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――誕生日には、お前の愛が欲しいでしゅ
――いやん、ばかん、ウフフ

テーブルで指を絡ませあう二人は、いつもどおり通常営業のラブラブモード。
さっきまで「舞だけ千聖のライブに来てくれなかったぁ!」とかブイブイ文句言ってたくせに、ちょっとイイこと言われたらもうこのとおり。

私なんて、ソロライブ観に行ったにもかかわらず「あ、チョリーッス」みたいな軽い扱いしか受けなかったんだけど!
チューする真似してみせたら「オエエエエ」とか言ってゴンの前足で殴られたんだけど!何この扱いの差!

――閑話休題。

きっとファンの人とかは、ちさまいラブラブで萌えるとか言っちゃうんだろうけど、私ら℃メンはこんな濃厚ユリプレイを毎日見させられているわけで。
2人が指を絡ませ合っていようが、ほっぺをつつきあっていようが、それはもはや風景の一部。愛理は書き物に勤しんでいるし、舞美ちゃんは舞台の台本を読むことに没頭している。
ねんねちゃん(死語)だった昔の私なら、2人のイチャイチャを見せ付けられるたびに「そういうことするのやめるケロ(キリッ)」とか言ってたっけ。んま、今の成熟したイイ女な私にはこのぐらい、なんのなんの。キュフフフ

「なにそれー、千聖の愛?いつもあげてんじゃん!ク゛フフフ」
「違うの、そういう抽象的なものじゃなくてぇ」

2人のラブトークはまだまだ続いている。

「ちゅうしょうってなに?」
「・・・。まあ、正確には、舞が千聖にラブ注入したいっていうかぁ」
「ドドスコスコスコ?」
「百歩譲って、ちしゃとが舞に注入してもいいんだけど」
「はい!はい!ちょーっともうそこまでにしようか!」

舞の目つきがだんだん危なくなってきたところで、私は強引に2人の間に顔を突っ込んでやった。

「うわっ出た魚介!」
「ちょっとー!」
「マジムニエルだわ、魚介」
「なにそれおいしそう!」

とはいえ、あんまり暴走させすぎるのも考え物。
スタッフさんやマネージャーさんに、定番のハギワラ妄想劇場なんかを聞かせるわけにはいかない。
あくまで、可愛い二人のジャレ愛というのがボーダーライン。「舞の○○が千聖の○○に○○って○○○○○」という定番のアレは私の耳元で留めておくべきなのです(キリッ)

「もー、何でさぁそうやって邪魔するかなあ。せっかくのちさまいラブラブタイムなのに」
「んじゃ仲間に入れてよ。ちゅーっ」
「「オエエエエ」」
「あは、なっきぃIDも顔も真っ赤ですぞ!とかいってw」
「なっきぃの涙目で今日もメシウマだねぇ、ケッケッケ」
「ちょっと、何でさりげなく混ざってんの!」

書き物の手を止めたリーダーと愛理にまでいじられて顔を真っ赤にしていると、「じゃあ、中島撮影入ってー」と順番が来てしまった。

「・・・もう、覚えてらっしゃい!」

そんな捨て台詞とともに、スタッフさんに続いて廊下に出る。
      • やべ、みんなに言葉責めされたせいで、弱冠ちょっと興奮してる。まったく困った性癖だ。
だけど、私のは隠してるだけちさまい(というか舞様)よりずっとマシだと思う。だって、心は自由でしょ?



