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「・・・なんかさ、なっきぃと千聖って結婚できそうじゃない?」

ある日のレッスンの帰り、ラーメンをずるずるとすすりながら、千聖がつぶやいた。

「げほっ」
「ちょ、大丈夫?」

あまりにも唐突で、予想もしないその言葉に驚いて咽る私の背中を、千聖がポンポンと叩いてくれた。


「ん、ごめん。・・・てか、何で?いきなりすぎてびっくりなんだけど」

はずかしいぐらい、自分の声が弾んでいるのがわかる。
だって、しょうがないじゃない。
いつも「ピクミン」呼ばわりされるぐらい、舞と千聖の後ろをちょこちょこついて回っては、徹底的に弄繰られるっていう役割なのに、いきなり同じ人間扱いしてもらえるなんて。しかも、結婚とか!ビバ!一生涯のパートナー!!

「だって、なっきぃって千聖のこと好きでしょ?」
「うん、好き好き大好き!」
「でへへ。やっぱさー、愛されるより愛したいとか言うけど、実際愛されたいよねー。報われないのってマジ辛い」

機嫌がいいんだか悪いんだか、口を尖らせチャーシューをもりもり食べながら、千聖はそんなことを言う。
主語はないけど、それが一体誰の事を指して言うのかなんて、確認しなくてもわかる。


「・・・舞ちゃん?」
「聞いてよーもう!舞ちゃんさぁ本当最近冷たいっていうかぁ」
「わかったわかった、お店の中で騒がないの!あとで話聞くから」
「ん」

興奮していても、宥めれば一応従ってくれるのが何だか嬉しい。
握り箸でどんぶりに顔を突っ込むその姿に苦笑しつつ、私も残りの麺をちゅるちゅると啜った。

「・・・んで?舞ちゃんがどうしたの?」

食後、近くの公園のブランコをこぎながら、私は千聖を促した。

「・・・あ、何かもーいーや」
「ええ!?」

なんたる気まぐれ!まあ、こういうの岡井さんには珍しいことじゃないんだけど、相談ノリノリモードに入っていた自分としては、ちょっと出鼻をくじかれた感じだ。

「何か、おなかいっぱいになったらどうでもよくなっちった。あははは」
「もー、千聖ぉ」

文句を言いつつも、私はこういう千聖の気まぐれに振り回されるのが嫌いじゃない。・・・いや、むしろ好き。
必要とされてるのがまず嬉しいし、機嫌が直ったのならそれはそれで安心するから。
今だって、バツが悪そうにほっぺを掻いてるはにかみ顔を見てるだけで、まーいいやって思ってしまう。


「もーね、いいの舞ちゃんは。どーせ千聖よりみっつぃを取るんだし。千聖には、愛してくれるなっきぃがいるもん」
「キュフフ、やっとわかってくれたんだね、岡井ちゃーん」

ハロコンが始まってからというもの、舞ちゃんにつれなくされ続けている千聖は、相当不満が溜まっていたようだ。(でも、あれは舞ちゃんなりのツンデレ作戦だったと思うけど・・・キュフフ、失敗して御愁傷様ケロ♪)
千聖だって結構、あっちへフラフラこっちへフラフラと自由にやってるくせに、自分が邪険にされるのは気に入らないらしい。


「でさ、さっきの話だけど。なーんか千聖、舞ちゃんがあんまり冷たいから、リアルに考えちゃって。
千聖結構、さびしがりじゃん?もしこの先、舞ちゃんと千聖が結婚とかするとしてぇ」
「いや、“もし”がもうありえないじゃん」
「だから、例えばだってば。・・・んで、2人の新婚生活を想像したら、何か絶対うまくいかないだろって」
「・・・なるほど?」

舞ちゃんと千聖の2人暮らしか。
きっと、楽しいときはものすごく楽しいんだろう。イチャイチャラブラブ、幸せ垂れ流しまくりで、もう正視できないレベル。
だけど、ひとたび喧嘩が勃発すれば、夕食のお献立選びや掃除の手順、寝るタイミングとか、些細なことで争いを勃発させて、即寝室を分けて眠ることになる様子が具体的に想像できる。

「んー・・たしかに、ムラがありそうだよね」
「でしょ!?だから、ちさまいは結婚には向いてないのかなって」

千聖はぴょこんとブランコを飛び降りて、私の座っているところに無理やりお尻をねじ込んできた。

「キュフフ、きーつーい!」
「まあまあ、いいじゃん!」

どうやら、今日は甘えんぼうモードらしく、体をすりすりさせてくる。愛用シャンプーの女の子らしい香りが鼻をくすぐって、何だかちょっとだけドキドキした。


「そんでね、せっかくだから他のキュートのみんなでも想像したわけ。結婚生活を。
まずー、舞美ちゃん!きっと、舞美ちゃんと千聖なら、笑いの絶えない面白い家庭を築けると思うんだ!・・でも、朝起きたら家が吹っ飛んでるとか、なぜか家の中でライオンがうろうろしてるとか、ありえないハプニングが起こって大変そう!」
「・・・言わんとすることはわかるケロ」
「次、愛理!何かね、千聖は絶対、愛理を大事にする自信はあるんだ。でも、気を使いあっておかしなことになりそう!
会話とか「あ・・・」「あ・・いいよ全然」「ううん、いい。全然全然」「全然全然全然」とか言って。で、あいりんが定期的に爆発して家出すんの!」

なぜか楽しげにケラケラ笑う千聖につられて、私も爆笑する。
狭いブランコが、2人分の振動でガクガクと揺れて、その危なっかしさに余計に笑いが止まらなくなる。

「あーおもしろ!・・・そんじゃ、次なっきぃね!」
「え、私?キュフフフ」



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