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千聖は「んー」と短く呻くと、静止して私の顔をじっと見た。

おお、こう見るとやっぱりイケメンだね、岡井少年は。
一人乗り用ブランコに無理やり2人で座っている状態だから、体中の側面がぴったり密着している。
そんな体勢で見つめてくるもんだから、また少し胸がドキドキした。

「・・・絶対、なっきぃと千聖の結婚生活はハッピーだね」
「そ、そう?・・・キュフフ」

さっきから、無駄に男前度が増している岡井はんは、声のトーンまで低くして、私の手をギュッと握ってきた。
何これ?告白!?告白なの!?受け入れていいの?
千聖は結構誰にでもこういうことを言う。それはわかっている。
わかっているけど、こういう真剣な表情とか、唇をついてでるくすぐったい言葉にいちいち心を乱されてしまう。

「まず、家事分担が結構いい感じじゃない?なっきぃは定位置女子だから掃除、千聖は料理。洗濯は仕事の前に二人でやればいいじゃん?買い物も基本一緒かなー」
「いいねいいねー」
「セールスマンとか勧誘電話、なっきぃはうまく追っ払えないでしょ?千聖にまかせて!その代わり、いろんな支払いとか千聖絶対忘れちゃうから、お金の管理はよろしく!」
「・・・なんか、本当に上手くいく気がしてきたんだけど」

千聖の肩に頭を乗っけてみると、その私の頭に、千聖の頭が乗っかってきた。
こんなの、舞ちゃんがいたら絶対やらせてくれない。・・・否、できない。
私は千聖とはキュートの中でも特別仲がいいつもりだけど、千聖にとって私が特別なのかどうかはわからない。千聖には舞ちゃんがいるって思ってたから。

でも、もしかして私にも、千聖の一番手になるチャンスがあるんじゃないだろうか。
今みたいに舞ちゃんが他の人に夢中になっていて、千聖が私・・・というか“私を口説くこと”に夢中になっているのはいい傾向だ。

たらしでおおらかな千聖と、都合のいい女タイプの私。良くも悪くも、相性はバッチリなのだから。

「千聖!」
「うおっびっくりしたぁ」

いきなり顔を上げたことで、さっきより近い距離で千聖と目が合う。

「あのね、結婚はともかく、将来的に千聖ルームシェアならやってみたいかも」
「おっ、まじんがー!?」
「だって、うちらホテル同室になっても全然トラブルになんないし、なっきぃは千聖といると楽しいよ」
「ふがふがふが、でへへ、嬉しいんだけどぉ」

小麦色の肌がちょっとピンク色になって、バシバシ私を叩いてくる。
案外、ストレートに褒められたりするのは慣れてないらしい。シャイで自分に自信がない千聖らしくて、ちょっぴり母性本能をくすぐられる。


「前にね、ママが言ってたんだけど。結婚っていうのは、足りないものを補い合うことなんだって」
「足りないもの・・・」
「うん、だからね、やっぱりうちらは夫婦になれちゃうんじゃない?
おおざっぱな千聖に、神経質な私。朝弱い千聖に、夜弱い私。決断の早い千聖に、優柔不断な私。・・・どう?よくない?これからはなきちさで行こうよっ!」


なるほど、女の子を口説くというのは結構面白いものなのかもしれない。
ボーッとあほの子みたいに口を開けて、私の話に聞き入る千聖を見ていると、テンションが上がってしまう。

「どう?なっきぃ基本ぼっちだし、だからこそ絶対千聖をひとりぼっちになんてしないよ?」
「基本ぼっちとか自分で言ってるし!てか、顔近いよ、もう。はずかしいだろっ」

千聖はひとしきりふがふが騒いだ後、またおもむろにブランコからポンッと降りて、私の目の前の柵に腰掛けた。


「でもさぁ、一つ大きな問題があるんだよね、千聖たちの間には」
「ん?何何?」


千聖は私をチラッと見て、なぜかグフフと小さく笑う。

「ちょっとー、はっきり言ってよー。なっきぃが悪いとこあるなら直すし」
「いや、悪いって言うかぁ悪くないけどぉグフフフフ」
「お願い、言って!もしかしたら千聖以外の誰かにも迷惑かけてるかもしんないし」

少々しつこく食い下がると、千聖はしょーがねえなあといった顔で、漸く口を開いた。

「いやぁ、なっきぃってさ、何か結構さあ・・・あれじゃん」
「あれって?」
「んーだから、・・・・・エロいことすんの好きじゃん。ドゥフフ」
「・・・・・・・・・・は?え?」


――1.5秒、思考が停止した後、私は「ギャーッ!」と絶叫した。


「待って待って、落ち着いてって!叫ぶなすぐ!」
「あがががが」


そうだ、千聖には知られているんだった。

私が舞ちゃんとエグいDVDを鑑賞していた事。
ジャパネットうんたらかんたらの怪しい器具でハッスルハッスルしていたこと。
もももしかしたら、過去にベリキューでお○っきぃしてたこともどっかから漏れたのかもしれない。
(※これらのエピソードはまとめサイト参照ケロ!)