「・・・あれ?」

撮影の順番が終わって控え室に戻ると、そこにはもう誰もいなかった。
私と入れ違いにスタジオに入った愛理、別の仕事のため移動した舞美ちゃんはともかく、あのバカップルはいずこへ。

「なんだよー・・・」

別に、一人じゃなきゃ行動できないわけじゃないんだけど・・・みんながいるのにポツンと取り残されるのって何か嫌。
まだ2人の鞄はあるし、帰っちゃったわけではないみたいだから、とりあえずおトイレにでも探しに行く事にした。

*****

――クスクス、クスクス

「ん?」

道すがら、ふと覗いた空き部屋。
そこから、聞き馴染んだ小さな笑い声が漏れてきていた。

      • いた、千聖と舞。

大きなホワイトボードと向かい合わせになって、規則正しく机が並んだ学校の教室みたいな部屋。
その℃真ん中で、2人は仲良く肩をくっつけ合っている。

“だからぁ、それはちしゃとがさぁ”
“もー、違うし!舞が先に言ったんだからねっ”

時折お互いを軽く小突いたりしながら、もう完全に2人の世界。
特に舞ちゃんなんて、千聖の顔だけをまっすぐ覗き込んでいて、もう他のものは何一つ目に入ってないって感じが傍からみても伝わってくる。

――やっぱ、ちさまいなのかぁ・・・。

いいんだけどね、二人がラブラブで困ることなんてないんだけどね。女の子の三角関係(?)って、複雑だわぁ・・・。

「でさー、あの時の・・・ん?舞?」

そのまま観察を続けていると、ふいに舞が千聖のほっぺに手を添えた。

「何?」
「黙って。てか、動かないで」

千聖が口を噤んで、沈黙が訪れる。

「ちしゃと・・・」

心なしか乾いた、舞の声。
おい、おい、おい。何をするつもりだ。

舞が千聖にどういう感情を持っているのか、そして千聖が“そういうこと”をどんだけ軽く受け入れる子なのか、私は重々理解している。
ありえない。こんな、誰でも入れるような部屋で、しかもドアも開けたままの状態で、そんな、kiss me 愛してる的な、隣のお空へテイクミーダーリン的な、あかん!!!

「くすぐったいよ、舞・・・」
「らめええええええ!!」

私はドアを思いっきり引くと、びっくり顔で振り返った2人へと駆け寄ろうとした。・・・のだけれど。

「キ゛ュフー!」
「えっちょ、何?え?」

タイル張りの床は思いのほかすべりが良くて、入り口でつんのめった私は思いっきり手前の机を押し出してしまった。

ガン、ガン、ガン


「あああ~・・・」

無様にしりもちをつく私をあざ笑うかのように、前方の机が2人めがけてどんどん倒れていく。まるでドミノだ。

「舞!」

立ちすくむ舞を庇うように、千聖が舞の後ろに体を割り込ませる。
そのまま、襲い掛かってきた机は千聖のちっちゃなヒップに激突して止まった。

「・・・うあーちょーケツいってぇ。四つに割れてたりして。とかいってwフ゛フフフ」

何だその言葉遣いは!と思ったけれど、今の私がどうこう言えた義理ではないわけで。

「大丈夫?怪我してない?」

千聖は舞を気づかって体を支えている。どっちかっていうと男前な顔立ちも手伝って、まるで学園ドラマのイケメンのようだ。舞もうっとり見蕩れている(いつものことだけど)。

「ん・・・平気。ちしゃとは?大丈夫?」
「うん。まあ若干ちょっと痛いけど別に。・・・それより」
「ひぎぃ!」

机をかきわけて、のっしのっしと千聖がやってきた。
無言で、いまだ座り込んだままの私をじっと見る。・・・千聖に見下ろされるなんて、何か新鮮だ。なんて、頭の中を覗かれたらぶっとばされそうな考えが浮かんだ。

「なっきぃさぁ・・・」

ちょっと低めのその声に、背骨がピシッと鳴って喉が渇く。

「ご、ごめ」
「転んで打ったとこ、大丈夫?千聖に見せてごらん」
「えっ」

しゃがみこんだ千聖に腕を引かれて、膝や肘を確認するように順繰りに触られる。まるでママ・・・いや、お姉ちゃんだ。長女だもんね、千聖。
ごく当たり前のように優しくされて、「怒られるかも」なんて心配していた自分が情けなくなってきてしまった。

