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プチホテルの駐車場で、感動の再会を果たした二人は、寄り添ってその場を離れていった。
当然のように、私たちも後ろをつけていく。・・・ただし、何となく抜き足差し足忍び足で。


「舞・・・」

心配そうに顔を覗き込むお姉ちゃんを、私はあえて無視して前方に意識を集中させた。
2人の肩が触れ合うたび、胸が痛む。
暑いような寒いような変な感覚で、頭がボーッとする。
恋人を奪われる、ってこんな感じなんだろうな。激情じゃなくて、じわじわと心を侵食していく虚脱感。


「ふふふ・・・」
「ちょっと、舞ちゃん大丈夫?」

今日のことは、私が計画したことだっていうのに、何て自分勝手なんだろう。あまりのガキッぽさに、笑いがこみあげてきた。

千聖の16歳の誕生日。私が初めて祝う、大好きな人の大切な1日。
だから、千聖が一番喜ぶことをしてあげたかった。そのために、私は1ヶ月も前からずーっとずーっと頭を捻っていた。

ありきたりじゃなくて、千聖が顔中くしゃくしゃにして笑ってくれて、できたらそのまま嬉し泣きでもしてくれちゃうぐらいのサプライズ。
そういうのを追求していったら、やっぱり彼女――舞波さんの力を頼らざるを得ないんじゃないかって結論に至った。それで、連絡を取って、こうして足を運んでもらったわけだけど・・・。



湖の畔に移動した二人は、何も言葉を交わさず、ただじっと見つめ合っていた。
千聖の黒目がちな瞳に、舞波さんの小動物みたいな瞳に、お互いの姿を映すだけ。

あの日、この場所で、2人がお別れした時と同じぐらい、静かな愛情に満ちている。そんな気がした。


――いっそ、もっとはしゃいでくれたら良かったのに。
舞波さんがお屋敷に滞在していた時みたいに、もう誰の事も見えないってぐらいに舞波さんに夢中になってくれたら、ヤキモチのやきようがあったのに。

千聖はすごく喜んでいる。嬉しさのあまり、感情が停止して、目のまえの舞波ちゃんを目に焼き付けることしか出来なくなっているんだろう。
誰もさわれない二人だけの国。まさにそんな感じだ。


「・・・ちょっとホテル戻ってるから」

私は隣にいた鬼軍曹にそう告げると、踵を返した。

バカじゃないの。ほんとみっともない。好きな人の幸せ、一緒に喜んであげられないなんて。
理性ではそう思っていても、感情は抑えきれない。こんな気持ちを持て余しているって、誰にも気づかれないようにするのが精一杯。


「・・・舞の千聖なのに」

いつもの独り言も、今は虚しく心を空回りするだけ。
自分で計画したこととはいえ、予想以上、いや、もはや予想外といってもいいほどの千聖のリアクションは、私の心を確実に打ちのめしてしまった。



湖畔のホテルに戻り、フロントで部屋の鍵を受け取った私は、ポーンとベッドにダイブした。


舞波さんと千聖が一晩一緒にいられるよう、寮生と鬼軍曹でお金を出し合って取った部屋。
私が一番乗りに入ってゴロゴロするなんてありえないけど、今ものすごくへこんでるわけですし、これぐらい許して欲しい。・・・はいはい、どうせガキですよ、舞は。


いつもと違う天井を眺めながら、千聖と舞波さんのことをボーッと考える。

例えば、私と舞波さんが海でおぼれていたら、千聖はどっちを助けるんだろう。
例えば、私と舞波さんが激しく言い争っていたら、千聖はどっちの味方をするんだろう。

そんな不毛な疑問がエンドレスに頭を駆け巡って、がりがりと頭をかいた。

もう、どうして千聖のこととなると、私はこんなにもバカになってしまうんだろう。
栞菜やなっちゃん相手なら負ける気がしないのに、何で舞波さんには敗北感を味わわされてしまうんだろう。
せめて、私を挑発してくるような気の強い人だったら張り合えたのに。舞波さんはふわふわの雲みたいにつかみ所がなくて、最初からライバルにすらなってもらえない。
こんなことで悩むなんて全然私らしくないし、かっこ悪くて嫌だ。


