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“大変長らくお待たせいたしました。まもなく、開演いたしますので・・・”

ちょっとふがふがした、岡井さんのアナウンスを背中に受けながら、私は最前の席へと戻っていった。

まだ心臓がドキドキしている。
・・・やっちゃった。神聖なステージで、夏焼先輩のためとはいえ、歌を披露してしまうという大胆不敵な行動。
でもちょっと、気持ちよかったりして。舞台にたつって、こういう気分なんだ。・・・時々、自分で自分が恐ろしくなるわ。

「菅谷さん」
「うわっ」

いきなり、横から声を掛けられた。
そこにいたのは、岡井さんちのメイドさん。村上さん・・・だっけ。
今日ステージを見に来てるっていうのは知ってたけど、お隣さんだったのか。


「ごぶさたしてます。いつも千聖お嬢様がお世話になって・・・」
「あ、いえいえ、こちらこそ」

美人なんだけど、目がおっきくて、迫力があって、怖い。
そんなイメージを持っていたけれど、今日のメイドさんは少し雰囲気が違っていた。
本当、偏見で申し訳ないんだけど、気軽に話しかけようもんならぶっとばされそうっていうか・・・。そういう印象だったのに、なぜか今はまとう空気がとても優しい。


「あ、あの今日はそのいい天気でっていうかステージも最高なのであばばばば」
「その、ハッピ。菅谷さんが着てるの」
「えっ」


テンパる私を、マイペースでスルーするメイドさん。
そのまま、思いっきり【MIYABI NATSUYAKI】と書かれたそれ(もちろん加工写真プリント済)を、くいっとひっぱった。


「あ、あのー・・・」
「菅谷さんは、みやびのことが好きなの?」
「え!」

ちょ、ちょ待てよ(キ○タク)。今、「みやび」っていった?みやび?みやびさま、じゃなくて?百歩譲って夏焼さん、とか、じゃないの?????よびすけ?

あーあ。よくいるんだよねー。ファンとして適切な距離を保てない人って。
好きなら、そこに敬意が生まれるはずでしょうが!だめだめ絶対、好きだからこそ、ヲタだからこそ、敬称をつけるのが礼儀だから!わかった?わかったら訂正しやがれ!

「ね、みやびのことすきなの?」
「は!はい、そりゃもう!ヌホホwww」

・・・・などとこのような猛者に言えるはずもなく、私はでへへと笑った。

「・・・そっか、良かった」

私の答えを受け取ったメイドさんは、とても穏やかに微笑んだ。

「あの・・・夏焼先輩のこと、見にきたんですか?ファン、とか?」

そう問いかけると、少し眉を上げて瞬きをするメイドさん。

「んー・・・。そう、かな。うん。みやびのファン。かな。とかいってw」
「へー・・・」

――いや、これは違うな。

私の夏焼先輩センサーが、“この人はヲタじゃないゆー”と脳に信号を送ってくる。
この余裕。「私のみやびを応援してあげてね。おほほほほ」といわんばかりの貫禄。間違いない。この人・・・いえ、このお方は・・・・関係者様!?

「あ、あの!」

その時、会場の照明が一気に暗くなった。
一呼吸おいて、爆発するかのような女の子たちの歓声が響き渡った。



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