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「うーむ」

湧き上がる大歓声の中、私は一人、腕組みをして首をひねっていた。

「茉麻、どうした?大丈夫?」
「あ、うん。別に、うん」

横に入る千奈美が気に掛けてくれるものの、この感情を表す言葉が見つからず、曖昧に答えることしかできない。

梨沙子がハイトーンボイスを披露し、熊井ちゃんがヲタ芸で盛り上げ、舞美先輩が豪快にパンツを見せつけ、佐紀先輩が激しく舞い踊る中、颯爽と登場したBuono!の3人。
昨年同様、そのステージングは圧倒的で、とても素人女子高生の学園祭企画とは思えないクオリティだ。
安定感抜群の柔らかい愛理の声を主軸に、桃子の甘さと辛さをミックスした器用な歌唱と、雅の憂いを帯びたような独特の音色が重なる。
おまけに軽音部の生演奏つきともなったら、そりゃあ外部からもファンの人が集まってしまうのは当然だ。
かくいう私も、友達という枠を飛び越えて、一観客として、この空間を楽しみにきたわけで・・・。


「ねー、ほんとに大丈夫?トイレなら付き合おうか?」
「あー、ごめんね。そうじゃないんだ」

本当は、千奈美と一緒に盛り上がりたい。去年みたいに、大声で声援を送ってあげたい。でも、私はどうも性格的に、1個気になることがあると、そこに執着して考えすぎてしまう節があって・・・。


「・・・雅が、マジになってる」


千奈美には聞こえないぐらいの大きさの声で、そうつぶやいてみる。

「うん、変だ。これはおかしい」

口にしたことで、自分の気持ちを再確認できたみたいだ。・・・そう、これが、私の中で最大限に拭えない違和感。

去年以上にキラキラ輝く、ステージ上の雅を見るたびに、どんどん頭の中にクエスチョンマークが刻まれていく。

だって、私の中では、雅は努力や根性なんてものとは無縁の子だったから。
あの美貌に、どこか1歩引いたようなミステリアスな雰囲気。それでいて急にはしゃいだり天然な一面もあって・・・。私はそういう雅が好きだと思っていたし、今更知らない顔を見せられるととまどってしまう。

勉強は嫌いといいつつ、致命的な点数は取らない。
スポーツはあんまり・・・といいつつ、要所要所で活躍できる。

死ぬほど努力して100点を取っている人の横で、ちょっとだけ頑張って85点を取っちゃうようなその生き方が、私にはとてもまぶしく、友達として誇らしくもあった。


「よーし、それじゃ次はこの曲、いっちゃうよー!!」


――だから、こうして大声張り上げてる雅は、本当「お前、誰だ」レベルで。
一生懸命になることは決して悪いことじゃないってわかってるけど、でもね、でもね、だけど。

ロック調の歌から、一転バラードへ。

「それでも会いたくて~泣きたくて~」

みやびせんぱああああああい!!!

――梨沙子よ、叫ぶなすぐ!

そんな必死の声援にも、ウインクやお手振りでのファンサービスを忘れない。
桃子ならともかく、あの雅が、ですよ?
なのに、桃子も愛理も不思議そうな顔一つしないで、むしろやけに優しい顔で雅の方を見ている。
なんだか、私一人がパラレルワールドに迷い込んでしまったみたいだ。なんて、最近ハマッている異世界トリップものの漫画のことを思い出した。

「みやびさ、今日機嫌いいね」

そんな私の葛藤が通じたのか、ふと千奈美がぽつりつぶやく。

「やっぱ!?だよね!」
「う、うん。何か、去年よりアイドル度マシマシって感じ。でも」
「でも?」

持っていた取材ノートを下ろして、千奈美は珍しく神妙な顔で私をみた。

「何かさ、記事にしづらい。ってか、これでいいのかなって。あーごめん、何かうまくいえないんだけどさ」
「あ、わかる。多分私も同じこと考えてた」
「やっぱり!?でしょー?」


シーッ。


千奈美の高めの大きな声に周りから少々冷たい視線。・・・ですよね、バラードの最中ですもんね。


「・・・要は、気合入ってるみやびとか、どう受け止めていいかわからないんだよね」
「でもさ。私たちが知らないだけで、雅にだって熱い一面がちゃんとあったってだけかも。」
「それにしたってさ、何年か友達やってていまさら気づくとか」



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