「別に、そーゆーこと一人ですんのはさぁなっきぃの自由だからいいんだけど、千聖そんなにエロいほうじゃないから付き合えないと思うんだよね。えーと、夫婦生活というやつ。グフフ」
「いや、待って!それは納得いかない!千聖だって前にほれあの何だ、えええりかちゃんと何かいろいろしてたじゃん!舞ちゃんとだって」

「あれは私じゃなくてお嬢様!あとね、舞とのことは、なっきぃが悪いんだからね!なっきぃにエロ知識を植えつけられて唆されたって舞言ってたし!
・・・待てよ。なっきぃが襲いかかってきたら、お嬢様に人格を戻せばいいのか。ん?そんなことできんのか?
とにかくね、こっちの千聖がなっきぃとそーゆーことするなんて、あ・り・え・ないない♪」
「チャー・・・」


なんということでしょう。
直接的に言われた事はなかったけれど、千聖の中でとっくに私はエロキャラにされていたらしい。
でも、今の私はそんなことぐらいでへこたれない。

「ちさとっ!」
「はいっ!」

だって、チャンスじゃないか。舞ちゃんが浮気心を出している今なら、本当になきちさを公式カップルとして定着させることができるかもしれない。


「・・・大丈夫だよ。性の不一致なんて、大した問題じゃないケロ!ってか、食わず嫌いしないで一度チャレンジしてみたらええねん!そうだそうだ」
「ちょ、え」


「よーし、今夜ためしに私とエッ○しよう、千聖!!!」


nksk、真夏の大胆発言。
思い切って言ったその一言は、夕刻の公園に案外大きな声で響いた。千聖もかなり驚いたのだろう、目を見開いたままフリーズしてしまっている。

――どどどうしよう。テンションの上げ方を間違えてしまった。
あんまり先陣切って大きい声ではしゃぐことがないから、加減を誤ってしまったみたいだ。

「う・・・うわー・・・」
「ごめん」
「うわー・・・」
「だから、ごめんってば」

でも、よく見ると千聖は相変わらずビックリした状態で止まったままだった。あれ、千聖の声じゃ・・・ない・・?
まさか・・・


「うわー・・・・・」


三度目のドン引きボイス。
よくよく目をこらせば、千聖の背後にある大きな木の陰から、レースのようなサテンのような不気味な白いふわふわが見え隠れしている。


「りーだー!!」
「あはは、乙カレーライス、なっきぃ!何か寄り道したらさー、2人が深刻そうな話してるからさー」

額に汗をかいた、さわやかキラキラ美人がひょっこり顔をのぞかせて微笑みかけてくる。ウエディングドレスと見紛うようなモサモサフリフリ白ワンピ。それから・・・


「うわー・・・」
「うわー・・・」

「もー、しつこーい!」

わざとらしく手を握り合って、不審者を見る目つきで私を射抜く舞ちゃんと愛理。

――しくじった。ここは事務所から程近い公園。偶然(かどうかわからないけど)メンバーが集っていたっておかしくないような場所だった。

「ちしゃと、怖かったねー?おいでおいで」

勝利の笑みを浮かべた舞ちゃんが、余裕を感じさせるたたずまいで千聖を手招きする。

「えーん、舞ちゃぁん!なっきぃがセクハラしてくるよぉ~」
「セクハラって!・・・いや間違ってないですけどケドそもそも千聖が」
「ケッケッケ、もう大丈夫だよ~千聖ぉ」

出た、ブラックキューティーガールズ。
悪ノリした愛理の背後に隠れて、千聖が非難の目を向けてきた。舞美ちゃんはにこにこ笑ってる。
当然のように千聖の腕に手を絡める舞ちゃんを見てると、まるで魔法が解けたシンデレラみたいに、スーッと幸せだった気持ちが引いていく。

「全く、舞が少し目を離すとこうなんだから」
「っ!そ、そうだよ!舞ちゃんが千聖を放っておくからいけないんじゃん!」

それでも、私は必死で舞ちゃんに反論を繰り出した。
なんてったって、私は・・・

「私はね、千聖に“なっきぃとなら結婚できそう”とまで言われたんだよ!キューフッッフ!」
「ふーん」

――あ、あれ?


