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――自分の目を疑うってこう言う事なんだと初めて知った夜
* * *
七月なのに茹だる様な暑さが続き精神も殆んど降参状態。
明日も仕事があるけれど誘惑に負けてコンビニで一缶買って帰宅する。
「お帰りなさい」
「?!」
聞きなれない……でも聞き覚えのある声。玄関から一直線にあるリビングにいるのは思っ
た通りの人だった。
「な、何でいるのッ!?」
「居たら何か不都合な事でも?」
「ま、全く無いけど状況が掴めない」
「そんな事はいいから座って下さい。あ、先に手洗いとうがいを」
戸惑いながらもその言葉の通りに動き隣に座る。
お嬢様化している、そして何故かこの家に居る千聖はコンビニの袋の中身を確認すると冷
蔵庫に向かって歩いて行き冷凍室からある物を取り出して再びリビングに戻って来た。
「これ……凍らせたグラス?」
「はい。お父様がこれでビールを飲んでいるので」
「ふ~~ん」
グラスを見ていると千聖が何で此処に居るのかという事よりも早く喉の渇きを潤したくな
ってきて袋から取り出しプルタブを開ける。「プッシュ」という小気味良い音を聞いて注
ごうとした瞬間に彼女からストップが掛かった。
「私がお注ぎします」
「え、でも……」
「私が注いだお酒は飲めないと?」
「い、いえ。……じゃあお願いします」
真剣な顔でグラスを支えビール缶を持つ千聖に微笑ましさを感じた少し特別な夜。
……………何て妄想をブログを読んでした方、いらっしゃるんじゃないですか?
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最終更新:2013年11月24日 10:25