な、な、何」
「あはは、りーちゃん、じゃねーい!あ、ごきげんよーだっけ、あははは」

何がそんなに面白いのか、千聖は手を叩いて笑いながら、改札をくぐってしまった。


「あははは、なになに?ウケるんだけど!」
「梨沙子、大丈夫?」

みやなんて大爆笑してるし、一応心配してくれてる愛理も、若干目の端に笑いが浮かんでいる。


「し、信じらんない!千聖の乱暴者!っていうか、いつの間に元に戻ったんだろ・・・」

すると、愛理はちょっと気まずそうに私をチラ見した後、「・・・今日は、最初っからヤンチャな方の千聖だったんだよ・・」と呟いた。


「えええええっ!!!??」


「まあまあ、梨沙子落ち着いて」
「あばばば」


だって、だって、さっきまではあんなに綺麗な言葉遣いで・・・あんな清楚な笑顔で・・・なのに、どういうことだ!

「いやー、いつネタバレするのかなーって思ってたんだけど、千聖全然言い出さないから。まさかこのタイミングとは思わなかったなあ」
「あー・・・それで、さっき私が“元の千聖にも会いたい”って言ったとき、2人して大爆笑してたんだ。もー、どっかで教えてよぅ、愛理ってば!」
「あはは、ごめんねー。なっきぃも舞ちゃんも気づかないふりしてあげてたから、言いそびれちゃった。舞美ちゃんだけは本当に気づいてなかったかもしれないけど」


――キュート、変なトコでも結託しすぎ!!


「私も全然気づかなかったなあ。千聖、元に戻ってることもあるんだ!面白いね!」
「うん、最近の“元の千聖”のマイブームなんだよね、お嬢様のフリして騙すの。でもキュートのみんなはもう慣れっこだから引っかからないし、今の梨沙子の反応は嬉しかったんじゃないかな。」
「うー・・・でも、まあ、明るい千聖とも会えてよかったよ。あの乱暴者め!プロレス技とかひきょうだし!」

悪態をつきつつ、それでも私たちに美味しいトマトを譲ってくれたり、隠れ家に招いてくれたりしたのは“元の千聖”の優しさに違いないわけで・・・それは、やっぱり、嬉しい。


「・・・もう二度と引っかからないように、これからはもうちょい千聖の動向に注意しとこうっと」
「ケッケッケ、でも相手はあのいたずらの天才だからねー。ファイトだ、梨沙子!」
「おー!」

とりあえず、プチ復讐として、帰ったら“元の千聖”に「ももが階段から落ちてクールキャラになっちゃった!」ってメールしてやろうかな、と私は密かに微笑んだ。


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