私としては結構な切り札のつもりだったんだけど、舞様は表情一つ変えてくださらない。否、浮かんでる。口元に。微笑が。

「あのさーあ、一応言っとくけどぉ。ちしゃとはマジで誰にでもそういうこと言うから」
「あは、こないだ茉麻ちゃんにも“千聖のお嫁さんになって!”とか言ってたね。ケッケッケ」
「自分基本、ノリとフィーリングで生きてるんで。でへへ」
「で、でもでも!」


必死で舞ちゃんから千聖を奪い返そうとするも、「シャー!」とかヘビの威嚇みたいなことをされて、たじろいでしまう。
何、この圧倒的な存在感。そして威圧感。こ、これが本妻の迫力と言う奴か・・・!

「なっちゃん、いい?先日、千聖は舞にこう言いました。“千聖はいろんな人を好きになるけど、絶対に舞ちゃんに戻ってくるから”このハロプロDDが」
「・・・ああ、たしかに言ってたケロ」
「だから、思ったの。舞だって千聖一人に縛られる必要はないんだって。いろんな人と仲良くして、そんで最後は千聖を選ぶってわけ」

ね?と小首を傾げると、千聖は口を尖らせながら一応うなずいた。

「まー、本当はヤだけどぉ、しょうがないよねっ」
「じゃ、じゃあ私と結婚できるって言ったのは何だったの!ルームシェアは!嘘だったの!」

閑静な住宅街の一角の公園で、痴情のもつれから争いを勃発させてる少女たち。しかも同性!
曲がりなりにもアイドルだって言うのに、なんてみっともない!
理性ではそう思っていても、今回は譲る気になれず、私の声も知らずに上ずる。


「それは嘘じゃないよ」

すると、千聖が意外なほど冷静な声でそう返した。

「千聖はなっきぃが好き。でもあいりんも好きだし、舞美ちゃんも好き。もちろん舞ちゃんもどわい好き。
なっきぃが優しくしてくれるから、千聖は頑張れるんだよ。あいりんと一緒にいるだけで心が和むよ。舞美ちゃんとお喋りしてるだけで、肩の力が抜けてくよ。舞ちゃんは千聖の命そのものだよ。
なっきぃ。千聖の周りには、こんなに千聖のことを助けてくれて、愛してくれる素敵な人がいっぱいいるの。だから、その誰かを選ぶなんて千聖にはできないよ。ダメかな・・・?」


「千聖・・・ううん、いい!全然問題ない!千聖が思うとおりにすればいいよ!」

私は何だか感動してしまって、若干目に涙を浮かべながらぶんぶんうなずいた。


「ちっさー、大人になったね!舞美は嬉しいよ!」

ほら、このとおりリーダーも喜んで・・・と思ったら、ブラックキューティーガールズコンビは揃いも揃って「ハッ」と鼻で笑っていた。

「ケッケッケ。何かいい話にまとめようとしてるけどぉ」
「つまり、これからも一人に絞らずガンガン浮気し続けるけど、まあ黙って待ってろやってことでしゅね。
はいはい、別に舞はそれでいいけど?ちゃんと最後には舞を選ぶって宣言もらってるからね。どうぞどうぞって感じ。
なきちさルームシェア?したらいいじゃないでしゅか。どーぜ週に5回は舞のとこに来るに決まってんだから」
「舞ちゃんうけるー!それじゃシェアの意味ないし!」


――あれ?あれ?どうしてこうなった?
私は確かに千聖に選ばれて、結婚できるとまで言われて・・・いつの間に寝取られた?いや、まさか最初から寝取ったのは私だったってオチ?


「ケッケッケ、どっちか1っこ選べないけど~」
「あなた(たち)がとてもた・い・せ・つってわけケロね・・・」

最後の最後、ちさまいコンビの鉄壁さを見せつけられてしまった気がしなくもないけど・・・いかんせん、私は執念深い。
引っ付き虫とかピクミンとか言われたって、しつこくしてると千聖は結構折れてくれるのを、私はよくわかっている。
2人だけの海外旅行とか、夢と魔法の国とか。まだまだチャンスはいくらでもあるし、作戦の立てようもあるというもの。

「ねーさん、シェアするお部屋をお探しならぁ~カッパ不動産が協力しますよぉ~ケッケッケ」
「へーい、あんがと」

面白がりな愛理の御提案を右から左に受け流しつつ、私はケータイをパカッと開いた。

どうやら今日のデスメールは、とってもとっても長くなりそうだ。


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