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「いいじゃん。別に愛理は千聖のこと恋愛対象として見てるわけじゃないんでしょ?
ただ私が千聖をあっち系の方向でいじめてないか心配なだけでしょ。
大丈夫だよ、私は千聖が望んだこと以外は何もしてないから。」
「千聖が望んだ、って」
「愛理さ、ちょっと千聖のこと子供扱いしすぎ。
お嬢様にだって人並みにそういう欲はあるだろうし、大体前の千聖だってどこまでどうだったかなんてわからないでしょ。
私は千聖が可愛いから、いろいろしてあげたくなっちゃったんだよ。」
えりかちゃんの視線は、舞美ちゃんと打ち合わせをしている栞菜と千聖にむけられていた。
たしかに可愛くなったな、とは思う。とりわけ、今日の衣装―赤いタータンチェックのブリティッシュスタイルのスカートは、千聖によく似合っている。
「栞菜はお人形みたいだけど、千聖は人型ぬいぐるみみたいだね。抱き心地がよさそう。そう思わない?愛理。」
・・・えりかちゃんはぬいぐるみにムラムラするのかしら。
そんな話をしているうちに、スタジオ入りする時間が来て、私達はスタッフに呼ばれた。
千聖の方をチラッと見ると、またえりかちゃんが側に寄り添っている。
確かに、いじめているという雰囲気ではないみたいだ。2人はにこにこ笑い合って、えりかちゃんが千聖の髪にカチューシャを挿してあげている。
「愛理、早く行こうよ。どうしたの?」
栞菜が袖を引っ張るまで、私は2人を凝視していた。

結局、撮影中も私は上の空なままだった。
さっきえりかちゃんから言われたことが、地味にチクチクと刺さっている。

子ども扱いかぁ。
言われてみれば、そうかもしれない。
同い年トリオの梨沙子がファッションやメイクに詳しい反面、千聖はスッピンTシャツ短パンがあたりまえで、いつもにぎやかにプロレスごっこをやっていた。
もちろん、恋バナなんかもしたことがない。
たまに梨沙子とするような、ちょっとエッチな話なんて、振ってみたこともなかった。千聖じゃわからないと決め付けていたから。
お嬢様になった今は、おしゃれ系の話はよくするようになったけれど、やっぱり込み入った話はしていなかった。
今日の今日まで、どちらの千聖もそういった事とは無縁だと信じ込んでいた。
それは私が経験していないことをまさか千聖が、というある種の蔑みだったのだろう。
さすがに反省した。

「鈴木、センターでボーッとしない!」
「すみません。」

いつになく何度も注意を受けながら、撮影は終わった。
「大丈夫?体調悪いならあれあるよ、セーロガンとか。ストッパとか。愛理ゲリピーピーみたいだってえりが言ってたけど。」
・・・えりかちゃんめ。どうしてくれよう。
ドラえもんみたいに薬を出し続ける舞美ちゃんの気遣いをやんわり辞退して、私は千聖の元へ急ぐ。
「千聖。」
飲み物を持って、なっきぃと談笑していた千聖は、私が近づくと顔を赤らめてうつむいた。
「ちょっと、2人で話したいの。」
「・・・・ええ。」
手を引っ張って皆の輪を抜ける最中、なっきぃが
「えりかちゃん!2人だけで話したいって言ってるんだから追いかけちゃダメ!」
と引き止める声が聞こえた。
・・・えりかちゃんめ。ありがとうなっきぃ。
「愛理、どこへ行くの?」
スタジオを離れて、ロビーを抜けて、楽屋を通り過ぎて、私が向かったのは今朝のトイレだった。
「嫌、愛理・・・・!」
私にしてはかなり強引なやり方だったと思う。千聖を個室に押し込んで、自分の体の後ろで鍵を下ろした。
「あ、愛理」
小柄な体ががくがくと震えている。
「乱暴なことしてごめんね、千聖。私、どうしても千聖に聞きたいことがあって。」
さっきえりかちゃんがしていたみたいに、千聖の唇を指でなぞる。
「ここで千聖がやってたこと、私にも教えて?」



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