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佐紀ちゃんは薄ら笑いを浮かべながら、Sモード入った顔で続ける。

「確かー、私とどっちがお客さん怖がらせられるか勝負するんだっけ?」
「そ、そうだよっ」
「あーそう、へー。ほほー?」

む、むかつくんですけど!
まるで子供を相手にしてるかのような、余裕綽々のその笑顔。

そう、話は今朝のクラス会議にさかのぼる。
幽霊の衣装合わせが終わった佐紀ちゃんと私のことを、クラスメートが「チビッ子専属」とか言ってからかってきたのがきっかけで、私と佐紀ちゃんの間で、超くだらないバトルが勃発した。

要するに、「どっちが怖いお化けか、きっちり決着つけよう(z)!」というわけ。

私も大概だけど、佐紀ちゃんも結構ムキになるタイプなもんだから、どちらも引き下がらずに火花を散らして今に至るというわけだ。



「そーやってバカにするけどねー、もぉだって少しは驚かすことできたんだからねっ」
「へー、じゃあ何人?」

――うっ。

こうやって自己申告を促してくるってことは、私が数を改ざんするタイプの人間じゃないって信頼してくれてるんだとは思うけど。その点は嬉しいけど。でもね、でもね、だけど。


「・・・・・・・ふ、ふたりれす」
「え?何?聞こえない(AA略)」
「っ、ふ、2人だっつったの!聞こえた!?」


“ちょっとー、もも喋ってないで真面目にやってよねー”

思わず声を荒げると、受付係から注意の声が入ってしまった。

「ふ・た・り?ヌホホwwwそうでござるかww2人とはwwwオゥフw」

そんな私の決まり悪そうな顔を見て、佐紀ちゃんは何とも気持ち悪い笑いを浮かべた。

「あーはいはい、しかもそのうち一人はくまいちょーだからね。一応軍団構成員だし、それ省いたら実質一人(赤子)だけですよ、もぉの猫娘で泣いてくれた人は!」

でも、私が井戸の裏から飛び出した時のくまいちょーのリアクションはなかなかすごいものだった。
どひゃーとか言って、新種の虫みたいな動きで逃げてったっけ。パンツ丸出しで。
あの反応、佐紀ちゃんにも見せてやりたかった!そしたらこんな風にバカにされることもなかったかもしれないのに!

「そ、そんな笑うならねぇ、佐紀ちゃんはどうなの!?そんな座敷わらしで、怖がる人なんていたわけ?」
「ふっふっふ」

佐紀ちゃんは不敵に笑うと、私の目の前に開いた右手を突き出してきた。


「・・・5人。一応、不意打ちで高校生カップルとかも驚かせたよん。ちびっ子だけじゃなくってね」
「うっそ、何で!?多くない?」
「あら、佐紀さんは驚かせ方がお上手なのよ。千聖もさっき、本当の幽霊かと思ってびっくりしてしまったの」
「くっそー・・・負けたぁ」

千聖の証言もあることだし、何より佐紀ちゃんがこういうことで見栄を張らないっていうのは、私もよく知っている。
一気にモチベーションが下がった私は、唇を尖らせて壁によりかかった。

「ちょっとー、職務放棄すんなよぉ」
「だぁってぇ」

一応姉的存在だし、千聖の前ではかっこつけときたい気持ちはあるんだけど・・・こうも大差(もぉにとっては!)をつけられてしまうと、なかなかきっついものがある。

「しょうがないなあ、桃はぁ」

んで、私がこういう状況になると、佐紀ちゃんは妙に優しくて親切になったりするもんだから、何かズルズルと甘ったれてしまう。

「じゃあさ、とりあえず、作戦立てよっか」
「作戦?」
「もう少し怖がられたいんでしょ?だったら、ももの店番の間、協力するよ」
「ウフフ、それなら千聖も。」
「しゃきたぁ~ん・・・ちしゃとぉ~・・・」

もー、何ていうか、嬉しいんだけど。嬉しいんだけど、自分の小ささとか、同じ状況だったら私はこうはできないだろうなとか、そういうこと考えると妙に落ち込む。


「ま、気にすんな。私は敗者には優しいんだよ。さ、そんなことより作戦考えよっ!もう次のお客さんからはちゃんと対応しないと」
「ウフフ・・・佐紀さん、桃子さん。実はアイデアがあるのだけれど」

