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「岡井さぁん、待ってよー」

黙々と一人競歩を続ける岡井さんの背中にしがみつきながら、息を切らして歩き続ける。
やっとたどり着いた配布所にはもう結構人がいて、かなりにぎわっているようだった。
生徒列はもちろん、外部の人の列も長蛇の列だ。・・・さすが、このステージだけでお客さんを呼べると言われてるだけある。

中にはもう、“みやびうちわ”とかボードの準備をしてる人とかいて、対抗心がメラメラと湧き上がってくる。絶対、チケット手に入れたい!

「すぎゃさん、私はメイドの分だから、こちらに。ご健闘をお祈りするわ」
「うんっ、岡井さんも!それじゃ後でねっ」

岡井さんとバイバイしたすぐ後に配布が始まって、あわてて動き出した列へと並ぶ。
ああ、神様仏様夏焼様!今後1週間いい子にしてるから、どうか私にチケットを!



*****

「岡井さーん」
「あら、梨沙子さん」

数十分後、私は壁際でボーッとしてる岡井さんを見つけて、駆け寄った。

「早かったんだね」
「ええ、並んでる方はたくさんいらっしゃったけれど、列の進みがとても速くて」
「・・・で?確保できた?」

私からの問いかけに、岡井さんはくふっと肩を竦めて、おおきくうなずいた。


「本当!?やったじゃーん!メイドさん喜ぶよ!」
「ええ、おかげさまで。・・・すぎゃさんは?どうだったのかしら」


「んー・・・」

私はちょっと睫毛を伏せて、唇を尖らせた。


「え?あ、あの?すぎゃさん?えと・・・でも、ほら、あの・・・立ち見のお席もあるわ。
あ・・・で、でも、やっぱり指定席が良かったのよね?でもでも、メイドの分のチケットは学内用じゃないから・・・差し上げるわけにも・・・」


黙って足元の小石を蹴る私に、岡井さんはオロオロしだした。
それがあんまり可愛いもんだから、しばらくその様子を観察していたんだけれど・・・あんまり長引かせたら可哀想かも。


「いひひひ」
「すぎゃさん」
「・・・じゃーんっ!!」

不安げな岡井さんの前に突き出した右手。その指が摘んでいる長方形の小さな紙を確認した途端、表情が和らいでいく。


「大丈夫、私も無事確保!いぇい!」
「ウフフ、もう、すぎゃさんたら・・・千聖のことをからかったのね」

てれくさそうに、でもホッとしたように笑う岡井さん。ふーん、そういう笑顔で舞ちゃんを籠絡したわけね。んま、別にいいんだけどさ。


「席自体は、明日午前中に抽選で決まるらしいね。今並んでた順じゃなくて」
「あら、そうなの?遅くに着いたから、てっきり後ろの方になるのかと・・・」
「えー!?チケットに書いてあることとか読まなきゃだめじゃーん!損しちゃうよ?」
「そうよね。すぎゃさんのおっしゃる通りね・・・。私、本当に一人では何もできないわ」


岡井さんが眉を下げて、しょんぼりしてしまった。
ちょっと強く言いすぎちゃったのかも・・・。
きっと、お屋敷にいると、こういうめんどいことは召使さんが全部やってくれたりするんだろうな。

何だか申し訳なくて、私はあわてて「で、でもさ!」なんて声を裏返らせた。

「し、仕方ないから明日引き換えの時も一緒にいてあげるけど?」
「え・・・」
「だって、岡井さん危なっかしいし!べ、別に気にしないでよねっ。夏焼先輩に興味もってくれてるメイドさんのために協力するだけだし!」

まるでツンデレキャラのような口調に、自分でもうへっとなった。
けど、岡井さん的には嬉しかったのか、くふふと笑って肩を寄せてきた。


「ありがとう。すぎゃさんはいつも千聖のことを構ってくださるのね」
「またそうやってさぁ。かまうとか、別に、ペットやちびっこじゃないんだから。岡井さんて自己評価低すぎー」
「でも、本当に私なんかのことを・・・」

うーん。
またちょっと強く言っちゃったかな、なんて思った。
岡井さんは何か、ほっとけないタイプだ。
いろんな価値観が違いすぎるから、テンポがよくわからなくて、こっちがキーッ!てなっちゃうこともあるけど、基本的にいい子だからどうにかしてあげたくなっちゃう。
私はどちらかというと友達に甘えるタイプだから、うまくいってるのかはわからないけど。


「んーだから、友達に、構ってもらうとか遊んでもらってるとかいうのはおかしいでしょ?」
「すぎゃさん・・・」
「もう、いいからいいから、この話終りね!教室戻ろっ」

――やっぱりこういうのは、私のキャラじゃない。あばあばしながら踵を返すと、後ろからスカートを引っ張られた。

「・・・ウフフ」

真っ赤な顔で、上目づかい。
結構身長差があるもんだから、ちょっとした“彼女に甘えられる彼氏”気分だ。
しかも相手は魔女。本当に、ずっと一緒にいたら、おせっかいが高じて変な間違いが起こりそうな気がしてきた。・・・それこそ、舞ちゃんにぶっとばされるような。

「岡井さんて怖ーい・・・」
「あら、どうして?」

同性でこんなにドキドキさせられるんだから、よく雑誌に載ってる「上目づかいが恋に効いてなんちゃらかんちゃら」っていうのは本当なんだろうな、なんて関係ないことが頭に浮かんだ。


「ほら、もう行こう!シフト一緒だし、またこの後お店番でしょ?」
「そんなに慌てないで、すぎゃさん。ちょっと待ってて」

岡井さんはパッと私から離れると、小走りに校舎の中へ入っていった。
そしてすぐに、アルミのバッグを持って戻ってくる。


「ウフフ、これ」
「おー?何で何で??」


そこに入っていたのは、クラスで販売しているドーナツだった。
手売り用に割り箸に刺してあるタイプのが、10本ほど。


「昨日ね、外で販売したドーナツが好評だったから。今日も折を見て、売りに出ようと思って、えりかさんに家庭科室で預かっていてもらっていたのよ。売り子さんをしながら戻りましょう」
「へー・・・やるじゃーん」


箱入り娘なのかと思わせといて、こういうとこは結構しっかりやれるんだ。


「じゃ、さっそく行きますか」
「ええ。・・・いらっしゃいませー、ドーナツはいかがですかー」
「いかがですかぁー!」


以外に声を張る岡井さんにつられて、私も大きい声を出してみる。


周りの人がいっぱい振り向いてくれて、私たちの方へと歩いてくる。


「・・・これは絶対完売だね」
「ええ、ウフフフ」


チケットは確保できたし、宇宙人な岡井さんともまたちょっとだけ心を通わせることができたし。


「すぎゃさん、2本取ってちょうだい」
「はぁい♪よろこんでー」


私はすこぶる言い気分で、串刺しのドーナツを岡井さんに手渡したのだった。





(o・ⅴ|
(o・ⅴ・)<どうせドーナツ売れ残っちゃったんでしょ。仕方ないから舞が全部買ってあげないこともないでしゅよ
リ*・一・リ<あら、おかげさまですぐに完売したのよ。梨沙子さんと頑張ったの

ウフフ>リ*・一・リ人リ‘ o‘*州<ねー

(o・ⅴ・)<・・・


ノソ*^ o゚)<あっ舞ちゃん!さっきねドーナツいっぱい買ったんだけどうわやめなにをする




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