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ガシャンッ。

視線を体ごと外して背中をフェンスに寄り掛からせる。味気無く響く音。
無性に……無性に一人になりたい時がある。それは自分を見つめ直したいからなのか自分
を見つけてほしいからなのか。

「あの様子だと……全員一緒かな?」

今まで見ていたのは見慣れた団体様。千聖お嬢様を中心に出来ている輪。
あの中にいる事は嫌いじゃない。……ううん、むしろ大好きだ。
ここに来るまでに抱いていた不安感を簡単に取り払い何処か無理して作っていた私をも簡
単に壊して“素”に近い私を受け入れてくれる人達。
でもさ、たまに怖くなるんだよね。

「……天邪鬼だから」

誰かに知ってほしいようなけど知られたくないような……矛盾した思い。
多分この気持ちを分かるのは舞ちゃん位じゃないんだろうか。

「なんだかんだで……考え方が一番似てると思うんだよね」

彼女もこの場所がお気に入りだ。きっと理由も一緒なのだと思う。
そう思った時にキィィィと扉が錆付いた音をたてて開いた。


「舞ちゃ…!! なっきぃ?!」
「あ、栞菜だ」

自分の中で意外過ぎる人物が其処には立っていた。だって一番この場所に縁が無いと思っ
ていたから。
彼女は…なっきぃは私の名前を呼んだ後に私と1~2m離れた位置で止まり私と同じ様に
背中をフェンスに寄り掛からせた。ガシャンッと味気無い音も同じ様に響く。そして空を見上
げると「はぁ」と小さく息を吐いた。
そんな姿を見た事が無かった私は戸惑う。私の中の彼女は学園内では優等生。寮内ではお
嬢様と舞ちゃんにからかわれつつも嫌な顔しない…むしろ嬉しそうにしているキャラ。

「「……………」」

沈黙が続く。けどなっきぃは何も話すつもりはないらしい。
ただ空を眺めているだけ。そこに私という存在さえも無いかのように。

「……なっきぃ」
「ん~~?」

堪らなくなって声を掛けると空を見上げたままだがいつも通りの返事が来た。
それに少しほっとする…って何でほっとしてるんだろう?


「質問……してもいい?」
「ん、いいよ~~。って何でそんなに改まった感じなの?」
「あ、いや、うん。……な、なっきぃは此処によく来るの?」
「ん~~気紛れだから何とも言えない」
「気紛れ?」
「栞菜だってそうでしょ?」
「……………」

キュフフという笑い声が聞こえそうな笑顔で言われて何も言えずにいる。
変だ。物凄く変。私となっきぃの関係性を疑いたくなる位に私の中でのなっきぃのイメー
ジが崩れて行く。可笑しいのは私? それともなっきぃ?

「……帰らないの?」
「へっ?!」

唐突に言われてまぬけな声が出た。そんな私をなっきぃは笑わずに見ている。
ねぇ、いつもだったら笑う所じゃん。

「あ、うん。か、帰る。なっきぃは?」
「私? 私はもう少し此処にいるね」
「じゃ、じゃあまた寮でね」
「うん。またね」

キィィィと再び扉が錆付いた音をたてたのを気にせずに彼女は空を見上げている。
黄昏時に一人立つその姿は由来になった顔が見分けにくいの『誰そ彼』ではなく知ってい
る筈の彼女が見えない『誰そ彼』に思えた。

「……………」

胸の奥が少し痛い気がする。物理的な方じゃなくて精神的な方。
その痛みの意味を問う事も階段を下りる事も出来きずに私は閉ざされた扉をじっと見つめ
ていた。


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