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今年の天候不順は一体どうしたことなんだろう。
肌に突き刺さるような冷気を纏いながら、私はそんなことをぼんやり考えていた。

――それにしても、一体私は、いつまでここにいなければならないんだろうか。


「出ない・・・」

無機質なダイヤルオンが、むなしく私の耳を通り抜けていく。
いい加減あきらめれば?って自分でも思うけれど、“彼女”の無邪気な笑顔を思い浮かべると、自然に指が短縮ボタンを押してしまう。

どうして、彼女は電話に出ないのだろう。せっかく2人きりで遊ぶ約束をしたというのに。

私は今日という日を、本当に楽しみにしていた。
小学生の、遠足の前の日みたいに浮き足立って、眠れなくなっちゃうぐらいわくわくしていた。それなのに。

数十回目の発信。今度は少し長めに、切らずに待ってみようと思った。
きっと気づいてくれる。電話に出てくれる。いつもみたいに、「ごめーん」って笑ってくれる。そう信じた。信じていたのに。


「・・・何でぇ?どうして出てくれないのぉ・・・?」

15分間、鳴らしっぱなしにした電話。それでも、受話口に彼女の声が飛び込んでくることはなかった。
悔しくて悲しくて、私はグスンと鼻をすすり上げた。

本当は私と遊ぶのが嫌で、直前になってその気持ちが高まってしまったのだろうか。
あるいは、他に電話で話したい人がいるから、私の電話なんかに出ていられない、とか・・・


頭をよぎるのは、いつも当然のように彼女の横で笑っている“あの子”。
私がどんなに彼女の気を引いても、どれだけ熱心に尽くしても、結局彼女に選ばれるのは“あの子”。

もしかして、彼女はあの子からの電話を待ってるの・・・?

「そんなの、いや!!」

私は絶叫してしゃがみこんだ。
どうしてどうしてなんで。わたしがこんなにまっているのになんで。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?


不安と焦燥感で、心が壊れてしまいそうだった。
今日だけは、私のものになってくれるって信じていたのに。裏切り者。許せない。
もう絶交だとか、二度と口も利きたくないとか、たくさんの嫌な言葉が頭を満たしていく。そして、パンク寸前になった時、急にスーッと激情が引いて行った。



「・・・・・ああ、そうかぁ・・・」

今日だけは私のもの、なんて思うからいけないんだ。


誰かのものになるぐらいなら、え い え ん に わ た し の も の に す れ ば い い


「ウフフ・・・待っててね」

さっきまでは気恥ずかしさで押せなかったインターフォンを、弾むような気持ちで鳴らしてみる。

「あーい」

出迎えてくれたのは、彼女の小さな小さな宝物。穢れなんてひとつもない眼差しがまぶしくて、私は目を細めた。


「こんにちは、私、早貴っていうの。あなたのお姉ちゃんに、会いに来たんだ・・・」


「・・・・・というような事態を招く恐れもあるので、着信33回とか金輪際やめたほうがいいと舞は思いましゅ」
「長文乙。・・・って、ないから!!絶対に!!!私は舞ちゃんとはチガウンデース!」

毎度おなじみ、妄想萩ちゃん劇場。本日は、なっきぃ怖っ!とか煽ってくる“元の”岡井はん付き。


「なっちゃんはさ、残念ながらストーカー気質というやつだよね。アイドルなのに。何かロック感じるわ」
「あー、かもねー。警察に突き出されなかっただけでも感謝して欲しいねぇ。あの時舞がクローゼットから出てきて取り押さえてくれなかったら、千聖どうなっていたことか」
「いや、私何にもしてないし!何本当に千聖に危害加えたみたいな話になってんの!てか、何でナチュラルに舞ちゃんが不法侵入してるの!?それはいいの?ていうか、そもそも千聖が寝坊するからいけないんじゃん!何これ!意味わかんない!」

2人して私をいじってくるもんだから、どこから突っ込んだらいいのかわからずてんてこまい。
そんな私を見て、「ウケるー!!」っておなかを抱えて笑う小悪魔2匹。・・・2人とも、私をどうしたいんでしょうか。


「・・・舞ちゃん、私が千聖と2人っきりで遊んだからヤキモチやいてるんでしょ。」

仕返しとばかりにそう挑発してみると、舞ちゃんの眉毛がピクッと上がった。

「・・・別に?」
「だってー、私と千聖、ラブラブなプリクラ撮っちゃったしー?あーあの日は本当に楽しかったなぁ?キュフフ。ほれほれ、まだプリあまってるからあげようか?」
「う・・・うるさーい!こんなもの!消化してやる!」
「ぎゃー!やめるケロやめるケロ!」

舞ちゃんはプリクラをひらひらさせる私の手ごと、自らの口の中に突っ込もうとしてきた。・・・舞、恐ろしい子!

「ちょっとなっきぃー、舞ちゃんいじめるのやめてよねー」
「ちしゃとぉ・・・えーんえーん(棒読み)」

「な、ちょ、こんなの絶対間違ってる!リーダー!愛理!」

マトモグループに助けを要請するも、2人は読んでいた雑誌をパタンと閉じて、イヤーな笑顔を向けてくる。

「えー?あはは、聞いてなかった!ごめんごめん。でも、ストーキングはだめだぞ、なっきぃ!nkskならぬstskですな、とかいってw」
「聞いてんじゃん!」
「ケッケッケ、真実の愛とは、そんな手段じゃ手に入らないんだぞ、なっきぃ!」
「もー、愛理までぇ」


――だめだ、完全にnkskいぢりモードが発動している。これはまずいことになったのだ。


「千聖、ちょっと」

あー、誘拐だー!と叫ぶ舞ちゃんの魔の手から千聖をしばしお借りして、隅っこにて小声でナイショ話。

「・・・このこと、ブログに書くの?」
「え、もちろん。こんな面白いネタ、そうそうないでしょー!」

仔犬顔の悪魔は、楽しそうに体を揺すって笑った。

「ちょ、待って、それならなっきぃが先に書くから。千聖はその内容をフォローする感じにして!お願い!
舞ちゃんの言ってる内容で書いたら、私ヤバイ子だと思われちゃう!特に、着信の件は絶対に伏せて!」

千聖はいたずらっ子だけど、ちゃんと話せばわかってくれる。そう信じて手を合わせると、案の定、少し考え込んだ後、千聖は「うん、わかった」とうなずいてくれた。

「大好きななっきぃの頼みだもんねっ」
「千聖ぉ」


かわゆい妹分が聞き分けてくれた嬉しさで、私は千聖をギューッと抱きしめた。

背後のちさまいが、ニヤリと笑ってサインを送りあっていたことなんて知ることもなく。



――その後、千聖が私からの“岡井ちゃんと遊んだよ♪詳しくは岡井ちゃんのブログで♪”のパスを華麗にスルーし、しばらく経ってからお嬢様の千聖が慌てて書いてくれた中に、ばっちり“着信33回の件”が含まれていたのはまた別のお話。



ノソ*^ o゚)<着信の件は絶対に伏せて!絶対だよ!
~~~~~○~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
      o
      リ*・一・リ<押すなよ!絶対に(ryということかしら?ウフフ、早貴さんたらお茶目なのね。早く応えて差し上げないと。



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