「はぁ~あ・・・」


どうせ、まだみんなは戻ってこないんだし、思う存分マーキングしてやる。

ベッドにほっぺをすりすりさせながら、私はいつしか深い眠りに落ちていた。



*****

「・・・舞?舞、起きてちょうだい。舞」
「んー・・・?」

乱暴に肩を揺すられて、深く閉じていた瞼を開ける。


「うわっ」


目に飛び込んできたのは、千聖のドアップ。
反射的に鼻をつまんでやると、仔犬みたいに顔をしかめて「ふにゃあ」とまぬけな声を出す。


「あははは」
「もう、何をするの、舞ったら!」

怒ってる顔を見せられるのも、何か嬉しい。
だって、こんな顔、舞波さんには見せないでしょ、絶対。


「舞、どれぐらい寝てたの?」
「そうね・・・小1時間ぐらいかしら」
「ふーん。・・・舞波さんは?」

あまり不機嫌が顔に出ないよう、注意深くそう聞くと、千聖はパチパチと目を瞬かせた。


「舞波ちゃんは、もうお帰りになったわ。御両親の滞在なさっているホテルに泊まるそうよ」
「は!?え!?嘘、え、何で」


私が計画していた予定は、こうだった。

千聖と舞波さんを対面させる→頃合を見て寮生は退散する→千聖と舞波さんはここで一泊する→明日の朝迎えに来る

舞波さんにも電話でその旨伝えておいたはずなのに、予想外の出来事に、私の思考は停止してしまった。


「・・・あのね、舞。上手く言えないけれど、私も舞波ちゃんも、何だか満足してしまったのよ」
「満足って」


「湖でね、私と舞波ちゃん、ほとんど何も話さずに、ただずっと見つめあっていたの。
言葉なんてなくても、舞波ちゃんのいろいろな気持ちが私の中にたくさん入ってきて。とても温かくて、安心したわ。
そうしたらね、舞波ちゃんも同じ風に感じてくれたのか、自然に、“じゃあ、また今度ね”なんて言葉が同時に出てきたのよ。だから、今日はもう、これでお別れするって決めたの」

舞波ちゃんと千聖は、テレパシーもできるのかしら、なんて千聖は微笑んだ。


「舞波さん、遠くに住んでるのに、本当にそれでいいの?次いつ会えるかわからないんだよ?」
「ええ。物理的な距離なんて、あまり問題ではないわ。今日、舞波ちゃんに会って、改めてそう思えたの。
どこにいても、私は舞波ちゃんを感じられるし、きっと舞波ちゃんもそう思ってくれている。・・・せっかく、ホテルまで用意してくださったのに、ごめんなさいね、舞」
「それは別にいいけどぉ・・・」

ふだんはボケーッとしてて危なっかしいくせに、妙に大人びた口調でそんなことを言われると、憎まれ口も引っ込んでしまう。

妙に大人っぽいっていうか、長女っぽいっていうか・・・。こういう時の千聖って、ちょっと近寄りがたいぐらい神秘的だと思う。


「・・・舞、帰りたくないな。ここに泊まりたい」

だから、私は感情の赴くまま、千聖に甘えてみることにした。

「あら・・・」
「いいでしょ?だって、キャンセル料もったいないじゃん。明日早起きしてここから歩いて学校行けば・・・ねえ、いいでしょぉ?」


イメージ的には、りーちゃんっぽい声色。・・・上手く出来てるかわからないけど。
自分の中の、最大限の“妹力”を引き出しながら、千聖の肩に頭をくっつける。


「ウフフフ・・・」
「何で笑うの」
「ウフフ、ごめんなさい。だってね、さっき、このお部屋をキャンセルしないと、っていう話をしていた時に、舞波ちゃんがこう言ったの。
“舞さんが、ちゃんと有効に使ってくれると思うから、このままとっておいたほうがいいよ”って」
「・・・・あっそ」


――さすが、というかなんというか・・・。

行動を読まれちゃったって思うとなんかむかつくけど、それ以上に、やっぱすっごい人だなあなんてしみじみ思わされる。
んま、完全無欠(とかいってw)の舞様にだって、一人ぐらい敵わない相手がいたっていいんじゃないの?なーんて、やけに心地よい敗北感に、笑顔がこぼれてしまう。


「・・・ありがとう、舞」


ふと、千聖は真顔に戻って言った。

「素敵な誕生日プレゼントだったわ。私は幸せ者ね。大好きよ、舞」
「千聖・・・」
「ウフフ、いやだわ、私ったら。早くめぐに連絡して、荷物を・・・きゃんっ!」

照れて逃げようとする手を捕まえて、思いっきり自分の方へ引っ張る。


「舞・・・?」
「まだ。もうちょっとこのままでいて」

抱き着かれるの、あんまり好きじゃないってわかっているけれど、私は千聖の膝を枕にして、顔をうずめた。

「16歳の千聖も、舞のなんだからね」
「もう、舞ったら」

明日になったら、どうせみんなの千聖お嬢様に戻ってしまうんだから。
せっかく舞波さんがくれたチャンスだもん、今日は舞だけの千聖でいてもらおう。

「あまえんぼうなのね・・・ウフフ、何だか可愛いわ、舞」
「ふふん、うるさいよ・・・」

髪をすべる千聖の指の感触に身をゆだねながら、私は再び目を閉じて、つかの間の幸せの余韻に浸った。



*********

ノk|‘-‘)<とかなんとか言って、実は隣の部屋に泊まってるかんな!(ガチャ)ハロー、センt・・・マイ。アーンドプリティバストガール・チサト。ハーワーユ?
(o・ⅴ・)!
リ*・一・リ!
从・ゥ・从<よーし、みんなでマクラなげしよう(z)!
ワクワク リ*・一・リ ワクワク
(o・ⅴ・)<せっかくのいいムードが・・・
ノソ*^ o゚)<いいムード?はじめからそんなものなかったケロ!2人きりになんてさせるものか!
州 ´・ v ・)<ついでなのでもぉ軍団の皆さんも呼んでみました。ケッケッケ
リ*・一・リ<まあ、楽しそう!やっぱり、皆さんで盛り上がるのが一番ね、舞?
(o・ⅴ・)<ち・・・ちしゃとおおおおおおうおおおうおお


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