※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



ここが舞ちゃんたちの通う学園かあ。
初めて学園にやってきました。
今日から始まる学園祭。

大きな正門をくぐって学園に一歩足を踏み入れると、予想以上に人出も多くて飾り付けられた校舎は賑わっていた。
何だかそわそわして落ち着かない気分だ。ふだんは入れない女子校の中にいるというのが、これほど落ち着かない気分になるとは。
人出が多いとは言っても、やはりこの学園の女子生徒さんが圧倒的に多い訳で、そこを男子が一人で歩くというのは、なんとなく気恥ずかしいものですね。

しっかし、さすが名門の私立校。僕の通うボロい公立校とは大違いだ。
風格のある校舎が渋くてかっこいい。
敷地内の植栽ひとつとっても手入れが行き届いていて、やっぱり私立校というのは上品だなあ。
校舎内も清掃が徹底されているのかとても清潔で、これは生徒さんたちの意識が高いんだろうな。
それに何と言っても女子生徒ばかりなので華やかだ。やっぱり共学だとこういう空気感にはならない。

右も左もわからないので、まずは一回りしてみようと思ってしばらくぶらぶらしていると、いいカモだと思われたのか結構いろいろな売り子さんに引っ掛かる。
あちこちでお菓子や食べ物を買わされる羽目になった。

お菓子をほおばりながら歩いていたら、座敷わらしみたいなかわいらしいオバケに捕まった。この先でお化け屋敷をやっているので、その勧誘らしい。
お化け屋敷の類はとても苦手なので断っていたのだが、座敷わらしのこの子の勧誘はとても言葉巧みでどうしても断らせてもらえなかったのだ。
まぁ、その小柄なかわいらしいオバケを見て、これなら大丈夫かと誘われるままにお化け屋敷に入ることにしたんだ。

最初の方は化け猫とか子供だましの全然怖くないオバケしか出てこなかったりして楽勝だったのだが、ゾーンが変わったところで急に雰囲気が変わってそこから一気に怖くなった。
そして、いきなり血塗れびしょびしょの女子高生がでてきて「ゴフッ!」とかいって大量に吐血したときは死ぬほどびびった。
あまりの怖さに耐え切れなくて、回れ右して入ってきた入り口から一目散に退散する。

長い廊下の真ん中で立ち止まり、呼吸を整える。
マジで怖かった。まだ動悸がおさまらない。なんなんだあれは。よくあんな本格的なの作ったもんだ。
そうやって深呼吸などして落ち着こうとしているところへ、向こうから歩いてきたのは僕のよく知っている人だった。

お嬢様ではないですか!

さっそく会えるとはやっぱり僕とお嬢様のあいだには運命的な(ry
お化け屋敷でショックを受けた心が、お嬢様の聖母のようなお顔を見ることで、みるみる回復してゆくのがわかる。癒されましたよ、お嬢様!

歩いてくるそのお姿を一目見てわかったことだが、お嬢様の横にはお連れの人がいたのだ。
その、お嬢様の隣りにいたのは・・・・


「く、熊井・・・ちゃん」


でかいだろ!!昔からでかかったけど、更にでっかくなってる。
小柄なお嬢様の隣りにいるから余計に高く見える? いや目線は確実に僕よりも上だ。
僕もあの頃からだいぶ背が伸びたのだけど、同様に彼女も順調に伸びたようだ。

「あら、大きな熊さんとお知り合いなの?」
「何ですかーお嬢様!? あーっっ!!」
「やっぱり大きな熊さんもこの方を御存知なのね」
「も?って、お嬢様も知ってるんですか? 確かー、えーと、えー?誰だったっけ?」
「小学校で一緒だったんだけど・・・」
「そうでしたっ!小学校の時の同級生なんですよー。でも、お嬢様こそどうして知ってるんですか? えーと名前は・・・・なんて名前だっけ?」
「●●○○」
「そうそう。○○だ。思い出しましたっ!」
「まだお嬢様にちゃんと自己紹介してませんでしたっけ。苗字は●●で名前は○○です。いま熊井が言ったように名前で○○って呼ばれることが多いです。こういう字を書きます」

僕の名前はちょっと難しい漢字を使うので、生徒手帳を取り出して名前欄を見せてあげる。
すると、それを見たお嬢様はこんな事をおっしゃったのだ。

「あら、お名前を漢字で書くと○○って、これってひっくりかえしたら嗣永になるのね。ウフフ、ももちゃんだわ」
「本当だ!ももだー!!あはははは」
「じゃあ、ももちゃんさんね、ウフフ、ウフフフフ」
「あはははははー」


?? 何がそんなにおかしいんだろう。
大体、ももって何のことだろう。ツグナガって??


