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「・・・何してんの」

そんなにキツい言い方をしたつもりはなかったんだけど、自分で考えていたよりも低くて強めな声が出てしまった。・・・まあ、仕方ない。だって、千聖が目のまえで涙ぐんでいたんだから。

「舞・・・」
「あっ、ちょ、萩原さん!ねえどういうことなの!夏焼(ry」

詰め寄ってくる彼女――りーちゃんを、須藤さんがはいはいと宥めてくれた。その隙に、まじまじと2人を見比べてみる。

「何かあったの」

Buono!の3人のためにドリンクを取りに行った千聖が、いつまでも戻ってこないから、楽屋を熊井さんに任せて探しに来たら、この始末。

疑問点は、夏焼さんのオフィシャルstkであるりーちゃんが、公演中の今ここにいるということ。
千聖がしゃがみこんで泣いていること。
りーちゃんも、目の縁が赤くなって、何だか泣き腫らした感じがすること。
須藤さん・・・はいつも通りだな。うん、絶対心臓強いもん、この人。

「遅いから様子見に来たんだけど。何で泣いてるわけ」

やっぱり、どうも千聖が絡むと冷静さに欠けるな、私。
喧嘩してるっぽい雰囲気ではないけど、決していい雰囲気とはいえないから、余計にあせってしまう。

「舞・・・私、ステージ係失格だわ。私のせいで、せっかくのステージが」
「は?またすぐ極論言って・・・てか、別に今舞台何の問題もないけど?」
「違うのよ、舞。だって、みやびさんが・・・私が、めぐのことを」

千聖は相当にショックを受けているようで、フガフガ口調のまま取り留めなく言葉を発するもんだから、どうも話が掴めない。

「りーちゃん」

・・・あんまり気が進まないけど、りーちゃんに話を振ってみると、待ってましたとばかりに口を開いた。

「だからね!何かね今年の夏焼先輩の本気汁(誤用)の濃度が前年比220%ぐらいになっていて(ry・・・とにかく、そんなにノリノリな夏焼先輩なんておかしいって思って、岡井さんに聞いたら、いきなりごめんなさいとかいって泣き出すんだもん!
どーゆーことかって私が聞きたいもん!ままま、まさか、岡井さんが夏焼先輩をたぶらかし・・・!?ひぎいいこの泥棒猫が!スタッフとアイドルの恋愛とか御法度でしょうが!おどれら業界のルールも知らへんのか!」
「きゃんっ、あの、すぎゃさ、えと、それは違」

・・・お前は何を言ってるんだ(AA略)。
昼ドラのようなテンションで千聖に掴みかかろうとするりーちゃん。普段のもぉ軍団マトモ担当とは思えないその狼狽振りに、慌てて私は立ちはだかってそれを制した。


「ちしゃとは舞の嫁!!!!11」
「嫁・・・」

とっさに口をついて出た台詞は、見事にりーちゃんの動きを制止させることができたようだ。だが、我ながら気持ち悪い。目の前のキモヲタさんもドン引きの模様だ。

「ふ・・・二股ってこと?岡井さんクソビッチ・・・」
「ちっがーう!!だから、ちしゃとと夏焼さんはなんの関係もないの!ちしゃとは舞ひとすじだし!だからね、その、夏焼さんが何かに気を取られてたっていうのは、それは・・・」

言いかけて、私はぐっと言葉を飲み込んだ。

開演前、楽屋で起こった出来事。
夏焼さんの様子が例年と違うというのなら、あれが原因であるのは間違いないだろう。

だけど、私が勝手に、そんな大事な話をしていいものなのか。

うまく肝心なとこをぼかしたり、物事を端折って説明するのは結構得意なほうだけど、こればっかりはそういうことをしちゃいけないと思う。

「・・・ありがとう、舞」

すると、千聖が私の肩にそっと手を置いた。

「千聖・・・でも」
「私から御説明申し上げるわ。せっかくライブを楽しみにしてくださっていたすぎゃさんに、このままのお気持ちで、帰っていただくわけにはいかないわ」
「いや、それはわかるけど、村上さんと夏焼さんの個人的なことまで勝手に話すのは」
「村上!?誰それ!年齢住所性別職業趣味夏焼先輩との交友関係についてkwsk」
「わかったわかった、落ち着いて梨沙子!大丈夫だから!いつもの可愛いべびーちゃんに戻って!」
「・・・ママぁ」

――何この子、超怖いんですけど。
常時おかしい熊井さんやももちゃんならともかく、いたってノーマルな子が突然おかしくなるのって恐ろしい。
そりゃあ私だって、千聖とか千聖とか千聖のことになるとまあ結構アレだと自負しているけど、傍目から見るとこんな感じなのかもしれない・・・。人の振り見て我が振りなおせとはよく言ったものだ。


閑話休題。


須藤さんに抱きしめられると落ち着くらしく、りーちゃんは若干ちょっといつもの可愛らしいりーちゃんの顔に戻った。

「でもさ、マジで。こんなとこで油売ってないで、客席戻ったほうがいいって。もったいないよ、今日の夏焼さん絶好調なのに」
「でもでも・・・あっ!!」

口を尖らせるりーちゃんの、丸いお目目がパチッと見開かれたまま静止する。
その指が指し示す方向へ顔を向けると、・・・いた。赤鬼、ならぬ青鬼、ならぬ・・・桃鬼が。

「り~さ~こ~~~!!」



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