「なっちゃん・・?どうしたの?大丈夫?」

あまえんぼうな舞まで、私を気づかって頭をなでてくれる。

「ん、ごめん。・・・・いや、でも。でもさ!」

少々その甘くて優しい雰囲気に飲まれそうになったものの、そもそもの原因である“あれ”のことを思い起こして、私は姿勢を正した。
普段一緒にふざけてるとはいえ、私は年上(キリッ)。正しくない事は正しくないと教え導いてあげなければ!(キリキリッ)

「あのね、2人とも。なっきぃはね、2人が仲良しなのは知ってるわけ。でも、みんながみんな知ってるわけじゃないじゃない?」
「うん?」
「やっぱり、限度っていうか・・・つまり、まあ、絶対ダメとはいわないよ?でもさぁ」
「何?何がいいたいわけ?」

舞の眉間に皺がよって、“舞様”な顔に変わっていく。

「つまり!人前でキスとかすんなってこと!」

慌てて本題を切り出す。
2人がかりでぶーぶー文句垂れてくるかと思ったら、なぜか千聖も舞もあっけにとられたような顔で、困惑したように私を見返してきた。

「何、キスって」
「はいはい、とぼけないでくださーい!なっきぃずっとみてたんだからね!舞が、千聖のほっぺに手やって・・・」

私のターン!とばかりに勢いづくも、やっぱり2人はぽかーん顔。
でも、よく見れば舞の顔が段々と変化していってる。まるで脳トレのように。ア○体験のように。にやにやと。

「いや、だってさ・・・動かないでとかって」
「あのさー、・・・いいや、まずはこちらをご覧いただこう」

そういって、差し出されたその指先はなぜかキラリと光っている。

「お分かりいただけただろうか」
「・・・ラメ?撮影で使った・・・」
「そう。さっき、ちしゃとの顔におっきいのくっついてたから取ってあげたの。で?何でしたっけ中島さん?えーっと、キス?でしたっけ?」
「あばばば」

舞とは対照的に、自分の顔がどんどん青ざめていくのがわかる。
さっきまでの(キリッ)連発だった自分のドヤ顔を想像するだけで、今すぐ窓から飛び降りて逃走したい衝動に駆られる。

「何ー?なっきぃ何のこと言ってるの?」
「だからね、なっちゃんたらね」

舞の耳打ちを受けて、千聖もいや~な笑顔を浮かべ出す。

「うーわ・・・なっきぃまたやらしーこと考えてたんだ?」
「ちち違うし!」
「違くないでしょ。エロいことばっかり考えてるからこういう目に合うんだよ」
「ぐぬぬ」

くっ悔しい(ヒ゛クンヒ゛クン)けどそれについてはまったく否定できず・・・前足で獲物をいたぶる猫の如く、じりじりと言葉責めを受けるしかない。

「だってだって、舞が千聖に“お前の愛が欲しいぜ”とか言うから」
「そうやって愛と肉欲を直結させるのはどうかと思いましゅ」
「肉欲ってアンタ」

もう、反論する気力も失せた私をからかうがごとく、千聖が舞の肩に手を回した。

「ちしゃとぉ」
「愛してるぜっ、舞!例えキッスなんてしなくても!」
「舞も愛してるぜ!例え人前で・・・」
「お、おぼえてらっしゃい!」

小悪魔たちのからかいを背に、私は廊下を敗走乙した。
違うもん!私にはあの2人を監視して過ちを犯さないよう見張る義務があるからこそ・・・くっそー!エロいからじゃないもん!

「・・・負けないからな、ちさまいめ」

持ち前の無駄な負けず嫌い魂がふつふつと湧き上がってきた。
℃-uteの平和は私にかかっているのだ。淫らな行為は今後も全力阻止させていただきますから!
ナカジマの孤独な任務は、きっと春先の発情期が本番になるんだろう。
どうか、舞様お手柔らかに・・・などと心の中で祈りながら、私は結局、楽屋で一人デスメールを打ちながら二人を待つのだった。


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