そんな私に、あえて気づかないふりをしてくれてるんだろう。2人が会議を始めつつ、さりげに私に話を振ってくる。


「んー、そうだね、それ面白そう!じゃあまず千聖お嬢様がさぁ・・・桃はどう思う?」
「え!えーと、うん、それいいと思う。でさ、もぉと佐紀ちゃんはぁ・・・」


さすが、こんな扱いにくい女と友達やってくれてるだけあって、2人の対応は大人だ。自然に輪に混ぜてくれて、どうにか私のしょうもないヘソ曲げも、収まってきたようだ。
まったく、私ももーちょい大人にならないとな・・・。

――数分後。

「準備、いい?お客さん来るよ」
「ええ」

今度のターゲットは、家族連れだろうか。楽しげな声が聞こえてくる。
そして、通路から小さな男の子と女の子がひょっこり頭を出した途端、千聖が若干うわずった声で、「きゃ・・・きゃー!たすけてー!」と叫んで飛び出した。

「えっ」

思わず立ちとまるちびっこ達。
そのタイミングで、今度は私と佐紀ちゃんがニューッと現れて、逃げ惑う千聖を追い掛け回す。


「あーれー、呪われてしまうわー!」
「待て待てー!猫の恨みは根深いにゃーん」
「うーらーめーしーやー・・・とりついてやるー」

「こ、このオバケめ!退治してやる!」
「いてててて」

千聖の演技力(?)のおかげか、あっけに取られていたチビッ子たちは、いきなり私と佐紀ちゃんに突進してきた。

「こら、耳を引っ張るんじゃにゃい!」
「たすけてぇ~幽霊よぉ~」
「千聖、煽るな!」

「桃子、どうしたゴブボェ」
「「「「「ギャーッ!!!」」」」」



すると、いきなりお隣の“マジ怖ゾーン(R15)”から、杭とか斧とかいろんな物が体中に突き刺さった血塗れまいみぃが現れて、更にカオス状態。

「待って待って僕たちゲホッ、お姉ちゃんは怖くないガフッゴフッよー」
「舞美は児童閲覧禁止だから!速やかにグロコーナーへお戻り!血糊を吐き散らすんじゃない!」
「ひどーい、佐紀ったらグボァ」
「ウフフ、舞美さんたら。どんどんバージョンアップしていくのね」

「ちょっと、なにやってんの!!!舞美に佐紀まで!」

――結局、騒ぎに気づいた受付の子たちからこっぴどく叱られた私たちは、早々にオバケ係を降ろされるハメになってしまった。


「・・・あーあ、生徒会幹部だってのに、くっだらないことで怒られちった」
「でも、楽しかったんでしょー?」

ふっふっふ。

私たちは目を合わせて、悪代官のように笑い合う。


「あれ、そういえば千聖はー?」

私たちがお叱りを受けている間に、どうやら千聖はどこかに行ってしまったようだった。

「んー、もしかしたら体育館じゃない?ほら、まだちょっと早いけどさ。午後から・・・」


「「ダンス部!」」


今日はやたらと気が合うようで、またも私と佐紀ちゃんの声が揃う。
佐紀ちゃんはもちろん、風紀いんちょーさんも確かダンス部。千聖がチェックしていないはずがない。


「てか、行かなくていいの?佐紀ちゃん出演者でしょ?」
「んー、・・・まあ大丈夫でしょ。散々練習したし」

もものお相手してたら、遅くなっちゃったよーなんていいながら、佐紀ちゃんは小走りに去っていった。

「・・・よーし、そんなら見に行くか」

全く、1日目からハプニングだらけだ。
ま、こんな学園祭も悪くないけどね。

「ウフフ」
すっかり千聖の癖が移ってしまったウフフ笑いが、唇を滑るのが心地いい。


公演を見た後は、ちゃんと佐紀ちゃんに言おう。
“お疲れ様”と、今いいそびれちゃった“ありがとう”を。

私は背筋を伸ばすと、体育館に向かってゆっくり歩き出した。



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