僕の名前を教えると、大抵の人は見たこと無い漢字だとか難しくて読めないっていう反応をくれる人がほとんどなのに、お嬢様のこのような反応をした人は今までの僕の人生の中で一人もいなかった。これは初めての反応だ。意味はわからないけれど新鮮だった。
さすがお嬢様は一般人とはちょっと違う。

「ウフフフ、笑ったりしてごめんなさい。大きな熊さんのお友達だったなんて奇遇ね。楽しいわ」
「えー?? ぜんぜんお友達ってほどの仲じゃないですよ、お嬢様」
「僕もびっくりしました。熊井がお嬢様の知り合いだったなんて。」
「あれー? なんか千聖お嬢様の前だからって、さっきから格好つけてるでしょー。思い出しちゃった。5年生でクラス替えになった時にさー。今までのクラスの友達が誰もいなくて、『一緒なのは熊井ちゃんだけだよ・・・』とか言って泣きそうな顔してたくせにさー。あははは」

いきなり何を言ってるんだ?この人は。今の今まで僕の名前も忘れてたのに、最初に思い出したのが、そんなことか・・・ 相変わらずだな熊井ちゃん。

「それから、卒業式の時の話しだけど、卒業証書を受け取るときにさー、校長先生に名前呼ばれて返答するとき緊張で声が思いっきり裏返っちゃったよねー。『ひゃぃ』とか言ってさ、面白かったなー。あれは思い出すと今でも笑えるよね。あはははは」

黙れ、デカ熊。
それはよーく憶えてるのだ。早く忘れたいのに。
僕が変な声で返事してしまった時、会場は「笑っちゃいけない。笑っちゃいけない」っていう空気だったのだ。
それなのに、熊井ちゃんがそんな空気お構いなしに大きな声で「ぷっ!」って笑ってしまったものだから、それをきっかけにして連鎖的に体育館中のみんなが笑い出して・・・ あんなに恥ずかしい思いを卒業式でするとは。
って、今そんな話をする必要もないだろうと思う。

見るとお嬢様も口許を押さえながら「クフフフ、それは楽しい思い出ですわね」とお笑いになっている。お嬢様が笑ってくださるなら、まあいいですけど。熊井ちゃんめ。

久し振りの再会だし、この機会に熊井ちゃんとは対等な立場に立ってやると思っていたのだが、それは全く無理なことのようだ。一方的に笑われて、やっぱり彼女にはかなわないのかもとあきらめの心境になったんだ。

そう思ってるあいだにも熊井ちゃんの話しはまだ続いていた。まだあるのかよ。

「あとはさー、修学旅行で日光に行ったとき、中禅寺湖の宿に着いたら興奮して異常なテンションの上がり方してたよねー。夕暮れの中禅寺湖だ!とか言って一人で感動してんのw 昔そういう歌があったらしいんだけど、だいたい小学生で演歌大好きとかドプフォ(以下略

本当もうその辺で勘弁してください、お願いします。

いつの間にか僕たちはたくさんの人達から注目を集めていた。
廊下を歩いている人や教室から顔を覗かせてる生徒さんたち。お嬢様に「ごきげんようお嬢様」と挨拶した後に、熊井ちゃんと僕のことを興味深げに交互に眺めていく通りすがりの人も多かった。
何だ、この異様に高い注目度は。
注目を集めていたのはつまり、どうやら超有名人らしいお嬢様がいるからなのか、それともこの熊井ちゃんの異様に目立つ言動が引き付けているのか、僕にはちょっとわからなくなっていたのだった。



TOP