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「どうしよう、千聖ぉ」
「おちついて。そこの窪みまで、ゆっくり移動しましょう。」

舞美ちゃんの目を盗んで、背中を丸めて2人でその場を離れる。
「困ったなぁ。2人ともーみんな心配してるよー?」

薄闇の中でも鋭く光る目や、ショートパンツから伸びた引き締まった足が、チーターやサーベルキャットを連想させて何だか怖い。
舞美ちゃんはうろうろと海岸沿いの道路まで走っていったり、波打ち際で海の中をじっと見つめたり、しまいにはなぜか砂を手で思いっきり掘り出した。

「いやいや、それはないでしょ。」
「ふふ」

笑い声が響かないよう、お互いの肩に唇をくっつける。潮の匂いと千聖の甘ったるいコロンの香りが混じって、少しドキドキした。



「もー、みぃたん早すぎだよぉ」
独特の高い声。なっきぃが追いついてきたみたいだ。穴を掘りまくっている舞美ちゃんになにやってんのとお説教を始めた。

「やっばいよ。なっきぃ鋭いから見つかっちゃうかも。」
「待ってて。移動できる場所を探してくるわ。」
「それなら舞も。」

縋る私の指にそっと手を重ねて、千聖は「平気よ。ここにいて頂戴。」と柔らかく微笑んだ。

「・・・・絶対、見つからないで戻ってきて。」
「ええ。」

なっきぃと舞美ちゃんはまだ喋っているみたいだ。
千聖は様子を伺いながら視線を前方に移した。岩陰を飛び出して思いっきり走る。あっという間に姿が見えなくなって、私は一人で取り残された。
ちょっと肌寒くなってきた。千聖とくっついてる時は体温でわからなかったけれど、チューブトップから露出したうなじらへんがひんやりしてきている。パーカーでも着てくればよかった。


「舞ちゃーん。・・・ねーやっぱりこっちじゃないのかも・・・」
「ちょ、待ってみんな。砂浜やばいってコケるコケるうわー」
「キャー」

・・・・ミュール脱げよえりかちゃん。
遅れて栞菜、えりかちゃん、愛理も到着してしまった。
やばいよ、今戻ってきたら見つかっちゃう。
愛理の持ってる懐中電灯の光が、頭の上を通り過ぎていく。

今出て行けば、めっちゃ怒られるだけで済むかもしれない。
千聖は私が無理矢理連れて行ったと言えば、咎められることはないだろう。
私は自首しようと腰を上げかけた。その時、



「舞さん。」

「うぅっわ。」
足元で名前を呼ばれて、思わず声が出た。足元で千聖が四つんばいになっている。

「ど、ど、ど、どうやって来たの?」
「この体勢で、岩や木の間をくぐってきたの。懐中電灯でも、わざわざ下までは照らさないから。」

そう、ですか。千聖得意だもんね。犬。

「舞さん、あそこに崖があるのが見えて?下の方が小さな洞窟になっていたから、今日一日ぐらいは隠れていられるかもしれないわ。」
「本当にいいの千聖。私達、」

・・・キュートにいられなくなっちゃうかもしれないよ。

最後まで言うのは何だか怖くて口ごもってしまったけれど、千聖は私の言わんとすることをわかってくれた。

「舞さんは、どうなさりたいの?」
「舞は、舞・・・・」

最善の対処はわかっている。
ここを飛び出して、みんなに必死で謝ればいいんだ。
そうしたからって別に千聖がいなくなるわけじゃない。
わかっているけれど、なぜか足が棒のようになって動かない。
「もうやめよう。」と千聖に言い出せない。

千聖の目を見ていると、どうにかやっていけるんじゃないかという変な自信が生まれてくる。
このまま2人でいなくなったらどうなるんだろう。さっきまでの不安感は消えて、好奇心がムクムクと湧き上がってきた。

「行く。千聖が見つけてくれた洞窟に行こう。」

キュートの皆は私達にお尻を向けて、砂に何か書きながら会議をしている。
ごめんね。舞は千聖と生きていく。

「行きましょう。」



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